第28話
「……」
「な、何よ!」
「私は何も申しておりませんよ」
「だ、だったら、その目は何よ! い、言いたいことがあるのなら、はっきり言いなさいよ!」
怒っている様子でそう言ってくるアリアナ。
「そうですか? でしたら、言わせてもらうのですが、先程序列戦を挑んでいましたね?」
「そ、それが何よ」
「それ自体は良いのですよ」
俺だって使い魔と早く戦いたいしな?
ただ──
「いくらアリアナ様が序列最下位の雑魚で自信も何も無い本当にどうしようもない存在なんだとしても、挑む相手が序列950位ですか。どうしようもない存在のアリアナ様ただお1人ならばまだしも、私がいるというのに」
──挑んだ相手の序列が低すぎることが問題だった。
アリアナの目標が低いことはもう分かっていたし、いきなり400位や500位には挑まないんだろうな、ということは薄々察してたさ。
ただ、950位は無いわ。ただでさえ最下位の自分よりたった50位上って……ありえないだろ。
これでアリアナの順位が300位とかだとして、50位上の250位に挑んだ、とかだったら分からなくもないが……最下位だぞ? 下から50位上なだけの奴だぞ? 挑む価値なんて無いだろ。
「う、う、うるさいわね! し、仕方ないじゃない! 序列戦はルールとして、500位以下の人は自分より50位上の人にまでしか挑めないのよ! こ、これでも私は挑める最高位の人に挑んでるんだから!」
なるほど?
そういうルールがあったのか。
……確かに、ワンチャンに掛けて序列1位に挑む馬鹿が何人も現れないとは言いきれないもんな。そういう対策なのか。
……良いルールだとは思うけど……今は邪魔でしかないな。
「おや? そうだったのですか? でしたら最初からそう仰ってくださいよ。私はてっきり、アリアナ様が序列最下位の雑魚でどうしようもない──」
「そ、そ、それ! や、やめなさいよ! だ、誰が雑魚よ! い、言ってるでしょ! 私が序列最下位なのは使い魔がいないからだって! つ、使い魔さえいたら、今頃序列100位以内にはいるわよ!」
……1位じゃないんだな。……トップ10でも無いし。
アリアナはこうやって喋ってても分かる通り、かなり気の強い子だ。
だからこそ、疑問に思ってしまう。
なんでたらればの話でさえもそんなに順位が低いのか、と。
いや、現実で100位以内ともなればかなり高順位なんだろうが……たらればの話だぞ? 普通、もっと高いもんじゃないか?
……それほどまでに序列トップの奴らってのは強いのかね。
今からが楽しみだな。
「ふふっ」
「な、何よ!」
「いえ、口ではなんとでも言えますよね、なんて決して思っていませんよ」
「あ、あ、あ、あんた〜〜〜!」
「質問なのですが、序列500位以上にさえ入れば、一気に1位に挑むことも出来るようになるのですか?」
怒っているアリアナを敢えて無視して、そう聞く。
「こ、この……ふ、ふぅ。お、落ち着くのよ、私。……し、仕方ないから、答えてあげるわ! 無知なラストの為に特別にね! わ、私は誰かさんと違って優しいんだから!」
「私が序列戦に関して無知なのは昨日、アリアナ様が序列戦に関してのことを教えてくださった時にちゃんと話してくれなかったからなのですが……まぁいいでしょう。私はアリアナ様には非常に、えぇ、それはもう非常に勿体ない心の優しい悪魔ですからね。何も言いませんよ」
「い、い、言ってるのよ! 全部! 全部言ってるのよ! このばか悪魔!」
「おっと、これは失礼致しました。どうやら口に出ていたみたいですね。ですが気にしないでください。その誰かさんというのは全く検討もつきませんが、アリアナ様は優しいのでしょう? でしたら、この程度で怒ったりはしないはずですからね。では、説明してください。特別に、聞いて差し上げますから」
「え、え、え、えぇ、わ、わ、わ、私は、や、や、や、優しい、から、お、お、お、怒ったりなんか、し、しない、わよ、え、えぇ」
声を震わせ、肩もプルプルと震わせながら、明らかに怒っている様子でそう言ってくるアリアナ。
「じ、序列500位からは、さ、300位までは一気に80位自分より順位が上の人にまで挑んだりできるようになるのよ。そ、それで、300位からは100位まで、自分より順位が100位上の人にまで挑めるようになって、ひ、100位からは10位まで、自分より順位が10位上の人に挑めるようになるのよ。わ、分かったかしら?」
そのままの様子で、震えた声のままアリアナはそこまで説明してくれた。
「アリアナ様にしては、分かりやすい説明でしたね」
手をぱちぱちしながら、そう言う。
「ただ、10位から上の説明が無いのですが」
「ふ、ふふ……そ、そこからは、い、1位ずつ挑むしかなくなるのよ」
「なるほど。わざわざアリアナ様にとっては非常に難しいであろう説明をして下さったこと、大変感謝いたします」
かなりめんどくさいシステムだけど……まぁ、仕方ないか。
どうせ一気に上がったってつまらなかっただろうし、と思えば悪くはないかもな。
地道に上がっていこうか。
「アリアナ様、そろそろ授業が始まりますよ。教室に向かった方がよろしいのでは? ふふっ、私は気遣いのできる悪魔ですから、お礼など結構ですよ」
「ふ、ふふ……ふふふふ……も、も、も、もう! が、我慢の限界よ!」
「我慢ですか? 確かに、我慢は体に良くありませんね。大きい方ですか? 小さい方ですか? どちらでも良いですが、早く行ってきてください」
「こ、この……ば、ばか悪魔! 変態最低スケベ悪魔!」
言葉通り我慢の限界を迎えたのか、アリアナはそのまま殴りかかってきた。
また授業に遅刻するぞ?




