『鉛筆の痕と、夜明けの光』～孤独と偽装を打ち破る、雨の契約～

第7話 莳华：夜明けの予兆

ああ、冷曦の性質は本当に想像以上に手を焼かせる。

せっかくちょっと親しくなった友達を一度に集められたと思ったのに、冷曦と陸筱の波長は合わないどころじゃなく、まるで水と油だ。

幸い班长が時機を得て登場し、その場を収めてくれた。

小さい頃からずっと、ああいう状況には対処できなくて。両親が親戚友人たちの前で才能を披露してほしい時でも、友達同士が一緒に座っていて時々遭遇する突然の冷め切った空気でも。

特にその冷め切った空気が自分によって引き起こされた時は。

頭が真っ白になる。心跳加速。すぐに空気中に蒸発してしまいたい。

黙って座った後、罪悪感の中で、自分が物おじせずにすべてを処理し、皆を満足させて微笑ませている様子を夢想する。

そんな鈍重な脳みそを持つ私は、決して彼らが言うところの「天才」なんかじゃない。

確かに私は担任と陸筱と班长に、冷曦と関係を築けるだけの能力があることを示したかった。そのため冷曦の言う通り彼女を「利用」したとも言える。

しかし彼女も私に重い一撃を食らわしたね。

「あの二人仲良さそうだね」

班长と陸筱の感嘆を背後に置き去りにし、階段口で冷曦に追いついた時、心の中はとても悔しく、甚至怒りに近かった。あの日、毎日のように、冷曦の理不尽な性質に気持ちをすり減らされていた時と同じように。

それでもいつも通り、あの小さく可愛らしい、しかし無表情な顔がこっちを向いた時、私は責め立てたいという念头を唾と一緒に飲み込んだ。

多分こうして飲み込むものが多すぎるから、私はいつも胃痛に悩まされているのだろう。

「あの二人と食事に行かないの」

冷曦は何事もなかったように聞いた。

「もう……あなたがいなきゃ意味ないじゃん」

「ああ、そう」

冷曦はため息をついた。

「ねえ、今週の土曜日、うちに遊びに来ない？」

「え……は？」

私はすぐには反応できず、頭はまた放心状態に陥った。

「驚いた？ 友達を家に招くような人間には見えないか」

「話せよ、莳华」

私は手首が冷たい何かで掴まれたのを感じた……私はこの感覚がとてもとても敏感だ。

冷曦が私の手首を掴んだことに気づいた時、私たちはもう並んでグラウンドの中心まで歩いていた。

「それはないけど……でも、本当にいいの？」

「他の人の家に遊びに行ったことないの？」

私は首を振った。

小さい頃、隣のお姉さんの家にテレビを見に行ったのが他の人の家に遊びに行ったことになるなら、まあそうかも。

私は小学校でも中学校でも友達は作った。友達と一緒に食事もしたし、クラスメイトと一緒に様々な活動にも参加した。校内のも校外のも……でも他の人の家に行ったことはない。

あの時の私は、誘われても行かなかっただろう。でも実際は誰も心から真心を込めて私を誘ったことはなかった。

私がカフェに行ったこともなければ、KTVに行ったこともないように、多くの同年代の女生徒が行ったことがあるはずの場所に私は足を踏み入れたことがない。その代わりネットカフェには中学三年生の時から行こうとした……なぜだかわからない。ただあの日、クラスの男子たちが好んで行くネットカフェの前を通りかかり、急に中に入りたいという衝動に駆られたんだ。あれは自分にまったく似つかわしくない場所だったが、多分だからこそ惹かれたのだろう。

私とほとんど同じ高さのカウンターの後ろに座った濃いメイクの若い女性は、満面の怪訝な表情で私が差し出した紙幣を受け取り、実名認証システムをごまかすための仮の身分証明書を手に取る時、手が震えていた。

顔はパソコンの画面の光に埋もれ、周りの様々な人々の横目に耐え、喉は濃いタバコの煙でむせ返り、咳が止まらなかった。

まさにそんな、視線と煙で体が蝕まれ穴が空くような感覚の中で、私の心性は少し言い難い変化を遂げた。

これはどうやら今の情況とは関係ない……そんな遠いことを考えるなんて、また私は放心状態を制御できていない証拠だ。

冷曦は私にまた別の、本来ならとっくに持っているはずなのに、なぜか遅れている経験をもたらそうとしている。

「わかった。慣れてないなら、無理強いしない」

「今日のあなたは私を満足させたから、選択の機会をやる。さもなければ絶対来いって言うところだった」

「なんでよ！」

「これが私の決定だからだ。来てほしい」

「選択の機会だなんて、私が絶対承諾するってわかってるくせに……もうわくわくしてきた」

私は頭の中の快乐を顔に表そうと試み、再び微笑んだ。

「そう笑うとなかなか見栄えがいいな……今日は確かに私を満足させた。家まで送ってやる」

そうして私は激動的な心情を抱え、冷曦の、理由もなくとても機嫌が良く軽快に漕ぐ自転車の後ろに座り、最後は彼女の家と私の家への分かれ道で別れた。

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「冷曦の家に行くの？ すごいな」

「ど、どこがすごいの？」

翌日昼、冷曦のアトリエが長引いたので、私は一人で学校の食堂に行き昼食を済ませようとし、トレーを持った叶子楫に出会った。

そして私たちは自然と一緒に座った。もしネットカフェでのあの経験がなければ、まだ彼とここまで親しくなっていなかっただろう。

食堂のような人でごった返す場所で男子と食事することは、私にとってどうということはない。なぜだか、化粧しなければ外出したくないのに、家族や先生は私が早すぎる恋愛に関してはあまり心配していないようだ。

