第21話
2人の暗殺者を処分した後、俺は頭と心臓部分の傷を治し、服についた血痕をちゃんと消してから、路地裏から出てきていた。
あー、てか、さっきの奴から聞き出したアリアナの暗殺依頼を受けた裏組織(名前も聞いたけど興味が無くて忘れた)がある場所に逃げた3人目が向かってるな。
意図せずして裏取りが出来たわけだ。
あの2人が俺に負けることを考慮して、敵対組織に逃げ込んでたり……なんてことは考えなくていいか。深読みしすぎだ。
さっさとその裏組織に向かって、アリアナを殺すように依頼した奴が誰なのかを調べてしまおう。
さっきの奴は雇い主までは知らなかったし。
「あ、あの!」
そこで肩を掴まれた。
悪意は感じないから、つまらない要件なのは聞くまでもないことだが──
「私に何か用でしょうか」
「あ、えっと……」
なんだ?
俺は忙しいんだから、さっさと用件を話して欲しいんだが。
それとも、自殺志願者か?
それなら、遠慮なく殺してやるけど。
「用が無いのなら、私はもう行きたいのですが……」
「あ、い、いえ……その、き、昨日! ララドさんとこの辺で一緒にいませんでしたか!?」
ララド? ……誰だ? それ。
というか、そもそも現世の世界での俺の知り合いなんてアリアナくらいしかいないし、知っているわけがない。
「知りませんね。では、急いでいるので、私はこれで」
「あっ……」
言ってから思った。
そういえば、昨日俺に悪意を向けてくれた男……悪魔の世界に強制的に転移させて殺した男と出会ったのはこの辺だった気がするな、と。
まさかあれがララドとかいう名前だったりしたのか?
……んー、まぁ、どうでもいいか。
仮にそうだったんだとしても、そうじゃなかったんだとしても、俺には関係が無さすぎることだ。
そんなことを思いつつ、そのまま一直線に逃げた3人目がいる裏組織がある場所へと俺は向かっていく。
わざわざ転移を使わずに歩いて向かったっていうのに、今日は悪意をぶつけられることは無かった。
非常に残念だが、仕方ない。
運が無かったと諦めよう。
さて、ここがその裏組織か。
「おい、お前。こっちは立ち入り禁止だ。今は見逃してやるから、さっさと消えろ」
3人目はもうとっくに中に逃げ込んでるみたいだな。
「おい! 聞いてるのか!」
そこで俺は大きく息を吸い──
「たーのもーっ!」
大きな声でそう言った。
かなりの数の人間が中にいることは分かるが……動きがないな。
自分たちに言われてるって気がついてないのかな。
「お前……! チッ。なんで俺が見張りの当番の時に限ってこんなイカレ野郎がくるかね。まぁいい。見逃してやろうと思ってたっていうのに、さっさと逃げねぇお前が悪いんだからな。恨むんなら自分を恨めよ」
仕方ない。
それなら、否が応でも自分たちに言っているんだということに気がついてもらうか。
ちょうどいいボールもあるしな。
「サッカー……いえ、ドッジボールをやりませんか?」
「はぁ。たまに来るんだよな。お前みたいな頭のおかしい──」
「ボールはあなたです」
右腕だけを7、8倍くらいの大きさに肥大化させ、俺はガッチリと近くにあったボールを掴んだ。
「何千年ぶりでしょう。ドッジボールなどと。子供の頃、よくやりましたね。ちなみにですが、私はそこそこ強かったのですよ」
聞こえているのかは分からないが、腕の中でモゾモゾと動いているボールに向かって語りかける。
残念なことに返事は絶叫でしか返ってこなかった。
お喋りは嫌いみたいだ。
骨が砕けるような音が鳴り響く。
よし、いい感じに丸くなったな。
「それじゃあ、そっちの勝利条件は生き残るってことで……ゲームスタートだ!」
そして、俺はそのままボールを軽く投げた。
力いっぱい投げたりなんかしたら、そのまま一直線に街の外にまで被害が出て大騒ぎになるだろうから。
俺は別にそれでもいいけど……ここは一応学園がある街だ。
学園が休みになりでもしたら困るからな。
俺は自重が出来る転生者なんだよ。




