表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

第1話

「……は?」


 気がついた時、俺の口からは思わずそんな声が出ていた。

 だって、俺は見渡す限り何も無い……そう、本当に何も無い闇の中にいたんだから。

 無限の闇。言葉にするのは簡単で、厨二病心をくすぐられるが……実際にそんな場所にいるともなればたまったものじゃない。

 

 5億年ボタンでも押したのか? ……なんてくだらない冗談を考えてる場合じゃないな。

 まずは歩きながら、この闇を抜けることを試みつつなんで俺がこんな場所にいるのかを考えよう。

 冷静に、冷静に。今、パニックを起こしたって何も変わるはずがないんだから。


 まず、俺は意識が覚醒する前、何をしていた?


「学校に行っている途中で……そうだ。俺、刺されたんだ」


 思わずその時の痛みを思い出し、足を止めてしまいながら刺された腹に手を添えてしまう。

 ただ、そこに痛みも無ければ、傷も無かった。

 服を捲って確かめるも、そこには傷一つ無いお腹しか無かった。


 ……どうなってるんだ?




─────────────────────


 


 それから100年が経った。

 色々と分かったことがある。

 まず、俺は転生している。

 それも悪魔(俺が勝手に命名した)に。

 

 なんで悪魔なのかというと、色々と理由はあるんだが……まぁ、まずは見た目だ。

 こんな何も無い空間でどうやって自分の外見を知ったのかというと、これは悪魔に転生した理由2つ目なんだが、魔法(これも俺が勝手に命名した)が使えるからだ。

 ちなみに100年もこんな何も無い空間で俺が精神を狂わせずに生きられた理由でもある。


 指を鳴らし、自分の外見を改めて前方に映し出す。


 すると、そこには身長が180はあるんじゃないか? という目に黄金を宿した黒白目の黒髪の男が映し出されていた。

 まず人間の外見では無いよな。

 

 そして一応俺が悪魔に転生していると思った3つ目の理由もある。

 ここが異世界だってことだ。

 この闇の世界が……ということではない。いや、もちろんこの闇の世界も俺の前世からしたら異世界なんだが、違う。

 正確には、ここと繋がっている……現世の世界? がだ。

 ここは言ってみれば、俺の……悪魔の世界であり、悪魔以外……というか、俺以外には何も存在しない世界だからな。


 ……うん。寂しい。人肌恋しい。

 

 ま、まぁ、俺がこんな思いを抱かなくて済むのも時間の問題だろう。

 何故なら、俺はもう既に現世の世界のことを認識していることからもわかる通り、現世の世界を観測済みなんだよ。

 

 もう一度指を鳴らす。

 すると、今度は俺の姿ではなく、どこかの騎士が娼婦に行く様子が……って! こんなもんを見せるんじゃねぇ! 俺は1人で悲しくすることしか出来ねぇんだぞ! ふざけんな!

 慌てて映し出されていた現世の映像を消す。


 ま、まぁ、とにかく、時間の問題なんだよ。

 この100年を使って、自分の外見を人間にする魔法だって生み出してある。

 平気だ。

 あとちょっと、頑張るだけなんだ。

 俺は絶対、ここから出てやる!




─────────────────────




 そう思い、900年の時が経った。

 そこで俺が知り得たものは、絶望だった。

 

「……嘘だろ? 現世からの干渉無しには、どれだけ俺が魔法を極めようが、ここからは出れない、のか……?」


 そう。

 俺が……悪魔が現世に降臨するには、向こうにいる生物に召喚をされなくちゃならないみたいだったんだ。


 絶望でしかなかった。

 だって、多分、この世界に悪魔なんてものは存在しない。

 いや、たまに崇めているような頭のおかしい奴はいるが、存在自体はしていないはずだ。

 つまり何が言いたいのかというと、向こうの世界の生物に悪魔を召喚してもらうなんて、ほぼ不可能なんだよ。

 

「終わった。……俺、このまま一生ここで──」


 そこまで考え、俺は冷や汗を流した。

 待て。俺の一生って、何年だ?

 俺、もう1000年は生きてるぞ?

 あれから外見だって全くと言っていいほど変わっていない。


 ……待て待て待て待て待て。

 俺、まさか本当に文字通り一生ここで1人、なのか……?

 い、嫌だ……! そんなの、嫌だ!


「そ、そうだ。なら、俺が、俺が悪魔を作ろう」


 1人になりたくがない為の咄嗟に出た言葉だったが、案外悪くないかもしれない。


 現世には悪魔を崇めている頭のおかしい奴が存在している。

 だったら、もしも悪魔の母体数を増やせば1人くらい、1人くらいは現世に召喚されるようなやつが出てくるんじゃないか?

 もしもたった1人でも召喚をしてくれれば、悪魔の存在が現世に広まる。


 ……悪くない。悪くないぞ!


 一生ここで過ごすなんてのは真っ平だ!

 だったら、少しでも可能性のあるものに賭けることは悪いことじゃないはずだ。


 よし。そうと決まれば、悪魔を増やすか。

 大丈夫。時間はたっぷりある。

 俺なら、出来るさ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