第二十二話
すみませんインターネットが一時繋がらない状態になり遅れました。
雷聖side...
ドッドッド!!!
「ぎゅおぉぉおおお!!!」
背中に硬い鱗をもった牛のような体に鱗暴牛が人の腕ほどの長さがある角を振り回し、周りの木々をなぎ倒し雷聖達に向かっている。
「一気に決めるぞ」
雷聖は言いながら走り出す。横に居た虎侍と瑠奈も雷聖の後に続く。
ヒュンッ!ヒュンッ!
雷聖達の後方から皐月の的確な矢が走り、鱗暴牛の両目に深く突き刺さる。鱗暴牛は視界が無くなり激痛のためかその場で先ほどよりもひどく暴れだす。
雷聖の右隣に居た虎侍は鱗暴牛の目に矢が刺さった瞬間、霞むような速さで駆けて行き――
ザンッ!
鱗暴牛の右の角を根元から絶った。
鱗暴牛は左右対称にあった角の片方が無くなり頭のつりあいが保てず左の方へフラフラと進み瑠奈の間合いに入る。そして残ったほうの角に薙刀を絡められドッという音と共に鱗暴牛の体は倒される。
雷聖は鱗暴牛の急所である腹に勢いを乗せた拳を叩きつける。骨が砕ける感触の後に内臓の潰れる感触が続く。鱗暴牛の口から体液が吹き出す。
鱗暴牛はもがくことなく痙攣し、息絶える。
「よし、終わったな」
雷聖はふぅと息を吐く。横に来た瑠奈も依頼が無事に終わり安心した顔になる。後ろの方で弓を使い鱗暴牛に矢を射っていた皐月も近寄ってくる。
「皐月~今回も的確ね~」
瑠奈が皐月を褒める。そしてそろ~っと虎侍の方を盗み見る。
あからさま過ぎるだろ。
5日前にヨナジャクで瑠奈は雷聖に皐月が虎侍のことを想っているということを話した。少々の行き違いで今は喧嘩別れの状態になっており、急を強いて2人をくっつけようとした瑠奈と雷聖にも少なからず責任があるのでせめて2人が仲直りするまでを手助けしようということになった。
そのあとの皐月の頑張りで虎侍とどうなるかというところは皐月と虎侍に任せようということになっている。
ちなみに虎侍には皐月が虎侍のことを好きだということを秘密にしている。これは虎侍の無口、無表情を直させるためだと瑠奈が言い張ったからだ。
ということで今は両想いだということを両方にしっかり理解させ、お互いの印象を良くするために瑠奈と雷聖が動き、皐月は瑠奈の行動を理解して行動を起こす度に虎侍の反応を何度も見ようとする状態だ。
瑠奈もそんなにジロジロ見るな!虎侍にばれるだろ。
雷聖はため息をひっそりと吐く。
虎侍は5日前から言葉を殆ど発していない。何を聞いても頷いたり二、三言葉を発するだけだ。
今も雷聖達に背を向ける形で新しい刀の点検を軽くしているようで恐らく先ほどの瑠奈の言葉も聞いていないだろう。
まるで俺たちを拒絶してるみたいだな…
雷聖は頭をボリボリ掻く。
「それじゃあ、町にさっさと帰って休むか」
先ほどの鱗暴牛の討伐依頼は雷聖たちが立ち寄った町で困っていると聞き、役所で依頼してもらいすぐに雷聖たちが受けたものだ。
町の人たちには1日以内に片付けると言い少々依頼の報酬を上げてもらうなどをしてもらっているので日が暮れるまでに町の役所に討伐したと報告に行かなければならない。
町の方も気にしてる人が多いだろうしゆっくり休むのは宿でするしかなさそうだな。
「いや~我々の財産である森を守っていただいて誠にありがとうございます。町の衆の代表として感謝を致します」
町に戻り役所で討伐の報告をして、近くの宿でゆっくりしようと役所を出たときに町の代表が現れ近場の宿に連れて行かれ宛がわれた部屋で10分近く感謝の気持ちを言われ続け雷聖たちは疲れているところに止めを刺されている。
