限界の先へ
ガルーダの姿が消えた。
——いや、違う。
「消えたんじゃない……速すぎるだけだ!」
白兎は咄嗟に地面を蹴り、後方へ跳躍した。
次の瞬間、ガルーダの爪が空間を切り裂く。
「っ……!」
間一髪で回避したものの、風圧だけでHPが削られる。
——HPが10減少しました
(まずい……フェーズ1の時よりも速度が段違いだ)
さっきまでの攻撃パターンは完全に読めていた。
だが、今のガルーダはまるで別の存在のように動いている。
「白兎くん、大丈夫!?」
メジロが上空から叫ぶ。
「……まだ戦える」
白兎は短剣を握り直し、冷静に敵の動きを観察する。
ガルーダは宙を舞いながら、さらに速度を上げて突進してくる。
(次は右か……いや、フェイントの可能性がある)
白兎は素早く反応するが——
ガルーダの姿が一瞬だけ揺らぎ、突然進行方向を変えた。
(速すぎる……!)
気づいた時には、すでにガルーダの攻撃が目前に迫っていた。
「——っ!」
白兎は回避しようとするが、間に合わない。
ガルーダの爪が白兎の腹部を切り裂く。
——HPが40減少しました
「白兎くん!!」
メジロが急降下してくるが、ガルーダは更に追撃を仕掛けてくる。
「くそ……!」
白兎は短剣を構え直すが、相手の速度に目が追いつかない。
これまでの戦闘経験、戦闘予測能力——
それらを持ってしても、ガルーダの新たな動きは完全には見切れない。
(……こんなこと、今までなかった)
彼は初めて、自分の「限界」を感じた。
「白兎くん、動かないで!!」
メジロが空中から手をかざすと、風が集まり始める。
——《風壁の結界》
メジロが詠唱すると、白兎の周囲に風の障壁が生まれ、ガルーダの猛攻を一瞬だけ防ぐ。
「今のうちに回復して!!」
メジロが回復ポーションを投げてくる。
白兎は素早くそれをキャッチし、迷わず飲み干す。
——HPが50回復しました
「助かった……」
白兎は息を整えながら、ガルーダを睨む。
「でも、このままじゃ勝てないよ……」
メジロの言葉に、白兎も同意せざるを得なかった。
(俺の予測能力が通じないなら、別の手を考えるしかない)
白兎は冷静に考えながら、次の行動を決めた。
「メジロ、お前の魔法でガルーダの動きを封じることはできるか?」
「えっ……一瞬ならできるかも!」
「なら、それでいい。俺がとどめを刺す」
白兎の瞳には、強い意志が宿っていた。
(予測だけでは追いつけない……なら、動きを止めた一瞬を狙うしかない)
メジロは白兎の考えを理解し、力強く頷く。
「わかった!私がチャンスを作る!」
メジロは再び空へと舞い上がる。
「ガルーダの動きを止めるまで、持ちこたえて!!」
白兎は短剣を構え、襲い来るガルーダを迎え撃つ。
(あと一撃……決める)
風が激しく渦巻く中、二人の反撃が始まろうとしていた——。