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第十六話

皐月side...


すごいな…怪我してるのに簡単に4人も倒しちゃった…体捌きも洗練されてる。雷聖さんも噂と雰囲気で強いことは知ってたけど虎侍さんも私と同じぐらいの歳なのに…強い。


「皐月~どうしたの~?」


瑠奈が何故かニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら皐月に近づく。


「虎侍さん強いなと思って…」


「へぇ~」


瑠奈の笑みは深くなる。


「ど、どうかしたの?」


「ん~ちょっとね~?」


おどけてみせる瑠奈。皐月はムッとして


「何かあったのなら教えてよ!」


瑠奈は面白そうに笑う。


「じゃあ、教えてあげる。皐月ね虎君のこと言ったときとっても女の子の顔してたから」


女の子の顔…?


「それってどういうこと?」


「ずばり皐月は虎君に恋をしてるってこと」


瑠奈はそういうと愉快そうに笑う。


え?え?!!私、虎侍さんのこと…その…す…好きなの?


皐月はそう思うといきなり顔が熱を出したときのように熱くなった。


「皐月~顔真っ赤よ~」


瑠奈が茶化してくる。


「も、もう!よしてよ!!」


瑠奈は笑って診療所から出てきた雷聖のところへ行ってしまう。雷聖のあとに続いて出てきた虎侍の顔を見た瞬間皐月の顔はさらに熱くなる。


う~瑠奈のせいで治らないじゃない……


追っ手を撒くために被っている笠を深く被りなおして顔を隠し瑠奈の後を追う。


「どうだったの?」


「ああ、少し傷が開いただけだって」


「そう、大したこと無くてよかったじゃない」


診療所の前で立ち話をするのはあまりいいことではないので皐月と瑠奈が泊まっていた宿に行くことになった。その間皐月は一言も喋らず顔の火照りを冷ますのに忙しかった。




「で、お袋さんと親父さんはどうだったんだ?」


「いつも通りだったわよ。元気に畑を耕してたから1泊して直ぐにまた戻ってきたのよ」


少し怒気を含んで瑠奈は雷聖に言う。


「悪かったって。ちょっと久々に一人旅をしようと思っただけだから」


「ふぅ~ん」


さっきから同じ内容を繰り返している。皐月は笠をはずして虎侍をチラッと見てはサッと顔を逸らしてを繰り返している。虎侍は新しく巻かれた包帯が気持ち悪いのか包帯をずらしたりしている。


「おいおい、虎侍あんまり弄ってるとまた傷が開くぞ」


雷聖に言われて手を退けるが暫くするとまた包帯に手を伸ばす。


ちょっと可愛いかも…


皐月は不謹慎なことを思ってしまう。


「う~ん…あ、そういえば手拭いがあったわねこれでも付けときなさい。皐月、付けてあげて」


意味ありげに皐月に指名する瑠奈。


もう、瑠奈ってば…


皐月はそう思いながらも瑠奈から手拭いを受け取り、虎侍の後ろに回り手拭いを広げる。緑色の手拭いを傷を傷めないようにそっと結ぶ。


「きつくない?」


虎侍はコクリと頷く。


は、恥ずかしい…


皐月はまた顔が火照りそうになる。


「……ありがとう…」


顔が思わず綻ぶ。


後ろに回っててよかった~!


ふと見ると瑠奈が雷聖に何か耳打ちしている。瑠奈から何かの情報を得た雷聖は悪巧みしそうな顔でニヤリと笑う。瑠奈もまた似たような顔で笑う。


い、一体何が始まるの……?


「皐月~、虎君~あたし達ちょっと今後のことで話があるからお酒の飲めるお店でお話してくるねぇ~」


お酒の飲めるお店は年齢規制が厳しく18歳以下は入ることすら妨げられる。罰金等は無いが18歳以下がお酒を飲むと成長の妨げになると王帝が言ったためお酒の出すお店では自然と18歳以下にはお酒を出さない。

ちなみに皐月は1週間前に誕生日がきて17歳。虎侍は15歳。瑠奈は19歳。雷聖は20歳となっている。


「夕飯はこれでどっかいい店で食え」


雷聖は100銭を3枚皐月に差し出す。皐月が受け取ると雷聖と瑠奈は腕を絡めて意気揚々と部屋を出て行った。出て行くとき瑠奈は皐月に口パクで頑張れと伝えてきた。


ちょっとーー!瑠奈ーー!何が頑張れなのー?!駄目!!私の心臓がどうにかなっちゃうからーーー!!


