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第九話

虎侍side...


旅に出て7日目やっと依頼の町ダルダストに着いた。アカヤクと変わらないほどの活気に溢れている。久しぶりの雰囲気少し萎縮しそうになる虎侍だった。

7日かかったのは途中、火のおこし方や魚の取り方や怪我に効く薬草など、1人で旅をしても大丈夫な最低限を教えてもらうために少し寄り道をしたためだった。


あ~、疲れた~早く休みてぇ~~~~一週間歩き続けとかありえねぇーーー!!現代の若者の体力なめんじゃねぇーー!!!…………疲れた…………


表情など表には出ていないが虎侍の疲労はピーク状態だ。


「ふ~、長かった~。まずは宿だな宿」


町に入って少し行ったところに分かりやすく「旅の宿」と看板を出してある宿に入る。雷聖は旅に慣れているためまだまだ元気そうだ。

宿は二人部屋をとり風呂は向かいの銭湯と業務提携しているらしい。部屋まで案内してもらい食事はいつ頃がいいかなど細々としたことを聞いてきて雷聖はスラスラと答えている。


あんまり考えてなさそう。まぁいいけど。というか業務提携してるんだ。意外と進んでるんだな。


雷聖は店の人が居なくなるなり畳の上にゴロンと寝転がりゴロゴロし始めた。


おお!休日のお父さん現る!!


「あ~極楽。ああ、虎侍風呂に行きたかったら行ってもいいぞ今日は一日休みだ。明日から色々するからゆっくりしとけよ」


「…分かった」


とりあえず荷物の整理を始める虎侍。旅のときはあまり中を見ている暇がなかったのでマジマジ見るのは初めてになる。一番上にある先生にもらった長着3着を出して奥のほうを見る。包帯や傷薬や小壷に入った薬があり、蓋のところに簡単に薬の効果を書いてある。だがその中の3つだけ蓋に何も書いてない小壷がある。


何だこれ?先生、間違って診療所で使うものでも入れたのか?


小壷を手にとって悩んでいると雷聖が不思議に思って這ってきた。


「何かあったか?」


虎侍は無言で小壷を雷聖に差し出す。雷聖は小壷をじぃーと見てから臭いを嗅ぐ。


蓋をしたままじゃ臭いは分からないだろ…


そして臭いで分からなかったから開ける気になったのか蓋を開け始めた。カサカサと音をして蓋を開けたが雷聖は中身をまたじぃーと見始めた。虎侍はどんなものか気になり少しドキドキしている。観察をしていた雷聖は小壷の中に指を入れて指の先にほんの少し付いたものを舐める。瞬間、雷聖は小壷を置いて備え付けの水を慌てて飲んだ。


ど、毒か?救急車come!!!…あっ無理だ!え、えーっと医者だ!!医者come!!


「苦っ!!」


虎侍が心の中で慌てて少し混乱しているときに、雷聖は水を二杯飲み終え虎侍の無表情の視線に気付き、小壷を指差して


「薬だ。満楼普っていう若返りに効果があるって噂の薬だ」


若返り…これ以上若くなっても意味ないだろ…先生、一体何がしたいんだ?


「明日、ついでに売るからな」


「いいの…?」


返したほうがいいんじゃないのか?高そうだし。


「こういうのは高く売れるからな。覚えとけよ」


高く売れるって断言してるのに返す気全くねぇー。しかも覚えとけって…オイオイって感じになるねぇ~。


雷聖は小壷を置いて鞄の中をゴソゴソとあさり始めた。


えー。一応俺の鞄なんですけど…


残りの2つの小壷も出してさっきの小壷と一緒に置いている。おそらく明日売りに行くものだろう。


「風呂に行こうぜ」


いつの間にか外の景色が夕日によって朱色に染められていた。虎侍は蓋に何も書かれていないもの意外を手早く鞄に入れ、着替えの長着を出して、先に行った雷聖を追いかけていく。



あ~いい湯だった~。日本人はいい湯に浸かると元気が出るんだよ。


向かいの風呂は5つの浴場があり、温度がそれぞれ違い中々楽しむことが出来た。虎侍は熱い湯は苦手だったので温い方の湯に長々と浸かっていた。雷聖は熱い湯を巡って虎侍より先に上がっていった。

部屋に戻るとちょうど夕食が運ばれてきた。旬の食材が使われてとても美味しそうだ。


おおっ!!うめぇ~~山菜の旨みが染み渡る~元の世界じゃ高級料理並みだな~サイコー!!!


