第33話
視線が気持ちの悪い見た目の使い魔に固定されたまま、俺は考える。
まずは魔力でも高めてみるか。
視線の固定化は解けなかった。
ま、こんなシンプルな手段じゃそりゃそうか。
それに、魔力を高めたといっても、俺の魔力を全部解放したわけでもないしな。
俺の魔力を全部なんて解放したら……多分、あの老婆教師はショック死するんじゃないかね。
それはそれで見てみたいけど……アリアナにまで被害が及びそうだしな。
仕方ないから、やめておいてやる。
魔法……攻撃系の魔法は微妙だよな。
見た目だけで考えれば、めちゃくちゃ脆そうだし、普通に一撃で終わってしまいそうだから、それじゃあつまらない。
仮に攻撃するのならば、それはもう終わってもいい最後の最後だな。
だったらどうするか──
「魅了」
少し考え、魅了属性の魔法を使ってみることにした。
魔法ではないけど、ちょうどさっき……というか、今も尚相手に使われている最中だしな。お返しってやつだ。
相手は言わずもがな、目ん玉だ。
俺の視線が目ん玉に固定されてるってことは、相手の視線だって俺に固定されてるってことだから、あっさりと……本当にあっさりと目ん玉は俺の魅了魔法に掛かった。
「そのまま解くなよ」
とはいえ、まだ実験は終わってないから、視線固定を解かせはしない。
次は魔力でも奪ってみるか。
「魔力ドレイン」
元から魔力の総量が少なかったから、ひとみとかいう使い魔の魔力が一瞬で底を尽く。
使い魔特性が魔法じゃないことは分かってたから、予想通りではあるが、視線固定は解除されなかった。
ただ、さっきまでは宙に浮かんでいたのに、目ん玉使い魔は魔力が無くなったからか、地面にぐったりとした様子で転がっていた。
ふむ。
浮かぶのに魔力を使っている様子は無かったから、魔力切れで体調を崩してるってところか。
使い魔もちゃんと生物のルールに縛られてるってことね。これは悪くない情報だ。
あくまで序列742位の使い魔を元にした情報だけどな。まぁ、無いよりはマシさ。
「何か攻撃系の使い魔特性……あー、今使ってる能力と同じような力は持ってないのか?」
地面に転がったまま、そんなものは無い、と視線で訴えてくる目ん玉。
……使えないな。
ま、所詮は序列742位の使い魔ってことか。
そう思いつつ、俺は目ん玉に近づいていき、そのまま軽く足で踏み潰した。
すると、視線固定が解けた。
俺を視界に入れられなくなったから解けたのか、シンプルに痛みによって解いてしまっただけなのか……まぁどっちでもいいか。
それより、アリアナは──おぉ、案外勝ちそうじゃないか。
ま、あんな質の良い魔力を持ってて使い魔もいないシンプルなタイマンで負けたりなんてしてたら、弱いにも程があるし、当たり前なんだけどさ。
俺が手伝うまでもなくあっちは勝ちそうだし……せっかくだ。
俺は周りの観戦をしている生徒たちでも使って遊んでようかな。
そう思い、俺は踏みつけていた目ん玉を転がして、視界の部分を地面に向けさせた。そしてそのまま片手で目ん玉を掴み、試しに審判をしている老婆教師の方にでも向けてみた。
あ、普通に視線を固定されたな、ありゃ。随分と驚いているみたいで、間抜け顔を晒している……のはいつもの事だし、あんまり変わらないか。
老婆教師に使い魔特性を使えなんて命令はしてないから、発動をさせている間視界に入った生物は強制的に……いや、それなら、俺の後ろで観戦をしていたヤツらが巻き添えになってないのはおかしいな。
……距離を調整できるってことか? それとも、シンプルに距離制限があるのか?
「……今お前の視界に映っている全ての生物に使い魔特性……その力を掛けてみろ」
そう思い、試す意味を込めてそう言った。
すると、目ん玉使い魔の視界に映っているであろう全ての生物の視界が目ん玉に固定された。
へぇ。こりゃ面白いな。
……これ、悪魔の世界に送ったらどうなるんだろうな。
いや、殺されるのは考えるまでもなく分かる事だが、そうじゃなく、あの花女は悪魔の世界にいるはずの使い魔を召喚できるのかって話だ。
気になるけど……召喚できなかった場合、実質殺したようなものだし、試すことは出来ないな。
殺すのは禁止って話だったし。
もっと面白いことならともかく、この程度のことでアリアナが退学にでもなったら困るからな。
そんなことを思っていると……アリアナの視線も固定されていた。
あいつ、なんで固定されてるんだ? 角度的に、目ん玉の視界には入って無さそうだが……まだ俺の知らない仕様があるってことか。
まぁちょうどいい。
使い魔に視界を固定されたアリアナに不意打ちを仕掛けようとしている花女にでもこれは返してやるか。
このまま投げたら、アリアナの首を痛めてしまうかもだから──
「そこの赤髪の令嬢からは使い魔特性の能力を切れ」
──そう命令してから、上手く老婆教師たちは目ん玉の視界に映り続けるように工夫して、俺は花女に向かって軽く……そう、本当に軽くその目ん玉を放り投げた。
「……へっ? ぶへぁっ」
いい感じに手加減が出来つつ、コントロールも完璧で花女の顔に目ん玉が当たった。
その衝撃で花女が倒れる……と同時に、さっきまで使い魔に視界を固定されていた奴らの何人かが痛みによって騒ぎ出していた。
ま、そりゃ角度的に首を曲げられる限界値ってのがあるんだし、当然の結果だろう。
そうなることなんて分かった上で投げてるんだから、それ自体はどうでも良くて……あの目ん玉、なんか充血してきてるな。
俺はちゃんと手加減できてたから、俺が投げたせいじゃないとするのならば……使い魔特性の使い過ぎかね?
X(旧Twitter)やカクヨム様の方では既にご報告させていただいているのですが、この度今作品である【転生悪魔さん〜万年の時を経てとうとう現世に降臨する〜】が第1回GAウェブ小説コンテストにて特別賞を受賞させていただくことが出来ましたことをこの場でもお知らせさせて頂きます。
それに伴い、書籍化もするので、楽しみにして頂ければ幸いです。




