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転生悪魔さん〜万年の時を経てとうとう現世に降臨する〜  作者: シャルねる


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第16話

 序列500位だなんて俺を使い魔にしているとは思えないほどの低い目標を掲げているアリアナに連れられ、俺は学食にやってきていた。

 どの世界でも、学食は学生の味方をやっているみたいだ。


 ちなみに授業の時間のはずなのになんで学食なんかにいるのかというと……アリアナがクソ低い目標を掲げた直後、老婆教師がふわりとかいう使い魔を傍にふよふよと浮かせながら魔法でその場にいた生徒全員に授業ができなくなったことを告げ、今日は早めのお昼休憩に入っていいことも同時に告げていたからこそだ。

 学食に向かう前、俺はアリアナに──


「誰かさんが使えないせいで今日は朝食を食べられなかったから、お腹ペコペコだわ」


 ──なんて面白いことを言われていたりするが、それに対しては当然「誰かさんが使えない、と評する者のおかげで恥を掻かずに済んだ方は一体どこの何方なのでしょうか」と満面の笑みで返しておいた。

 アリアナからは悔しそうな声が漏れるだけで、そこからはもう特に何も言われなかった。

 やっぱり、もう本心からは使えない悪魔だとは思われていないようだった。当たり前だけど。

 これで本心から俺のことを使えない悪魔だと思ってたんだとしたら……なぁ?


「そういえば、あの2人、今頃ルーナリア先生に怒られてるのかしら。いえ、怒られるだけで済むわけが無いわね。結果的に人的被害が出ることは無かったけれど、そんなもの結果論でしかないもの」

 

 アリアナが特に興味の無さそうな声色でそんなことを言ってきた。

 雑談というか、アリアナが注文をする番になるまでの暇つぶしかね?

 

 あの2人とは、授業が潰れたにも関わらず休憩に入れていない生徒のことだ。

 まぁ、結論から言うと、俺が魔力を暴走させた2人だな。

 傍から見たらあいつらがいきなり魔法を使って暴走させたようにしか見えなかっただろうし、そりゃ怒られるわなって感じだ。

 最悪退学とかもあるんじゃないか?

 俺はあいつらの家格ってやつを知らないし、この学園のルールもイマイチ知らないから、なんとも言えないけどな。


「そうですね。少なくとも、アリアナ様は私が守らなければ、確実に怪我をしていたでしょうね」


「……あれはその前の言動でチャラだから、あんたには絶対感謝なんてしないけど、そうね。それを考えれば、やっぱり退学かしらね。あいつらは私と違って家格が高い訳でもないしね」


 俺の疑問が一瞬で解決したな。


「あ、私たちの番よ。…………ほら、仕方ないから、ラストも1品くらいなら、選んでもいいわよ」


「よろしいのですか?」


 アリアナのことだし、あんたは悪魔なんだから食べなくていいでしょ! くらい言われるものだと思ってたから、アリアナの食べるものを1口2口3口と貰おうとしてたのに。


「……私が良いって言ってるんだから、いいのよ! それより早く決めなさいよ。私の気が変わる前に」


 それなら、遠慮なく選ばせてもらうか。

 学食だし、かなり安くはなってるんだろうが、別にタダって訳じゃないし、それじゃあなるべく高いものでも頼もうかな。


「それでは、これでお願いします」


「……あんた、値段を見て選んでないでしょうね」


「?」


 小首を傾げる仕草をしておく。


「……まぁいいわ。その程度のお金くらい、私にかかれば……え? あ、あれ?」


「どうかされたのですか? アリアナ様」


「……ら、ラスト。やっぱりそれはダメよ。他のものにしなさい」


「アリアナ様は家格が良いんですよね? この程度も払えないのですか?」


「な、何よ! お、奢られる立場のくせに! ……し、仕方ないじゃない。貯金は確かにあるけど、そんな大金を学園になんて持ってこれるわけないんだから! そ、それに、昨日までは絶対もっとあったのよ! あ、明らかにお金が減ってるのよ! 私のせいじゃないわ!」


「……弱いだけではなく、物忘れまで酷かったとは……私、アリアナ様の将来が心配です。……今のうちに介護の練習でもしておいた方がよろしいでしょうか?」


「ッ〜〜〜! あ、あ、あんた〜〜!」


 殴りかかってくるアリアナの相変わらず遅い拳を避けつつ、俺はアリアナの持っている財布に目を向けた。

 それは昨日俺が無断で借りたアリアナのポケットマネーが入っていた財布にそっくりだった。


「仕方ないですね」


「な、な、な、何がよ!」


「アリアナ様の言う通り、昨日まではあったということにして差し上げますよ。感謝してくださいね」


「ッ〜〜〜〜〜!」


 地団駄を踏むアリアナ。

 本当にその姿は滑稽で面白い。


「も、も、もう、ほ、ほ、本当に、ゆ、許さないわ」


 かなり苛立っているのか、声を震わせながらそう言ってくるアリアナ。


「本当に仕方ないですね」


「だ、だから──」


「今日のところは、私のポケットマネーで支払ってあげますよ」


 そう言って、俺はポケットの中に入れて置いた昨日のお金の残りをアリアナに手渡した。

 

「え……? い、いいの? ……じ、じゃなくて! こ、こんなことで騙されないんだから!」


「騙すだなんて酷いですね……私はただ、善意でお金を出してあげただけだというのに」


「うっ……わ、分かったわよ。それなら、そのお金でチャラにしてあげるわ。それこそ、特別なんだから。私の器の大きさに感謝する事ね」


 なんてチョロい子なんだ。

 俺はお前が詐欺にあわないかが心配だよ。……いや、今更心配したところでか。もう詐欺にあってるし。


「……ん? そういえば、あんた、悪魔よね? なんでお金なんて持ってるのよ」


 ふむ。

 どうやら、詐欺にあっても後から直ぐに気がつけるタイプらしい。

 馬鹿な子だと思ったことは撤回してあげよう。


「拾ったのですよ」


「拾った……? あんた、ずっと私と一緒にいたわよね? どこで拾ったのよ?」


「どこと言われると難しいのですが……あぁ! そうですね。ちょうど今アリアナ様が持っているそれの中から拾ったのですよ」


「それって──」


 俺の視線を辿るアリアナ。


「ふ、ふふ……ふふふふふふ……ほ、ほんと、す、少しでも、感謝をした私が馬鹿だったわね……あ、あんた……ほ、ほんと、い、今ここで、こ、殺してやるから、う、動くんじゃないわよ!!!」


 声を震わせ、かなり怒った様子でそう言ってきながら今までよりも早いスピードで殴りかかってくるアリアナ。

 ただ……やっぱりその速度は遅く、簡単に避けられた。

 というか、そんな拳で俺のことを……いや、俺どころか、普通の悪魔でさえ殺せるわけないだろうに。


「よ、よ、避けるんじゃないわよ!!!」


 そんなやり取りはいくら家格が高いとはいえ、学食を作っているおばちゃんに怒られてしまい、学食を追い出されるまで続いた。


 アリアナは朝食に続き昼食も抜きになってしまったみたいだった。

 ドンマイ、アリアナ。

 大丈夫。人間、2食抜いたくらいじゃ死なないよ。


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