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「よぉ、随分と楽しんできたみたいじゃねぇか」
今日の作業は終わったのか、セロとクラトスが小屋の前で待っていた。ヘッダはもう小屋の裏で眠ったらしい。
「ねぇセロ、フウロの着替えになりそうなものってある?」
「そうですね、今はこれしか……」
彼女はソーイングセットからメイド服を取り出した。白と黒のフリフリとしたミニスカートのメイド服。メイド服と言っても、セロの着ているシックなものとは全くの別物だ。
「えっと、それは……じゃぁ」
断るのも申し訳ないのか、おずおずと手を伸ばすフウロ。
「……あー! もう、私の服貸すから!」
フウロが伸ばした手を掴むと、サルビアはびしょ濡れのまま小屋の中に入っていった。
「タイヨウは入ってこないでよね!」
そう言ってサルビアは扉を閉めた。
「今日は付き合ってもらって悪いな」
もう外は暗く、クラトスの画面だけが明るく光っていた。セロは最終確認に向かうと言ってまたどこかへ行ってしまった。蜘蛛に戻ってからというもの、ほとんどセロと居る時間が無いように感じる。
忙しいのは分かるが、少しくらい休憩すればいいのにとも思う。
「いえ、僕も楽しかったので、むしろフウロと遊んでくれて、感謝したいくらいですよ」
「フウロってのは、あのお嬢ちゃんのことか」
「はい随分と、ふたりで楽しそうに海で遊んでましたよ」
「そうか、あのサルビアが」
クラトスが感慨深そうにつぶやく。
「セルビアには同年代の、それも同世代の友達ができるなんて、俺には一生できなかっただろう。改めて、ありがとうなタイヨウ」
「やめてよ、気恥ずかしい。それに仲良くなったのはサルビアの努力だよ」
その巨大な体でぎこちなく礼をする姿に、僕は照れて口が早く回る。普段豪快なクラトスに真剣な声で感謝をされると、背中がむず痒くなる。
「それにしたって感謝させてくれ。つってもあんたの性格じゃ、素直に受け取らねぇだろ」
僕の性格をよく分かってる。クラトスは僕の背中をパシッと叩く。
「祭り本番は俺も全力で挑むからよ。楽しみしてくれよ」
クラトスはそう言って、ヘッダと同様小屋の裏へと行ってしまった。
クラトスの画面の光もなく、今日は作業が終わったからか、光は一切付いていない。完全な闇だ。
僕は小屋の前に座って、夜空を見上げる。遥か遠くの空の向こうで一人光を発する星々。
一人になるのなんていつぶりだろう。少なくともこの体になってからはずっとツキがいた。エデンでは一人だったが、あの時は記憶がなかった。




