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転生悪魔さん〜万年の時を経てとうとう現世に降臨する〜  作者: シャルねる


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第15話

「我が呼び声に答えなさい」


 アリアナと竜巻から逃げている途中、俺の耳が残った老婆教師のそんな声を拾った。

 ……これはまさか──


 俺が突然止まったことにより、アリアナが「なんでいきなり止まるのよ!」とちょっとぷりぷりしつつ、俺が視線を向けている方向に顔を向けていた。

 そして、瞳に嫉妬の感情が混じったのを俺は見逃さなかった。


「ふわりちゃん」


 ……ん?

 ふわりちゃん?

 ……まぁ、あの老婆にも若い頃は当然あったんだろうから、別におかしなことでは無いんだけど……あの歳でふわりちゃん、かぁ。


 俺がそんな感想を抱くと同時に、本当にふわりちゃんという名前がピッタリな綿菓子に目と口が付いた50センチくらいの小さな存在がふわふわとどこからともなく魔法陣と共に老婆の傍に現れた。

 ……使い魔ってやつ、なんだよな?


「……アリアナ様。まさかとは思いますが、あんなのが私より……いえ、私たちよりも強いと?」


 見た目は言わずもがな。感じる魔力でさえ微弱。俺以外の悪魔でさえもあんなのに負けるとは思えないんだが。


「……見てれば分かるわよ」


「ふむ」


 種族的な特徴、もしくは使い魔限定の何かがあったりするのか?

 悪魔でいえば死なないとかいう特徴があるし、あれにだって何か……強いて言うなら、美味しそうとかか?


「ふわりちゃん、あれを消しなさい」


 老婆の命令が下った。

 その瞬間、ふわりとかいう老婆の使い魔は、すぅぅぅぅ、と息? を吸い出した。

 肺が無いからか、どんどんどんどんと息を吸っているのが見える。

 息を吸う事に体が少しずつ大きくなっていっているのが分かった。

 

 そして、気づいた。

 ……あいつ、魔力を吸ってるのか。

 あのままじゃ混ぜた俺の魔力すらも吸い込まれるな。

 ……どうなるかが気にならないとは言わないが……もしも吸い込んだ魔力を老婆の方で解析出来るようなら、そこから俺が犯人だということがバレるかもしれないな。……それはちょっと面倒だ。

 正直、俺1人なら全然良かったんだが……もう少しこの学園という空間で俺はこの玩具……アリアナで遊びたいからな。今あれの犯人が俺だということがバレて、召喚主であるアリアナを犯罪者にされる訳にはいかない。

 

 仕方ない。

 渋々俺はその場で竜巻の中に存在していた自分の魔力を消滅させた。

 その瞬間、一気に竜巻の威力が弱くなっていくのが分かった。

 ……多少不自然かもだが、まぁ、大丈夫だろ。

 実際──


「ふわりちゃん、ありがとうございます。よく出来ましたね、偉いですよ」


 なんて言って老婆はあの綿菓子を褒めてるし。

 ただ、やっぱり俺はあれに悪魔たちが負けるようには見えなかった。

 他人の魔力を……しかも俺の魔力まで吸い込めるっていうのは確かに凄いことだが……他にも何かがあるってことなのかね。というか、実際俺の魔力を体内に入れてたらどうなってたかは想像がつかないし、それに関しては何とも言えないか。

 ま、アリアナの言う悪魔が勝てない使い魔の1匹があれだというのなら、他にも何かがあるってことなんだろう。そうじゃなきゃ、悪魔を舐めすぎって話になってしまう。

 吸い込んだもののコピー能力でもあんのかね。あのふわりちゃんとかいうのはピンク色だし。


 まぁ今はいいか。それより、別に老婆教師の使い魔じゃなくたっていいから、こうやって見るだけじゃなく、使い魔と直接戦いたかったな。


 この目で召喚するところを直接見ても正直俺には真似できる気がしなかったから、今、俺はかなり使い魔に心を惹かれてたりする。

 なんて言えばいいんだろうな? 本能的というか使い魔を召喚するところを見た瞬間「これは無理だ」という思いが心の奥底から湧き出てきたんだよ。

 魔法の構築は見たし、使い魔を召喚する際の魔力の流れだって見た。理論上は真似をすること自体は出来るはずなのに……どうしても、俺に使い魔を召喚することが出来るとは思えなかった。


 だからこそ、戦いながら使い魔のことを調べたいんだよ。

 まぁ、焦らずともその機会は直ぐに……いや、待て。そういえば、竜巻のせいで地面がかなりぐちゃぐちゃだな。

 ……まさかとは思うが、これ、授業が中止になったりしないよな?


「……どう? 分かったでしょ。あれが使い魔の力よ」


 俺が内心で不安な気持ちを抱いていることになんて一切気がつく素振りを見せることなく、アリアナが老婆教師に対して嫉妬の感情を宿した目を向けながら、そう聞いてきた。


「そうですね……正直に申しますのなら、あの程度の何が私たち悪魔にとって脅威になるのか、理解できませんでしたね」


「頼もしい言葉ね。でも、あれは力の一端に過ぎないわ。……いつか嫌でも理解する時が来るわ。今日はたまたまこんなことが起きて授業が台無しになったから試合をすることも無くなったけど、そうじゃなかったら……」


 珍しく……というほど付き合いが長いわけでは決してないが、弱気だな。

 というか、授業、やっぱり潰れてたのか。

 ……使い魔と戦う機会もだし、またアリアナの実力を把握する機会も逃したな。


「って! 何弱気になってるのよ! 私! 今は私にだって使い魔がいるわ! ……悪魔だけど。こんなのでも、いないよりはマシよ」


「失礼ですね」


「あんたには負けるわよ!」


「おや、では私の勝ちですね。序列最下位のアリアナ様」


「ッ〜〜〜。……ふ、ふぅ、深呼吸深呼吸。今は怒る時じゃないわ。怒るなら、後でよ、後で」


 地団駄を踏みながら胸に手を置き深呼吸をするというかなり面白いことをしているアリアナ。

 そんなに俺に笑って欲しいのかな?


「と、と、とにかく! 私の実力だけでも、本来なら700位くらいには絶対余裕で行けてるはずなのよ。そこに使い魔としてあんたが加わるんだから……序列500位くらいにまでは行けるわよ! 一緒に頑張るわよ! ラスト!」


 …………目標が低い。

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