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第四話

ちょっと残酷表現が入るかもしれません。

あと、蜘蛛が極端に嫌いな方は気お付けてください。

三日も経っちゃったよ…戻らねぇーし

三日経って分かったことは、ここは異世界ということ。


5~6歳の子供が大き目のバケツに水をいっぱいまで入れているものを2つ軽々と担いで、オリンピックの王者も真っ青な速度で走り去って行ったからだ。



あんなのが元の世界に居たらギネスものだよな。でも、走るのはやめたほうがいいね。水結構こぼしていったし。ってか旋術ってあったら便利だな~体の中にある『旋』だっけ?んん~『氣』しかわからねぇ。まぁその内出来る様になるかな。できなきゃ諦めよう。



虎侍は思考を一旦止め、貸してもらっている着物の長着の上に自分が持っていた袴をはき、刀を腰に差した。祖父に着物の着方を教えてもらっていたのでもたつくこともなく外に行く準備ができた。足の方は今はあまり見ることのなくなった草鞋を履いた。

異世界に来て二日目に先生に、閉じこもっているより外に出たほうが記憶を取り戻すのにもいいだろうと言われて、気が向いたのと元の世界に戻るすべを探すために外に出た。

刀などの武器は武人と思われる人と、役人っぽい裃を着た人が様々な武器を持っているので何も咎められる事もなく携帯することができた。


ちなみに、記憶喪失は異世界から来たと言って変な目で見られるよりいいので逆に利用している。大工職人の二人には悪いことをしているなと少し罪悪感を抱いている虎侍だった。





いい天気だな~今日は門の外の方まで行ってみよ。


「散歩に行ってきます…」



「いってらっしゃい、今日は暑いから気をつけてくださいね」



虎侍は頷き戸を引いて外に出た。相変わらずの活気に少し気圧されつつその中に埋もれるように足を進めていった。



門を出ると広大に広がる田畑。町の人がより良い収穫が出来るように草と害虫となる幼虫を取り除き、新たに種を蒔くために土を耕してせっせと働いていた。子供たちは大人に怒られながら他の子と山の方へ行ったり田んぼのあぜ道を走ったりして遊びまわっている。



手伝ってるんじゃないのか?…ここの時期は大体5月頃かな。近所の人たちが畑の近くにトラクターもっていってるの見てたし。平和だな…



のほほんとして平和を噛み締めていた。だが、次の瞬間平和は崩れてしまった。


虎侍が居た場所は門から近く高台の方だった為、遠くの森の木が少ずつ倒れているのも気付いたが伐採しているのだろうと思いまた、足を進めていった。



少し進んで一番遠いところに居た人達が、旋術を使いもの凄い速さで走ってきた。少しずつ近い人もそれに気付き農具を急いで片付け子供たちに呼びかけていた。そしてようやくその人達が言っている言葉が虎侍の耳に届いた。


「おい!!魔物がでたぞーーーー!!!!逃げろ!!早く!道具なんか置いていけ!!」


「爺さん、婆さん早く逃げろ!!!ガキも早く行け!!!」



皆さん急いでるけど何?魔物?よく分からん…そんなに急ぐものなのか?


虎侍がそう思っている間に森の方から木々を倒しながら人々を急かしている原因が現れた。簡単に言えば蜘蛛で現せられるものだった。だが大きさが2メートル~3メートルの大きさのが8匹だ。はっきり言って気持ち悪い。今まで木が邪魔だったせいで本来の速度が出ていなかったのだろう。旋術を使っている人達が約50~60キロの速さとして蜘蛛が80~90キロの速さで走ってくる。



気持ち悪りーー!!鳥肌!!ってか追いつかれるぞ!!おいおいおい!山の方に行っていた子供か?やべーぞ!!!



虎侍も門の方に向かいながら見ていたが山の方に行っていた子供たちは逃げ遅れ門からは600メートル程の距離がある子供たちが頑張って走っても大体あと30秒ほどかかるが蜘蛛は子供にグングン追いつき目測で門から半分のところで子供たちは蜘蛛の餌食になるだろう。

虎侍の後ろからは役人を急かしている怒鳴り声や自身の子供があの中に居るだろう親の悲鳴が響く。中には農具で立ち向かおうとしている人に他の人が間に合わないと言い羽交い絞めにして止めている。

そうしているうちに子供の中の一人が石に躓き転げた。そして後ろの子が巻き込まれるように2人が転げ。大人たちがさらに騒ぎ出す。

虎侍の刀を目敏く見つけ助けるように言い寄ってくる人まで居る。



ちょ、待てよ!俺旋術すら使えないのにどうしろっーつんだよ!!!



そして蜘蛛が倒れている子供の50メートル先まで来る。数人の大人が堪えきれず走り出す。



くそっ!!俺は何の為にじいちゃんに剣術を教えてもらってたんだよ!!!


虎侍は駆け出す。蜘蛛はあと10メートルを切っていた。



もっと!もっと早く!!速く!!!



血とは違う何かが全身を駆け抜けた。


虎侍の想いが高まったとき虎侍の視界が劇的に流れ出し、あれだけ遠かった場所に立っていた。そして迷うことなく刀を抜刀し、蜘蛛の頭を切り飛ばした。蜘蛛の体液が辺りに飛び散る。

残りの7匹が群がってくる中、虎侍は慌てず血振りをし、刀を振って体液を飛ばす。滑らかに体を動かし八双の構えをとる。

集中が最高潮まで上がり、今にも飛び掛ってきそうな蜘蛛に氣を飛ばし牽制しつつ子供たちを自分の間合いにちゃんと入っているかを気配で確認する。

両者の緊張が弾ける。


虎侍が動く瞬間蜘蛛7匹は無数の矢に貫かれていた。



「っ……!!!」


「大丈夫か!!!」


声のした方を振り返ると裃を着た役人が武器を持って駆け寄ってきた。張り詰めていた緊張が一気に解けひざが砕けそうになり慌てて足に力を入れる。



こ…………怖かったぁぁぁぁあああああああああ!!!!!俺、何早まった事してるんだよーーー!!自分から餌になりに行くところだった!!!




心の中で叫び平常心を取り戻している虎侍だった。顔は相変わらず殆ど動かず無表情だったが。




  あれが魔物……この世界の人間の天敵だな。


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