代表にはそんなつもりはないのだろう何度も頭を下げている。
早く休ませてくれ……
「俺たちも報酬を上げてもらっているからちゃんと討伐するのが仕事だから…」
「いえいえとんでもない。あの森がなければ少なくとも今年の収穫は半減しているところでした。感謝しきれません」
雷聖の言葉を遮りまた感謝しだす代表。雷聖は諦めて代表が飽きるまで待つことにした。ちなみに虎侍、瑠奈、皐月は代表を雷聖に任せ後ろの方でお茶を飲んでまったりしている。
雷聖は代表がまた頭を下げている内に後ろの方を恨みがましく見る。すぐに逸らされる視線に少し裏切られた気持ちになる雷聖。
「失礼します。町長、旅の方々は疲れているでしょうからそろそろお暇されたほうがよろしいと思いますよ」
女将と思われる女性が雷聖に助け船を出す。雷聖には天の神のように思われた。
「そうだな、では失礼させていただきます。この町に居る間はこの宿をお使いください。宿代は要りませんよ。この町をお救いくださった方々が心地よく過ごしていただけるように言ってありますので」
代表改め町長はそれではと言い部屋を出て行く。
「すみませんあの方の話はいつも長くなるので」
女性はすまなさそうに言う。
「いや、助けてもらってよかったです」
雷聖はどこかホッとした気持ちで言う。女性も雷聖の返事を聞き嬉しそうに微笑む。
「では当宿自慢の温泉と料理を楽しんでくださいませ」
女性はそう言って出て行った。
「瑠奈、助けてくれてもいいじゃねぇか」
雷聖は瑠奈が入れたお茶を飲み瑠奈に抗議する。
「だってあんなに感謝の気持ちを込められてるのにもう良いですって言うのも悪いし~」
瑠奈は自分は悪くないと暗に言う。雷聖ははぁ~と疲れが詰まった息を吐く。
「虎侍、風呂行くか?」
雷聖は荷物をゴソゴソしながら虎侍に聞く。虎侍は頷き荷物のところに行き服を出す。雷聖も服を引っ張りだし入浴に行く。部屋を出るときに瑠奈が雷聖の荷物をひっくり返し整頓しながらまた入れているのが見えた。
明日はこの町で休んで餡蜜でも食わしてやるか。
雷聖は明日の予定を立てて温泉に行く。
ザバ~~~
盛大にお湯を浴槽から流しながら風呂に浸かる雷聖と虎侍。広々とした浴槽に2人だけなので開放感がある。
「はぁ~いい湯だ~」
雷聖はお湯で顔をゴシゴシと擦りまるで40過ぎのおっさんのようになっている。
「虎侍いい湯だな」
雷聖はずっと黙っている虎侍が心配になり声をかける。虎侍は頷くだけだ。
あ~皐月のことを気にしてるのか?瑠奈にああ言われたけど虎侍にも皐月がどう想っているか言ったほうが良いような…でも瑠奈に無口を直すためだと言われるとな~
虎侍の胸の内を聞きたいがあまりズケズケと人の心に深入りするのは趣味じゃないのでどうしようか真剣に悩む雷聖。
もしかして記憶喪失で悩んでる?もしくは記憶が戻りそう?
う~んと思考に嵌る雷聖。10分後のぼせてフラフラになりながら部屋に戻る雷聖だった。
「まぁ、話してくれるようになるまで待つか」
呟かれた優しい言葉を聞くものは誰も居ない。
今回は4人が魔物と戦うシーンを書こうとして最初の500字ほどで終わり皐月と別れた(?)虎侍の様子を雷聖の視線で書きました~
でも書いたあと後悔…殆ど要らない話だと気付きそれでも載せます。
次は少し身のある話にします~
あと2週間ほどお休みもらいます。楽しみにしていただいている方には申し訳ないです。それでは…