第31話
アリアナと俺が場に立つと同時に、えっと……誰だっけ。花みたいな名前の女が俺とアリアナから少し離れた反対側の場に立ってきた。
金髪の……なんか、すっごい清楚な雰囲気を漂わせてる女だ。
アリアナよりも身長が大きければ、胸も大きかった。
……アリアナはこの性格だからこそ面白いんだし、性格に対しては文句なんて一切無いんだが……体だけはあっちと交換してくれないかな、と思うほどに良いスタイルだった。
「よろしくお願い致しますわ。アリアナ様」
……まぁ、3年もしたらいくらアリアナでもあの花みたいな名前の女ほどとはいかなくたって、少しくらいは大きくなるだろうし、それまでの我慢だな。
3年くらい俺からしたら本当にあっという間だし。
「えぇ、よろしく」
ニコニコとしている花女。
アリアナを……というより、あれは俺を舐めてる感じだな。
……悪意……では無いが、良いね。これも、嫌いじゃない。
とはいえ、高々序列742位で悪魔を舐められるほどの使い魔を持っているものなのかね。
「来てください、ひとみちゃん」
使い魔召喚……なのは分かるが、なんだ? 使い魔の名前ってのはちゃん付けをするのがデフォルトだったりするのか?
まぁ、あの老婆教師がちゃんを付けて呼ぶのと、目の前の花女がちゃんを付けて呼ぶのじゃ天と地ほどの差があるから、花女が言うのなら、別に何も思わないが。
そんなことを思っていると、魔法陣と共に……中に浮かぶ1mくらいの目が現れた。……目玉だ。……ひとみちゃん……瞳ちゃん……? 冗談だろう?
めっちゃ気持ち悪い見た目なんだが。
「両者ともに準備はよろしいですか?」
「問題ないわ」
「わたくしも、大丈夫です」
俺が大丈夫じゃないんだが。
なんだよ、あのSAN値を削りそうな見た目。
こいつらは何も思わないのか? あれに対して。
この場を見ている周りの生徒を見ても、アリアナに蔑むような視線を向けているだけで、あの目玉に対してのマイナスな感情は伺えなかった。
……使い魔として、あれは普通の見た目ってことか。俺がまだ人間だったら、発狂しててもおかしくないぞ。
「では、始め!」
「ッ、ら、ラスト! あんたは使い魔の方を頼むわよ! ……あの力は序列戦の方にとっておきなさい」
あの力とは、空間属性の魔法のことだろう。
ここで使うのも、序列戦で使うのも、対して変わらない気がするけど……仕方ないから、言う通りにしてやろう。
どの道、どう見てもあの花女は接近戦を得意としているようには見えなかったし、空間属性の魔法なんて使ったらあっという間に終わるだろうから、使うつもりなんて最初からなかったし、むしろちょうどいい。
「お任せ下さい」
さて、この使い魔は一体どんな力を持っているんだろうな? 早く見せてくれよ。
そう思って目ん玉のことを見つめていると……随分とその目ん玉が綺麗なことに気がついた。
まるで吸い込まれるような錯覚を覚えてしまうほどの綺麗な目だ……って、絵に書いたような魅了系の効果じゃないか。
少しガッカリとした気持ちを抱きつつ、アリアナの実力でも見ようと視線を目ん玉から動かそうとした……のだが、俺の視線が宙に浮かぶ目ん玉から動くことはなかった。
「くふっ」
これは、魅了効果だけじゃないな。
言うなれば……視線固定か。
単純な効果だ。
だが、面白い。
魔法で再現できない、という点が味を追加している。
魅了効果だけならば、魔法で簡単に再現ができる……というか、普通に魅了属性というものまで少なくとも悪魔たちには存在していた。
ただ、あの目ん玉が使っていたものは確実に魔法では再現のできない何かだった。
あの老婆教師の使い魔……ふわりとかいう綿菓子が使ってた能力も、もしかしたら魔法では再現できない能力なのかもな。
あの時は使い魔を召喚する魔法の構築に意識を割いてたから……ってのは言い訳か。
一応、俺も少し離れた距離から相手の視線を無理やり動かすことは可能だ。その相手は5秒後くらいには失明することになるだろうが、可能か不可能かでいえば可能だ。
ただ、逆に言えば視線を固定することは出来ない。
もしももっと序列が高い奴らの使い魔も同じような魔法では真似出来ない能力を……それも視線固定なんてものじゃなく、攻撃系の能力を持ってるんだとしたら……召喚された悪魔が勝てない理由も分からなくは無いな。
……使い魔。想像以上に面白いじゃないか。
アリアナの方も気になるが……今は目の前の使い魔に集中するか。
使い魔の魔法じゃない力(これからは使い魔特性とでも呼ぼうか)の効果を魔法で強制解除出来るのかだったりを色々と実験しないとだからな。
アリアナ、頼むから、勝手に負けて試合終了、なんてことにはしないでくれよ?




