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干支の国  作者: ジャム猫
プロローグ
4/8

風鳴の谷の守護者

白兎とメジロはダンジョンの最奥にたどり着いた。


「ここがボス部屋っぽいね……!」


メジロが地図を確認しながら言う。


「……行くぞ」


白兎は短剣を握りしめ、扉の前に立つ。


扉に触れると、静かだった空間が突如として荒れ狂うように風を巻き起こした。



巨大な鳥のような姿をしたモンスターが、渦巻く風の中心から現れる。


「おおー……!めっちゃ強そう!」


メジロは興奮気味だが、白兎は静かに敵の動きを観察していた。


(……まずは動きを見る)


彼は冷静にガルーダの羽ばたきや爪の動きを目で追い、攻撃のリズムを分析する。


「お前は後方支援に徹してくれ」


「了解!」


メジロが弓を構え、白兎は短剣を握る。


ガルーダが鋭い鳴き声を上げた瞬間、強烈な突風が吹き荒れた。


「うわっ!」


メジロは風に煽られながらも、羽ばたいて体勢を立て直す。


しかし、白兎は違った。


(風が吹くタイミングは……3秒ごと、次は——)


彼は足の力を抜き、風に流される形で無駄な抵抗をせずに身を低くした。


普通なら吹き飛ばされるが、白兎は風を利用しながら最小限の動きで踏みとどまる。


「えっ、白兎くん、なんでそんなに耐えられるの?」


メジロが驚くが、白兎は答えない。


(……次は、急降下攻撃)


ガルーダは風を巻き上げながら、白兎に向かって一気に急降下する。


「来る……!」


普通なら反応が間に合わない速度。


だが——


彼には見えていた。


(右爪が先にくる……左に飛べば、回避可能——!)


白兎は一瞬で回避行動を決め、ギリギリのタイミングで横に跳ぶ。


ガルーダの鋭い爪が白兎の髪をかすめる。


「避けた……!?」


メジロが驚くが、白兎の表情は冷静だった。


(今の動き……次は風を纏った爪で薙ぎ払ってくる)


そう考えた瞬間、ガルーダの翼が広がり、風を巻き込んだ爪が横なぎに振られる。


「やっぱり……!」


白兎はすでに次の行動を決めていた。


足を軽く踏み込み、ギリギリの距離で上体を反らして回避する。


「えっ!?ちょっと待って、なんでそんなの避けられるの!?」


メジロが目を丸くする。


(昔から……俺はこういうのができた)


白兎は特に意識したことはないが、相手の動きを見ていると「次に何をするか」がわかるのだ。


相手の肩の動き、視線、筋肉の緊張——わずかな予兆から攻撃を予測し、本能的に最適な動きを選択できる。


その能力は、ゲームのスキルではなく、彼自身が生まれ持った「隠れた才能」だった。


(だが……まだ完全に見切れたわけじゃない)


白兎は短剣を構え直し、ガルーダの次の攻撃に備えた。


「……っ!」


次の瞬間、ガルーダが急旋回しながら突風を巻き起こす。


(しまっ——)


風の流れを読み切れず、白兎の足がわずかに浮く。


その瞬間——


鋭い爪が白兎の肩を切り裂いた。


——HPが30減少しました


「白兎くん!!」


メジロが叫ぶ。


(……まだ甘いな)


白兎は歯を食いしばりながら、地面に転がる。


これまでの戦闘では「完璧に避けることができていた」。


だが、ボスの動きはプレイヤーの反応速度の限界を超えている。


一瞬の判断ミスが命取りになる——それを思い知らされる一撃だった。


「……っ、大丈夫だ」


白兎はすぐに立ち上がり、血の滲む肩を抑えながら短剣を握る。


「白兎くん、無理しないで……!」


「いや、こいつの動きが見えてきた……次は当たらない」


白兎の瞳が鋭く光る。


(もう一度試す……今度は完全に見切る)


ガルーダは再び風を纏い、白兎に狙いを定める。


「……さあ、こい」


彼は短剣を構え、次の攻撃を迎え撃つ準備をした。

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