第38話
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
胸辺りを強く掴み、過呼吸になっている様子のアリアナ。
あれは……使い魔特性の力だけって感じじゃないな。
もちろん、使い魔特性の力のせいもあるんだろうが……初めての序列戦ってことでシンプルに緊張してた感情も混ざってるって感じだ。
いくら強気な様子を見せてきていたって、内心では少しくらいは不安な気持ちもちゃんとあったってことか。
……ま、年相応なんじゃないか? むしろ外に出さないだけ凄いと思うよ。
空間属性の魔法を使い、相手の使い魔の目の前に転移をした俺は、そのまま軽くチョップをして叩き落とした。
ペラペラだから、紙みたいにビリビリに破いてみたい気持ちを抑えて。
本当はもっと使い魔特性を使わせたりして、使い魔特性を使いすぎることによる代償があるのか無いのかだったりを色々と確かめたかったんだが、アリアナがあのままじゃ割と危なそうだったし、仕方ない。
俺が立っていても、召喚主であるアリアナがやられた時点で試合終了……俺たちの負けになってしまうみたいだし、当然の処置だ。
いくらなんでも、こんな所で負けてもらっちゃ困るし。
ま、どうせ相手は所詮昼のやつよりも序列が下の950位の使い魔。
ちゃんとした実験はもっと順位が上がってからでいいだろう。
「ッ!?」
いくら対戦相手のやる気が無さそうとはいえ、流石に俺がいきなり自分の使い魔の目の前に転移をしてきて、自分の使い魔を倒してしまったことには驚いている様子だった。
このまま俺が終わらせてやってもいいが──
「アリアナ様。そろそろ落ち着いたでしょう?」
「え、えぇ……ありがとう、ラスト」
「気にしないでください。それより、後はどうぞ」
──アリアナに花でも持たせてやることにした。
俺1人で終わらせて、自信喪失なんてことになって、アリアナが序列戦に挑まなくなったりしたら嫌だしな。
……まぁ、使い魔の力だって普通は召喚主の力なことには間違いないし、そもそも、アリアナの性格的にそんなことは絶対に無さそうだが……念の為ってやつだよ。
シンプルに昼には見られなかったアリアナの実力ってやつも見ておきたいしな。
「ご、獄炎!」
やる気の無さそうな男の周りが燃え上がる。
ふむ。
なるほど?
悪くはないな。
人間……というか、こっちの生物にしては、だけど。
「勝負あり! アリアナ・チェントラッキオの勝利です!」
相手の男が炎に囲まれ腰を抜かしていたからか、審判がそう宣言をし、アリアナの勝利で戦いが終わった。
ただ、驚く程に歓声は無かった。
ま、そりゃみんなアリアナの負ける様子を見に来てたみたいだし、当たり前か。
序列最下位が950位に上がったくらいじゃ盛り上がるも何も無いってのもありそうだけど……なんでもいいわ。
「明日までに序列の更新を行っておきます。では、私はこれで」
ぞろぞろと帰っていく観客たちと共に、審判もその場から消えていなくなった。
対戦相手は……まだ腰を抜かして、恥ずかしそうにしていた。
……だから、男のそういうのは需要が無いんだって。
「ら、ラストっ! 私たち! 今度は序列戦で勝ったわよ!」
笑みを浮かべ、嬉しそうにそう言って近づいてくるアリアナ。
骨でも投げたら喜んで取ってきそうだ。
「えぇ、私のおかげで、勝てましたね。元序列最下位のアリアナ様」
「な、な、な……ぅ、た、確かに、こ、今回は、あ、あんたの……ラストのおかげよ。認めるわよ。……私1人じゃ、多分、負けちゃってたわ」
「なんでしたっけ? 私が序列最下位なのは、学園のルールのせい、でしたっけ?」
「ッッッ〜〜〜! あ、あ、あ、相手が悪かったのよ! そ、それに! 私はあんたが直ぐに空間属性の魔法で倒してくれるものだと思ってたから、油断してたのよ!」
「……なんと見苦しい言い訳でしょう。私の主ながら、恥ずかしいです……」
両手で顔を隠しながら、そう言ってやる。
「ッッッ〜〜〜! ……ま、魔法は! す、凄かったでしょ!? 実力はあるのよ!」
アリアナも内心では言い訳に過ぎないことを理解しているのか、話を逸らすようにそう言ってきた。
「帰りましょうか。アリアナ様」
「な、なんで何も返してくれないのよ!」
「お手を」
「だ、だから──」
「早く掴んでくれないと、置いていってしまいますよ?」
「も、もう〜〜〜!」
牛のモノマネをしながらも、しっかりと差し出した手は掴んでくるアリアナ。
それを確認して、俺は寮のアリアナの部屋へと転移を発動する──
「………………い、一応、ありがと」
──という瞬間、そんな声が聞こえたような気がした。
……というか、普通に聞こえた。
転移に対してなのか、序列戦に勝てたことに対してなのか……多分、どっちもかな。
アリアナは聞こえてないと思ってそうだから、何も言わなくていいか。