雷聖の方を見るとガツガツと食べている。食欲をそそる勢いだ。

日本料理のように綺麗に並べられていた料理を綺麗に食べ満腹になった虎侍と雷聖は温かいお茶を飲みながら和んでいた。まるで旅行に来たみたいだ。


「あ~、虎侍食後で悪いんだが…」


雷聖が歯切れ悪く言う。虎侍は顔を上げて聞くをとる。


「えーっとな。お前は生き物を殺すということはどう思う?」


「…いけないこと…だと思う」


当然なんだ?まぁ生き物を殺すなんて悪いことだろ普通。動物虐待とか聞いているだけで嫌になってくる。


「そうか。魔物でもか?」


魔物か…どうなんだろ?ゲームとかだったら悪者として出てくるけど、それはやっぱりゲームの中だけだし。虫でも農作物を駄目にする虫も居るけど、ミミズとかみたいに益虫も居るわけだし…う~ん…


「害があるなら、殺すことも…必要…」


雷聖は虎侍の答えを聞いて少し悩んでいる。



え?俺悪いこと言った?でもそういうもんでしょ?ちょっと心配になってきた…


「今回の依頼の魔物は害のある魔物だが大丈夫か?」


その大丈夫は殺せるかって聞いてるのか?


虎侍は頷く。雷聖はどこかホッとしたようだ。


「じゃあ、明日準備をして、明後日には依頼をするぞ」


虎侍はまた頷く。その後はまたこの世界の常識を少し教えてもらい就寝となった。


そういえば俺魔物の退治しに来てたんだな…またあの蜘蛛みたいなでかいやつかな?


虎侍は布団の中に入りながらこの前倒した蜘蛛を思い出した。真っ先に思い出したのはタランチュラのように長い毛だった。背筋がぞっとしたので思い出すのをやめて寝ることにした。久々の布団はあっという間に眠りへと誘ってくれた。



翌日は朝から服を洗い屋に持っていき、薬屋にあの小壷を売った。かなりいい値で売れた。そのお金は雷聖が要らないと言って虎侍に渡した。その後役所に行って雷聖は依頼のことについて少し話していた。役所の中には武人が数人居た。

虎侍は雷聖以外の武人を見るのは初めてだが鎧のようなものを着ている人や急所だけを守る防具を付けた人が居た。

一方雷聖は手甲と靴に多分鉄のようなものが仕込まれたもの、あとは鎖帷子(くさりかたびら)を着ているだけだ。鎖帷子といっても魔物の一撃を食らえばひとたまりもないような物だ。

そして虎侍は刀を一振り腰に差しているだけだった。


………俺、初期装備だけだよ?ヒノキノ棒とお鍋の蓋だけのような感じだよ?

…しかも敵はスライムとかみたいな弱いのじゃないよ?

俺マジ死ぬ!!!行きたくねぇーーーー!!!!


虎侍が命の危機を感じているとき雷聖は役人と話を終え戻ってきた。


「そろそろ昼飯でも食うか」


そう言って歩き出した。虎侍はついていきながら


俺、今それどころじゃねぇんだけど!!虎侍、異世界にて没!とかシャレにならねぇんだけどーー!!元の世界に戻してーー神様仏様ーーついでに女神様ーー!!


虎侍の願いも空しく翌日の朝日は昇ってしまった。朝早くから火吹き狐海豚が居る森の奥に出発した。


俺、生きて帰れるの?…


朝陽が眩しい朝だった。

どうも、スランプは脱した気はしないけど小説の神様が降りてきたので早く更新できました。


あとユニーク数が3千に達しました。日ごろ読んでいただいている方感謝します。これからも頑張ります。

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