彼らも実際には私が他人と深く付き合うのが難しいという实际情况を理解しているのだろう。

「冷曦の家は街で一番新しく、一番高い小区に住んでて、中の別荘群は迷路みたいで、外から見るだけでもとても壮観だよ」

「彼女そんなにお金持ちなの？ それでよくまあパンケーキおごってくれないんだ！ くそ」

私は痛ましそうに机を叩いた。人に自分にお金を使わせようとするのは良くない企みだけど、私は別に绝对道徳にふける女性じゃないからね。

「それだけじゃないんだよ。彼女の家は元々別の家に住んでたんだけど、あの高級小区が着工する前に彼女の父親が予約購入したんだ」

「冷曦の家庭環境について……うん、情報が欲しいなら、取引させてもらうよ、李莳华さん」

「あなたRPGゲームの情報屋NPCなの？」

「ご明察」

「じゃあ、何が欲しいの」

「百元で一回」

「それなら絶対ないよ」

「冗談だよ……じゃあ少し勉強法を伝授してくれない？」

「た、たくさん本を読みなさい」

私は正直に言った。

「それはずいぶんと当たり障りのないアドバイスだな……まあいい、今回は置いとくよ」

叶子楫は大げさに肩をすくめた。

「冷曦の父親はここで最も有名な薬の商売を営んでて、外で忙しいから多分君は彼女の母親に会うだろう」

班长は言った。

「実際私たちのクラスには彼女の母親を見たことがある人がたくさんいる。彼女の母親は学校で働いていて、教務側の文書仕事を担当している。担任も彼女とよく知り合いだ」

そうなんだ。どうやら以前の冷曦がなぜこのクラスにいるのかについての推测は、ある程度正確だったようだ。

「彼女の母親は若く見えて、おしゃれで開明的で、冷曦にはあんまり縛りをつけてないだろう……彼女の性格見ればわかるだろ」

「時には、あまりに開明的な親も良くないってだけだ。特に片親しか面倒を見られない時はな」

「そうだろ、莳华さん？」

「そ、そうだね。残念だね、私ももっと開明的な親が欲しいよ」

私はまた少し放心して、うっかり本心を口走ってしまった。

「ふふ、ねえ、もし君の両親も彼女みたいだったら、君はとっくに風船のようにふわふわして、空に飛んで行っちゃってたんじゃないか」

班长も何気なく言った。

「いや……多分そうはならないよ」

私はなぜか少し照れくさく感じた。

「あなたってクラスメイト一人一人のこと調べてるの？」

「それは担任の仕事だよ。生徒として、誰も全てのクラスメイトと親しくなることなんてできないさ」

彼は茶碗に残った最後のご飯を二、三口で食べ終え、ナプキンで口を拭いながら言った。

「班长として、重点的に理解が必要かもしれないクラスメイトに注意を払うことくらいしかできない」

「何はともあれ、冷曦の家で楽しんで来てよ」

彼は立ち上がった。

「先に教室に戻るよ。ちょっと昼寝してくる」

「家に帰って昼寝しないの？」

「昼にまだ用事があるんだ。じゃあ、教室で会おう」

叶子楫は人混みに紛れて去って行った。

ちょうど話すことがなくなったと感じたところで会話を終えてくれるんだね。

これがあの上次試験の文語文の試験問題にあった「公瑾と交わるは醇醪を飲むが如し」って感じなのかな。

私は息を吐き、茶碗を手に取り、無料の海苔スープを体裁も構わず飲み干し始めた。

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夜、いつものようにベッドにもたれかかりながら、私はネットで冷曦が住んでいるという小区を検索してみた。

この房价は……冷曦がどのタイプに住んでいるかはわからないけど、叶子楫の口ぶりからすると、多分一番安い類いじゃないだろう。

私の公務員の父親が何年働いたら一軒買えるんだろう……一生貯金すれば、どうにかぎりぎり可能かもしれない。

それも家族全員が倹約する場合の話だろう。

もし私がそんなに裕福なプラットフォームと、開明的な両親を持っていたら……今よりずっと色彩鮮やかな生活を送れていただろうか。

陸筱よりもずっと目立ち、みんなが私に期待するような人間になれていただろうか。

ついに、私のその虚ろな天賦を現実のものにできていただろうか。

もう。

私はいらいらしてスマホを置き、頭上にある灯光が黄ばんだシャンデリアをぼんやりと見つめた。

冷曦の部屋はどんなんだろう。

多分正規のアニメポスターでいっぱいで、高いフィギュアが一列に並んでいるんだろうか。

今すぐ見に行きたい。

私はうつむき、顔を綿がすでにボロボロに破れ、異常に柔らかくなった大きな人参の抱き枕に深く埋めた。