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翌朝。日の出と共に体を起こす。まだ寝ている二人を起こさぬよう、ゆっくりと布団から抜け出す。
外に出ると、もう殆どの屋台は出来上がっていた。小屋からエレベータまで、一直線にできた屋台の数々。そして、その道から枝分かれするように、蜘蛛中に屋台が設営されていた。
やきそばや射的など、色々な屋台の看板が出ているが、人の気配はない。こんな量の屋台をどうやって経営するのか、疑問が残る。
「無事、開催できそうですね」
すっと背後から出てきたセロ。足音くらい鳴らして欲しい。
「って言っても、この屋台。誰がやるの?」
見渡す限りの屋台の群れ。当然、準備をしている人はいない。
「屋台番はアンドロイドに任せるので。昼頃から準備しますよ」
セロが指を鳴らすと、一匹の犬型のロボットがやって来た。
セロはその犬の頭を軽く撫でると、犬は眼を細めると、雄たけびを上げながら体を変形させていく。
駆動音を鳴らして変形した姿は、犬の姿のまま二足歩行になっただけ。顔も手足も犬のまま。ありていに言ってしまえば、なんとも不格好だった。
「えっと、どうやって?」
二足歩行だが、その手は肉球だ。どう考えたって調理器具を持てるようには見えない。
「見せてみなさい」
犬は片手を僕に伸ばすと、その肉球の付いた指を器用に波の様に曲げた。試しにセロが箸を渡すと、それを三本の指で器用に受け取りペン回しの要領で回し始めた。
「この通り。これなら大丈夫ですよね」
「うん。確かに」
容姿の問題は置いておいて、これまでに見た作業中の犬型ロボットが全て店主になるなら問題はなさそうだ。
「そうだ。せっかくだし、一緒に見て回らない?」
「そうですね。最後に確認も含めて向かいましょうか」
セロと僕は無人の屋台を巡る。鉄板だけが置かれた焼きそば屋。的の無い射的屋には、それを置くための棚だけが置かれていた。
他にも油の入ってないフライの置かれたから揚げ屋や、たこ焼き屋。少し珍しいものだと型抜きなんかもあった。
「楽しいですか?」
「え?」
「いえ、なにも売ってない屋台を見てて、楽しいものかと」
「楽しいよ?」
非日常感がたまらない。朝の水をたっぷりと含んだ空気といい、ゆったりとしたこの状況は僕にとっては良いものだった。
そもそもこれまでが忙しすぎたのだ。僕は本来このくらいゆっくりするのが性に合っている。




