第23話
パーフェクトゲームを達成した後、俺はすぐに上へ続く階段を発見した。当然腕はもう元に戻してある。歩きにくいし。
今更だが、最初のボールを投げた付近に階段が無くて良かったな。場合によっては階段ごと壊れてたかもしれん。
まぁ、壊れてようが壊れてなかろうが、俺にとってはどっちでも同じことだけど。
「静かになったが、下の階での騒動はもう片ずいたのか?」
そうして、コツコツと一定のリズムで足音を立てながら歩いていると、突然横の部屋の扉が開き、体格の良いスキンヘッドの男にそう聞かれた。
「お前がボスか?」
「あ? てめぇ、誰に向かってお前だなんて言ってんだ?」
「知らないから聞いてるんだが」
反応的にどっちも有り得そうで殺そうにも殺せないから、早く答えて欲しい。
「そうか。お前が下で騒ぎを起こしてた張本人か。まんまと上の階に通しやがって……使えねぇゴミ共だ。冥土の土産に教えてやるよ。ボスなら奥の部屋にいる」
なんだ。ボスじゃねぇのか。
それなら──
そこまで考えたところで、スキンヘッドの男の拳にはガントレットが突然装備されていた。
アリアナの話じゃ空間属性の魔法は無いって話だったよな……?
アリアナが俺にそんなくだらない嘘をつく必要性があるとは思えないし……これは一体──
「死に晒せや! クソ野郎が!」
男が手を横に振る。
到底俺に当たるような間合いでは無い。
そのはずなのに、俺の首元から勢いよく血が溢れ出した。
なるほど。そういうことか。
悪魔にもこいつと同じ魔法を使って戦うやつはいたが……悪魔にこんな戦法通じないしな。すぐに戦い方を変えてたっけか。
俺は逆に意識の外すぎて食らっちまった……というか、そもそも攻撃を防ごうとしてなかっただけか。
なんだかんだこの戦法を見るのも懐かしいな。
「チッ、下の様子を一応見ねぇとか」
俺を置いて階段に向かおうとしているスキンヘッドの男。
「おい、勝手にどこ行くんだよ」
「……なんで生きてやがるんだ、てめぇ」
「さぁ? 俺は優しくないからさ、冥土の土産なんてあげるタイプじゃないんだよ」
「チッ、だったら、てめぇが死ぬまで切り刻んでやるよ!」
また腕を横に振ろうとしているスキンヘッドの男にゆっくりと近づいていく。
そしてそのまま、俺は身体中に傷を作りながら、スキンヘッドの男の腕を掴み、握り潰した。
「んなことしたってなんの意味も──ぐァァァァァ!? な、なんだ!? な、なんで痛い!? どうなってる!? なんで、俺様の本当の体が──なんで俺様の腕が……!?」
スキンヘッドの男……がいないはずの方向から、そんな声と共に金属の何かが落ちるような音が聞こえてきた。
「何の工夫もせずに使う幻術属性の弱点ってやつだよ。勉強になったな」
ま、俺たち悪魔以外に出来る生物がいるのかは微妙だがな。
そもそも、幻術属性の魔法で作り出した幻術を動かすか動かさないかで使う魔力の量が微量ながらも変わる……ということすら人間たちは知らない可能性が今の俺の中にはあるし。
今日あんな授業を聞かされたばっかりだしさ。
微量と言っても、その微量の魔力量の違いで明確な弱点が生まれちまうんだから、やっぱり、魔法ってのも面白いよな。
「それで、拾わないのか?」
もしかしたら使い魔を召喚してくれるかもと思い、すぐに終わらせずにわざわざ待ってやってたというのに、自分が作り出した幻術と本体の体を強制的に連動させられたせいで発生した痛みに耐えられずに落としてしまっていた剣すら拾わないから、思わずそう聞いてしまった。
痛みに慣れてないんだろうな。
ずっとあんな戦い方をして、弱点を突いてくるような相手もいなかったんだとしたら、当然といえば当然なんだけどさ。待ってるこっちの立場にもなってくれ。
「ぁ……」
「はぁ」
何もなさそうだな。
指を鳴らす。
例に習って悪魔の世界への強制旅行の始まりだ。
さっき送ったばっかりだし、今回は1秒持てばいい方だな。




