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第2話

 あれから2000年の時が経った。

 俺の周りには、多種多様な悪魔が溢れていた。

 わいわいとそれはもう楽しい楽しい──


「ぐはっ!」


 ──殺し合いが行われていた。

 ……なんでこうなったんだろうな?

 いや、こんな何も無い空間を思えば、案外普通のことなのかもしれない。


 悪魔は死んでも死なない。

 現世に降臨した状態で死んでしまえば、こっちの世界に戻ってきてしまう、というデメリットは発生するようになってしまうが、この悪魔の世界でだけは、死んでもなんのデメリットも無く復活してしまう。

 だからこそ、殺し合いが娯楽になったっておかしいことでは無いんだろう。


 ちなみに、俺はそんな殺し合いに巻き込まれることは無かった。

 いや、違うな。正確には、もう巻き込まれることは無い、ってのが正しいな。

 こいつらは俺が創造主だとか関係無く、殺し合いが行われるようになった日から普通に襲いかかってきやがったしな。

 

 なんで俺が巻き込まれなくなったのかというと……答えは単純で、圧倒的な力でねじ伏せてやったからだ。

 何度死んでも殺し合いを繰り返す頭のおかしい悪魔共でも、もう二度と手を出そうとだなんて考えに至らせない程の恐怖と絶望を叩き込んでやったんだ。

 そうしたら、喧嘩を売られることは無くなった。


 ……まぁ、たまに俺の方から喧嘩を売ることもあるけどな。

 いや、俺だって暇だし。

 基本魔法の研究で暇は潰せるんだけど、たまにはな。


「あ」


 誰かが声を出した。

 悪魔の世界に現世への召喚門が開いたからだ。

 そんな門を1人の悪魔がくぐり抜ける……と同時に、門が消失した。

 そう、門には1人しか入れないんだ。


 現世に悪魔の存在を知らしめることに成功はした。

 今では俺が悪魔を作成する際に作ったルールのおかげで、ちょくちょくと現世に悪魔が召喚されてたりする。

 メリットを作っておかないと、定期的に召喚されることなんて絶対に無いからな。あの時の俺、本当によくやった。英断だよ。


 ……だが、俺は門が出てくる度に、それをくぐる悪魔を羨ましい目で見つめることしか出来なかった。

 

 ……そう。俺は門をくぐれなかったんだ。

 最初門が現れた時、周りにいた悪魔を全て蹂躙……丁寧に退かし俺がくぐろうとした。

 でも、門から弾かれたんだよ。


 理由はもう分かってる。

 俺が強すぎるんだ。

 俺を召喚するには相当な才能、もしくは実力がいるみたいで、生半可な召喚主からの召喚に俺は応えることが出来ないんだ。

 だから、俺は毎日毎日、ここで魔法の研究をしつつ、俺を召喚してくれる才能、もしくは実力を持った人物が召喚門を開いてくれることを待っているんだ。


 指を鳴らす。

 暇つぶしに、今召喚されていった悪魔の様子でも見ようかと思って。


 あぁ、ちなみになんだが、悪魔の見た目は割とランダムだったりする。

 角が生えてるやつもいれば、翼が生えているやつもいたり、なんなら人型じゃないやつまでいたりする。

 その時の気分ってやつだな。一応、目だけは俺の特別性を表したくて、みんな普通の人間と同じだったりする。

 まぁ、今は俺が何もせずとも自動的に悪魔が生まれるように魔法を設定したから、マジで「なんだあいつ?」っていうやつもいたりするんだけどさ。

 どうせこの闇の空間は壁なんて存在しないんだから、どれだけ増えようが問題無いし、全員俺よりは絶対に強くならないようにしてあるから、なんの問題も無い。徒党を組まれようが、その辺も対策済みだ。

 当たり前だよな。自分の生み出した存在に殺られるなんて、馬鹿すぎるし。

 たとえ俺自身が悪魔で殺しても死なない存在だったんだとしても、だ。……当時はそもそも知らなかったし。

 

 話を戻そう。

 今召喚されていった悪魔は人型で……翼が生えてるタイプだな。

 召喚主は人間の爺さんか。


「おぉ、なんと禍々しい見た目か……まぁ良い。儂と契約をするのじゃ! 悪魔よ!」


「望み、そしてそれに見合う対価は?」


 これが俺の設定したルールだ。

 悪魔は召喚された時に「望み、そしてそれに見合う対価は?」という定型文を言わなければならない、というものと、約束を破れない、というものだ。

 悪魔はもしも約束を破ってしまえば、自分の存在が完全に消滅してしまうのだ。いうなれば、唯一の悪魔を殺す方法だったりする。


 あ、でも、これ、俺は関係ないから。

 いや、だって、俺が現世に降臨した時は自由にしたいし、そりゃそうでしょ。

 そもそも、俺が作った悪魔に対して俺が勝手に作ったルールだし。

 ま、向こうの生物に定期的に召喚してもらうには向こうにもメリットは必要だし、仕方ないよね。

 俺を召喚したやつはとんだ貧乏くじだろうけど。

 だって、従わせられないんだから。


「儂の命ある限り、一生の忠誠を誓え! そして儂が死すべき時、悪魔の世界に帰るのじゃ! 対価は定期的に儂の領地で出る犯罪者の魂をくれてやろう」


「いいだろう。契約成立だ」


 この人間から出た最後の「死すべき時、悪魔の世界に帰れ!」みたいな言葉は召喚主側の定型文だったりする。

 昔、それで現世の方で事件が起きたからな。

 何が起きたのかというと簡単で、召喚主が生きている間は契約で縛れていた悪魔が、召喚主が死んだ途端自由になって国を1個滅ぼしちゃったんだよね。

 それが光の速度で広がって、今に至るって感じ。


 ま、殺し合いが娯楽な連中だ。

 そりゃ、残虐な性格になってても仕方ないよねって感じ。

 俺も約3000年くらい生きてるし、ぶっちゃけネジが2、3本くらい外れてたりするから、正直そのことに対して思うことなんて何も無い。

 今もこうやって召喚してくれる生物がちゃんと現世にいるんだからな。尚更だ。


 てか、この召喚主は普通だったな。

 たまに復讐の為だったり、それこそ国を滅ぼしてくれ! なんてのもいたりするんだけどな。

 そういうのは大体見合った対価を出せずに悪魔だけが即刻帰還してきたりするんだけどさ。召喚主が殺されたりして。

 今思えば、最初に召喚して悪魔の存在を広げてくれたやつがそういう願いをしてこなくて助かったな。

 

 復讐は規模にもよるからともかくとして、国を滅ぼしてくれ、とか、何を対価に出せば悪魔は承諾してくれるんだろうな。

 自分で作っといて分からないわ。

 基本的に契約ではやりすぎるなって言ってあるし、何を言ってもダメな気がする。


 はぁ。早く誰か、俺を召喚してくれねぇかなぁ。

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