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干支の国  作者: ジャム猫
プロローグ
8/8

ゲームの裏側へ


「……ようこそ、テストプレイヤーの皆さん」


その声は冷たく、機械的だった。


白兎とメジロは、目の前の光景に息を呑んだ。


そこは無機質な白い空間だった。ゲームの世界とは明らかに違う、まるで研究施設の内部のような場所。


「……ここは、どこだ?」


白兎が冷静に周囲を観察する。壁は白く光を放ち、足元には無数のデータが浮かび上がるような演出。


メジロは白兎の腕を掴み、不安そうに呟いた。


「白兎くん……これ、本当にゲームなの?」


(……ゲームの中にいるはずなのに、妙に”リアル”だ)


白兎の予測能力が、本能的に警告を発していた。


そして——


彼らの前に、一人の男が姿を現した。



男は白衣をまとい、細長い眼鏡をかけていた。


「ようこそ、選ばれし者たちよ」


「……誰だ?」


白兎が問いかけると、男は微笑を浮かべた。


「私は”管理者”だ。君たちは、通常のプレイヤーとは異なる特別な存在——“テストプレイヤー”として選ばれた」


「テストプレイヤー?」


メジロが困惑した表情を浮かべる。


「そんなの、聞いたことないよ!干支の国は、正式にサービスが開始されたゲームのはず——」


「ふふ……確かに、表向きはな」


男は指を鳴らした。


すると、壁に巨大なモニターが浮かび上がり、無数のデータが流れ始めた。


——“プロジェクト《干支の国》:フェーズ2”


「これは……?」


白兎が画面を睨む。


「……このゲームは、単なるエンターテインメントではない。これは”人間の意識をデータ化し、新たな進化を遂げるための実験”なのだ」



男の言葉に、メジロが息を呑む。


「えっ……?つまり、このゲームは……」


「そう。“人間の意識”をデータ化し、干支の力を通じて新たな可能性を探るプロジェクト。VRMMOという形をとっているが、これは”実験場”にすぎない」


白兎は静かに男を見据えた。


「……俺たちが、モルモットだと?」


「そうは言わないさ。ただ……君たちは、“想定外の存在”だった」


男の視線が、白兎に向けられる。


「特に君——城野白兎。君の予測能力は、この世界のシステムすら超越しつつある」


白兎の眉がわずかに動く。


「……何が言いたい?」


「君の能力は、本来このゲームに”存在しないはずのもの”なんだよ」


「……どういう意味だ?」


「それを知りたければ——“次の試練”を突破することだ」


男は指を鳴らす。


次の瞬間、白兎とメジロの視界が再び歪んだ。



——《試練フィールドへ転送中……》


目の前の景色が、一瞬で変わった。


「……っ!?」


白兎とメジロは、広大な石造りの闘技場に立っていた。


「な、何が起こったの!?」


メジロが驚きながら周囲を見回す。


「……どうやら、戦わされるみたいだな」


白兎が視線を前に向けると、そこには——


巨大な**“白虎”**が、彼らを睨んでいた。


——《干支守護獣・白虎》が出現しました


「白虎……!?」


白兎はすぐに構えを取る。


(干支の守護獣……まさか、こんな形で出てくるとは)


「……白兎くん、どうする?」


「決まってる。こいつを倒して、“真実”に近づく」


白虎が低く唸り声を上げた。


次の瞬間——


「——来る!」


白虎が、一瞬で間合いを詰めてきた。



「——ッ!」


白兎は直感で横へ回避。


白虎の爪が地面を砕き、砂埃が舞い上がる。


(速い……!)


ガルーダのフェーズ2とは違う。白虎の動きは、まるで”狙いを定めた暗殺者”のようだった。


——そして、白兎は気づく。


(……こいつ、俺の”動き”を読んでいる)


今までの戦いは、相手の動きを予測して先手を取ることで勝ってきた。


しかし、白虎は逆に**“白兎の行動を先読みしている”。**


「……面白い」


白兎の目が鋭く光る。


「なら、試してみるか……“俺の限界を”」


“予測” vs “予測”の戦いが、今始まる——。

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