101
なんだか世界に一人、取り残されたみたいだ。蜘蛛の上は芝生が生えているが、虫の声はしない。高度が高いからか、はたまたなにか別の問題か。
虫の声はしないが、完全な静寂という訳でもない。耳の上を通る風邪の音に、芝生のこすれる音が、僕を一人じゃないと言ってくれる。
しばらく僕がそんな静寂を楽しんでいると、小屋の扉が開き、光が漏れ出した。
「ごめんお待たせ」
顔を覗かせたのは、パジャマに着替えたサルビアだった。
中に入ると、フウロもパジャマに着替えており、赤と青の色違いだ。髪が少し濡れて、湯気が出ている。僕が外で待っている間に、お風呂に入っていたのだろう。
背丈が変わらないからか、パジャマもぴったりで、こうして並んでいると姉妹みたいだ。
「タイヨウ、どう? 似合う?」
僕が外にいるうちにもう二人は完全に慣れたようだ。口調も以前会った時のものに戻ってきていた。
ズボンスタイルのパジャマでくるくると見せて、そばに駆け寄ってくる。
「うん、似合ってるよ」
僕はフウロの頭をぽんと撫でる。
「ちょっと! 私は?」
「うん、サルビアも似合ってるよ」
サルビアも僕のもとに来て、両手に花だろうか。いや、この年齢の子に寄られても、子供のじゃれあいにしかならない。
「ほら、二人とも寝るよ」
管制室に布団を敷いて、二人を寝かせる。僕を真ん中に川の字に横になる。
二人は遊び疲れたのか、布団に入ると、すぐに寝息を立てて眠りについた。
僕は、二人が寝たのを確認して、お風呂場に向かいシャワーを浴びる。
バスタオルで拭った体。僕もパジャマに着替えて、小屋の入り口、ツキの眠る部屋に戻った。
ツキは起きない。いまだとぐろを巻いて、変わらぬ場所で眠りについていた。
「最近、眠気も食欲も、なにも感じないんだ。僕は一体、何になってしまったんだろうか」
とっくのとうに軽くなった背中に静寂が重くのしかかる。
「おやすみ、ツキ。明日は話せるよね」
僕は管制室に戻ると、二人の間で目を閉じた。




