第三話
「……っ!!お…っ!…ちゃん!!おい!!!」
うるせー…頭いてー…何が当たったんだ?すげー派手な音立ててたけど…
「おいっ!!兄ちゃん大丈夫か!!おいっ!!!!」
ペシペシと虎侍は頬を叩かれてようやく目を開けた。五十歳後半のゴッツイ顔の爺さんと三十歳前半のおっさんが虎侍の視界の約8割を占めていた。寝起きには苦しい光景だ。虎侍がぼ~っと眺めていると爺さんの方が目を輝かして、
「おお、目ぇ覚ましたか!!よかった!
先生っ!!坊主が起きた!!早く診てくれ!!」
喧しい……ん~先生~?病院?家の近くの病院か?早く家に帰りたい…
虎侍が軽いホームシックにかかっているときにバタバタと足音がして四十歳半ばぐらいの先生らしき人が来た。白衣などは着ていない。
「あ~大丈夫ですか?名前言えますか?」
「…橘…虎侍…」
先生はフムフムと頷いて、片手を出し指で三を作って
「何本に見えますか?」
「3…」
さらに先生はフムフムと頷き、おっさんと爺さんに「大丈夫ですね」と言っている。虎侍は待ちきれずに質問した。
「ここどこですか?…」
「サハサラ地方のアカヤクですよ」
「…………?」
ん~空耳?サハサラ?サハラ砂漠?砂漠?ん~あかやく?……あれ?アフリカまで出てるし…
でも、日本語喋ってるよ…
「……知らない…」
「「「記憶喪失か(ですね)…」」」
記憶喪失!?!?!?Memory loss?What is it?
イヤイヤイヤイヤ。ちょっと落ち着こう、どこでどうして記憶が喪失したということが出た?
Final answer? 分かりませんマル
落ち着けてない。
「えっと、サハサラ地方のアカヤクって礎永鉄の加工発祥の地で有名ですよ。あっ、礎永鉄って分かります?」
「いえ…」
「じゃあ旋術は?」
「知らないです…」
先生は困りましたねぇと少し唸っている。後ろの爺さんとおっさんも唸っている。
記憶喪失じゃあないんだけれど…どうしよう。ってか旋術ってなんだろ?
「旋術って?…」
「ええっと、簡単に言いますと肉体強化ですね。体の中にある『旋』と言う力を体に巡らしそれを扱うことを旋術と言います。一般人は旋術を使い、腕力や脚力を高め生活に役立てていますね。
武人の方は旋術をより巧み扱い鎧の代用をすることをしていると聞いています」
ふぁんたじー…俺どうしたんだろ?どこでこんなファンタジーなところに来たんだ?夢?ああ、夢だこれは、うん。Dreamだ。慌てて損した。
「多分、知識のところだけスポーンと抜けたんでしょう。一時的なものでしたら直ぐに直りますよ」
「先生スポーンって釘じゃないんだからよぉ」
「そうそう、直るって家具みたいに簡単に直るもんじゃなかろう。坊主も困惑しとるぞ」
「棟梁、さっきから殆ど表情が動いてませんよ」
「じゃかぁしい!!元はと言えばおめぇが瓦を落とすからこんなことになったんだぞ!!」
かっ…瓦どおりで痛いわけだ。聞いたら余計に痛くなってきた。
「だって棟梁、俺まだ一回しか瓦葺きやったことないんですよ!いきなりやれって言われてもできないですよ!!」
ん~転けたときのと瓦のときのがいい感じにマッチして痛い。結構鈍痛…
「そんなこと言ってるからお前はまだ半人前なんだ!!いいか、職人の世界では弟子は師匠と兄弟子の技術を見て盗むのがあたりめぇーなんだよ!!!」
……夢では痛みって無いって聞いたような……
「見てたら働けって尻を蹴り飛ばすくせに!!」
鈍痛だよ。声の響きか痛みに変わるぐらいに。
「おめぇその口の利き方はなんだ!!!破門だこの野郎!!」
「ちょ、ちょっと待ちましょうよ。とりあえず怪我人が居るんですからケンカなら外でやってください」
「む、すまん」
「すいません」
2人はドタドタと外に出て行った。先生はふーっとため息を吐いていた。
「とりあえず今日はここで泊まっていってください。食事は後で持ってきますね」
先生はまたバタバタとどこかへ行った。だが虎侍はそんなことを気にしている暇は無かった。今、虎侍は思考の中で盛大に焦っている。さっきの慌てていたのとは全く違うものだ。
夢じゃない!!あ~あ~今俺の考えていることが分かるかい??旋術という能力っぽいもの+聞いたこと無い地名=パラレルワールドもしくわ異世界でも可
………どうやって帰るのこれ!??
目が覚めたらはない。さっき覚めた。もう一回頭を打ってみる。これ以上頭打ったらマジで脳みそが危ない。
「………どうしよう…」
虎侍の呟きは小さすぎてどこにも響かなかった。
キャラが動いてくれました。でも動きすぎで、暴走気味です。
脇キャラがものすごくでしゃばってくれて、主人公埋もれそう…;
引き続き頑張ります。