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干支の国  作者: ジャム猫
プロローグ
7/8

反撃の一閃〜そして始まりの異変〜

「メジロ、お前の魔法でガルーダの動きを封じることはできるか?」


「えっ……一瞬ならできるかも!」


「なら、それでいい。俺がとどめを刺す」


白兎の目は鋭く、決意に満ちていた。


予測だけでは追いつけない。ならば、確実に仕留められる”一瞬”を作るしかない——。


メジロは頷くと、すぐに詠唱を始めた。


「《疾風拘束》!」


メジロが風を操り、ガルーダの足元に渦を生じさせる。


ガルーダは一瞬バランスを崩した——その隙を、白兎は見逃さなかった。


「……今だ!」


彼は全力で地を蹴り、ガルーダへと跳躍した。


「《兎影一閃》——!」


短剣が閃き、ガルーダの胸を貫く——その瞬間、白兎の視界が”乱れた”。


——!!


(……なに?)


ガルーダを斬るはずだった短剣は、空を裂くだけだった。


次の瞬間、世界が”揺れた”。



——《重大なシステムエラーが発生しました》


突然、白兎とメジロの視界に赤い警告ウィンドウが表示された。


「……は?」


ゲームではありえないほどの強制的な揺れ。


空間が歪み、ガルーダの身体が”バグったように”ぶれ始める。


「な、なにこれ!?バグ??」


メジロが焦るが、白兎はすぐに”違和感”に気づいた。


「……違う、これはただのバグじゃない」


——“何かが変わる”。


直感が警鐘を鳴らしていた。


ガルーダの姿が次第に変化し、体を覆う風が黒ずんでいく。


——《管理外個体・ガルーダ・オーバーフォーム》が発生しました。


システムメッセージが変化する。


「……まずい」


白兎はすぐにメジロを後ろへ引き寄せた。


「え、え!?なになに!?ガルーダ強化されてない!?」


「……これは、俺たちが予想していた戦いじゃない」


白兎の予測能力が”通じない”未知の展開。


ガルーダが、システムの枠を超えて暴走しようとしていた。




〜その時、白兎の目の前にもう一つの警告ウィンドウが現れる。


——《強制ログアウト不可》


「……なに?」


メジロもすぐに気づき、目を丸くする。


「えっ、強制ログアウト不可って……やばくない!?」


「……どういうことだ」


VRMMOにおいて、強制ログアウトができないのは重大なバグ、あるいは意図的なシステム障害を意味する。


このゲームの運営は、決してそんなリスクを放置するような企業ではない。


つまり——


「“意図的に”何かが起こっている」


白兎の声に、メジロが息を呑む。


「ど、どうしよう……!?」


「……まずは、目の前の敵を倒すしかない」


白兎は短剣を握りしめ、暴走するガルーダを睨んだ。


「……こいつを倒せば、何かわかるかもしれない」




「ギャアアアアアア!!」


ガルーダの体が黒い風に包まれ、一気に二人へと襲いかかる。


「くっ……!」


白兎は《影縫い》を発動しようとするが——スキルが発動しない。


——《システムエラー:スキル使用制限》


「スキルが……使えない!?」


「ええっ!?じゃあ、どうやって戦うの!?」


「……くそ」


白兎は瞬時に判断し、“通常攻撃だけ”で戦う決断をする。


(俺にはまだ”予測”がある……スキルがなくても、戦えるはず)


彼はガルーダの猛攻を紙一重で避けながら、機をうかがう。


(動きは、さっきよりさらに速い……だが、一定のパターンはある)


ガルーダの攻撃はシステムを超えた暴走状態とはいえ、元々のAIの動きは残っている。


白兎は全神経を集中させ、その動きの”核”を探った。


(こいつは、一定の間隔で急降下攻撃を繰り返す……次の突進の後、必ず隙が生まれる)


「メジロ、次の攻撃が終わったら、一斉射撃しろ」


「え!?……わ、わかった!」


ガルーダが最後の急降下を仕掛けた瞬間——


「今だ!!」


白兎は地面を蹴り、横へ大きく跳躍。


同時に、メジロが空中から最大火力の矢を放つ。


「《蒼空の一矢》!!」


青い光がガルーダの頭部に直撃し、暴走状態のエネルギーが乱れる。


「……とどめだ」


白兎は迷いなく、ガルーダの胸へ短剣を突き立てた。


——《暴走個体・ガルーダを討伐しました》


直後、黒いエネルギーがガルーダの体から噴き出し——


周囲の景色が、一瞬で消えた。


白兎の視界が暗転し、次の瞬間——


そこには見知らぬ”研究室”のような空間が広がっていた。


「……なんだ、ここは?」


メジロと白兎は、確かにVRMMO《干支の国》をプレイしていた。


しかし、今目の前に広がるのは、“ゲームの中”とは思えない、白く無機質な空間だった。


「白兎くん……これ、本当にゲームなの……?」


メジロの声が震える。


(これは……ただのゲームじゃない?)


白兎の胸に、“ある疑問”が浮かぶ。


その時——


《ようこそ、テストプレイヤーの皆さん》


突如、謎の声が響いた。


「……誰だ?」


白兎の問いかけに答えるように、暗闇の中から一つの人影が現れる。


「君たちは、すでに”干支の国”の秘密に触れてしまった」


次の瞬間、警告のアラートが鳴り響き——


“物語は、新たな局面へと突入する”

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