皐月の心の訴えも空しく部屋の戸がパタンと閉められる。10分ぐらい皐月と虎侍は殆ど身動ぎもせず固まっていた。夜の帳が下りてくる。


「あの…そろそろどこかの飲食店に行かないと席が無くなるから…その…行こう?」


10分間の皐月の勇気が結集し虎侍に一声かける。虎侍はコクリと頷く。直ぐに部屋を出て皐月は近くにある飲食店に虎侍を案内する。


う~緊張する~…でもちょっと虎侍さんと2人きりって思って嬉しいと思ってる自分が居るよ~瑠奈~私、どうしたらいいの~?


店に入ると直ぐに席に案内される。この店はヨナジャグの中では一番の料理の多さで結構な賑わいをしている。


皐月と虎侍は定食をそれぞれ頼み。料理を黙々と食べる。


うう…気まずい…でも食べてるときに話しかけるのって無理…それにいつも瑠奈から話しかけてくれたから私から何か話すのって……無理ーー!!うう…食事中でよかった…顔赤くなってるが分かっちゃう…


皐月は料理そっちのけで考え事をしていたので料理の味は覚えていない。


「毎度ありがとうございましたー!!」


店の店員が愛想よく皐月を送り出す。虎侍は厠に行ったので皐月は先に店を出て虎侍を待つことにした。夜風がまだ火照った顔の熱を取り去ってくれる。


「まだ…かな?…」


虎侍が来るのが待ち遠しく、肌寒くなってきた風に身を震わせる皐月。


まだ今日会ったばかりなのに……少し離れているだけで寂しい…


暗い気持ちを変えようと深呼吸をする。暫くすると1人の男が近づいてきた。


「へぇ~こんな可愛い子が1人で何してるの~」


肌に纏わり付くような声で皐月に話しかけてくる男は、昼間に虎侍に喧嘩を吹っかけてきた男たちの1人だった。


「ねぇねぇ、無視しないでよ~いいことしてあげるからさ~」


皐月は関わる気が無く無視を続ける。


「まぁいいや、そのうちに気持ちよくなるし~」


「え?…きゃっ!!」


皐月は腕を引っ張られ悲鳴を上げる。


「おっ可愛いね~益々いい感じ~」


「くっ!!」


皐月は腰に差した剣を抜こうとするが本来あるべき剣が無い。


嘘っ!!!剣が…無い……!


皐月は唇を噛み浮かれ過ぎていた自分を責める。


「あれ~?武人さんだったんだ~怖いねぇ~大丈夫だよ~」


皐月の腕を引っ張り昼間にしか開いてない店の人気の無い方へ連れて行く。


「止めてくださいっ!!」


旋術を使い抵抗するが相手も旋術を使い皐月の力ではどんどん引きずられ、人通りが多い方から殆ど見えないところまで来ると店の壁に皐月を押さえつけた。抵抗していた反動で壁にぶつかり息が詰まる。男は着物の間から手を入れようとする。


虎侍さん助けてっ!!!!


目を瞑り虎侍に心の中で助けを求める。


ガツッ!!


「ぐぁっ!!!」


え?…虎侍さん…?


突然男が吹っ飛び唖然として男が吹っ飛んだ反対側を見ると虎侍が立っている。


怒ってる?


会ったときから無表情だった虎侍の顔に少しだけ怒った顔を見た皐月は、迷惑をかけたため謝ろうと思い俯きかけた顔を上げる。


「うぅ…このガキが!!」


打ち所が悪かったのだろう立ち上がろうとするが蹲ってしまう男。


「あの…虎侍さん…?」


手を取られ虎侍に引っ張られ抵抗することも無くその後を着いて行く。

夜風で冷えていた手にじんわりと虎侍の温かさが染み渡る。


あったかい……


早足で宿に向かう皐月は虎侍の背中を見ながら手の暖かさを味わう。


スイマセン<(_ _)>


恋愛って何ですか?……行き詰まりそうです…


最近一日のユニーク数が100を越えてます。日々のご愛読感謝しますサンキュゥ♪(o ̄∇ ̄)/

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