限界を超える戦い
「白兎くん、本当に大丈夫なの?」
メジロが心配そうに白兎を見つめる。
彼の肩からは血が滲んでいた。ゲームのダメージエフェクトとはいえ、リアルな痛覚がフィードバックされる仕様のため、鈍い痛みが続いている。
「問題ない……むしろ、いいデータが取れた」
「データって……白兎くん、そんな余裕あるの?」
白兎は短剣を握りしめ、冷静にガルーダを見据えた。
(次の攻撃は……見える)
彼の中で、確信が生まれつつあった。
これまでは「なんとなく回避できていた」感覚だったが、一度被弾したことで、より明確に相手の攻撃の癖が見えてきた。
——ガルーダの爪の角度。
——翼の動きによる突風の発生パターン。
——急降下する際の目線の動き。
それらの情報が、頭の中で整理されていく。
(あとは、それを“確実に”活かすだけだ)
白兎はわずかに口角を上げると、メジロに指示を出した。
「お前は引き続き援護に回れ。俺が前衛を張る」
「えっ!?でも、それじゃまた攻撃を——」
「もう当たらない」
白兎の瞳は、確信に満ちていた。
「……わかった!私も全力でサポートする!」
メジロは弓を構え、二人は再び戦闘態勢に入る。
ガルーダが鋭い鳴き声を上げた。
——次の瞬間、強風が吹き荒れる。
「また来る……!」
メジロが警戒するが、白兎は微動だにしない。
(風の発生源は左翼。吹き飛ばされる前に、右側へ——)
彼は風を読んで一歩だけ踏み込む。
突風が吹き抜けると同時に、ガルーダが急降下。
「——来た」
白兎の体が自然に動いた。
軽く膝を曲げ、ほんの数センチだけ後方に下がる。
ガルーダの爪が、彼の目の前をかすめて地面を切り裂く。
「……っ!?避けた!?」
メジロの驚きの声を聞く間もなく、白兎は更に動く。
(次は横薙ぎの爪……左に回避)
回避。
(風を纏った翼の打撃……しゃがんで避ける)
回避。
(突進からの急停止……カウンターのチャンス)
「……今だ」
白兎は瞬時に短剣を振るい、ガルーダの翼を切り裂く。
「命中……!」
メジロが感嘆する。
白兎の動きは、まるで敵の攻撃をすべて事前に知っていたかのようだった。
(確信した……こいつの動きは、もう完全に読める)
白兎は静かに息を整え、次の攻撃の準備をする。
だが、次の瞬間——
「——ッ!?」
ガルーダの体から、突如として強烈な突風が吹き荒れた。
「なに!?」
白兎は思わず足を取られ、後方へと吹き飛ばされる。
「白兎くん!!」
メジロが叫ぶが、白兎は咄嗟に地面を蹴って体勢を立て直した。
「……っ、今のは……」
ガルーダの身体が淡い青い光に包まれている。
そして——
《風の守護者・ガルーダのフェーズ2が発動しました》
「フェーズ2……!?」
「こいつ、まだ本気を出してなかったのか……」
白兎は歯を食いしばりながら、ガルーダを見据える。
——ガルーダの目が赤く輝き、その身体が風と一体化するかのように薄く揺らいだ。
次の瞬間、ガルーダの姿が消えた。
「消えた!?」
「……違う、スピードが上がっただけだ!」
白兎は即座に反応するが、すでにガルーダの爪が目前に迫っていた。
「——っ!!」
白兎は咄嗟に跳躍する。
しかし、ガルーダの動きはすでに次の段階へと進んでいた。
「白兎くん、危ない!!」
メジロの叫びが響く——
読んでくださっている方々ありがとうございます。
初めて執筆活動ですが、今後の展開お楽しみ下さい!物語が動きます!!