第十三話
新キャラ登場です。
雷聖side...
あ~あ、本当ならネハツリームで大丈夫だったのにな~なんでヨナジャグなんかに行かなきゃいけねぇんだよ~
雷聖はネハツリームで一回気を抜いたので気分がうまく乗らない。体全体で未練タラタラを表現しているようだ。もう一時間もしないうちにヨナジャグに着くがより遠く感じてしまって歩幅もいつもより小さくなってきている。
雷聖が虎侍の方を見てみると最近見慣れてきた無表情があるが壊れた刀を抱き抱えて雷聖の後ろを着いてくる。雷聖はカルガモの親鳥になった気分で少し軽くなった足取りで進んでいく。
「虎侍、あれがヨナジャグだ。今度こそあそこに居るぞ。多分…」
多分って自分で言ってて説得力ねぇー!あ、そういえば虎侍の刀も直させないとな~俺、刀のことなんて全く分からねぇし鍛冶屋に虎侍を置いていってそれから人探しと洒落込むか。
簡単な計画を立てて少し見えかけた町に意気揚々と進む。
キーーン!キーーン!
金属を叩く甲高い音が耳に響く。
「ほら虎侍ここでやってもらえ俺は人探ししてくるから」
虎侍が頷くのを見て町中の人混みに紛れる。
あいつが手を回しているなら町を一周する間に向こうから来てくれるだろうな。
ダラダラと町を練り歩く雷聖が、町を半分ほど歩いたとき近くで耳慣れた声が後ろから届く。
「らーーーいーーーーせーーーーぃぃぃぃいいいいいい!!!」
何となく温かく迎えてやろうとゆっくり振り向く。そして
ドフッ!!
「ゲフッッッ!!!!!」
見事に雷聖の鳩尾に決まる金髪女性の両足。堪らず後ろにひっくり返る雷聖。
「ブフェッ!!」
ちょうどひっくり返るときに雷聖の腹を足台の代わりに使い跳躍する金髪女性。雷聖の口からは反動で変な声が出る。倒れこみながら雷聖は
変な声出た!!!恥っ!!!!
ドサッ!
ズシャーッ!
雷聖の倒れる音と金髪女性の着地する音ここまで約1秒。
「お前!何しやがる!!!」
雷聖は起き上がりながら抗議する。だが金髪女性は雷聖の顔の近くまで近づき指を差しながら
「な~に~がっ!何しやがるよ!!それはこっちの言葉よ!あたしをほって勝手に2ヶ月もほつき歩いて!!おかげであたしは1ヶ月!ネハツリームで待ちぼうけよっ!!!ヨナジャグでももう2週間経ってるし!!!!このバカ雷聖っ!!!!」
一息で言い返す金髪女性。
「それはお前が実家に帰るって言うからだろう!!!」
「実家に帰ったのだって行きと帰り合わせても1週間と少しよ!」
「なっ!!お前は実家に帰るとしか言ってねぇーだろ!!!!」
「なんですってーーー!!!」
「あんだよ!!!」
お互いの視線が火花を散らす。
「ちょっと瑠奈さん!何してるんですか!町の人達が怖がってるじゃないですか!!」
笠を被った少女が雷聖と金髪女性との間に割って入る。
「雷聖が悪いっ!」
「いや、瑠奈が悪いっ!!」
お互いが子供じみたことを言う。
「だって皐月!あのとてつもなく暇だった時間を思い出してよ!!暇すぎて宿の窓から過ぎていく雲の数を数えていた日を!!やることが無くて畳の目を数えた日を!!」
笠を被った少女改め皐月は口に手を当てて考え
「確かにちょっと…」
瑠奈は少女の言葉を聞き雷聖に向き直る。
「ほらね!!聞いたでしょ!あたしたちは暇だったの!!それはもうすっっっごくっ!!!」
「いや、暇だからって何してるんだよ…」
雷聖は脱力しながら言う。
本当にこいつ大丈夫かよ…虎侍がうまく馴染めるか心配になってきた…というか皐月って誰だ?
「で、その後ろの娘は誰だ?」
瑠奈は一度皐月の方に振り返り。
「ああ、紹介まだだった。この娘は早乙女 皐月。あたし達と一緒に旅をすることになるからよろしく!」
「はっ?!早乙女って早乙女流武術の家のことか!!!!?」
雷聖は瑠奈の言葉を聞いて瑠奈の肩を掴んで問いただす。
「ちょ!!痛っ!痛いってば!!!」
「あ、悪い。ところで早乙女って…」
瑠奈の肩から慌てて手を離すが質問を止めない雷聖。
「そうです。私の家は早乙女流武術を教える道場をしています」
瑠奈の代わりに皐月が答える。
「なら何故こんな場所で…しかも一緒に旅だなんて…」
早乙女流武術は代々王帝に仕えている門外不出の武術。例え弟子として入った者すら武人として自由な旅に出ることを許されない流派のはず。もしこの子が本当に早乙女流武術の家の娘だとしたら何故こんなところに…この娘が嘘をついているか訳有りか…
雷聖はさっきと打って変わって冷静に推理していく。
「その…お父様と少し…あの、迷惑はかけませんから一緒に旅をさせてください」
皐月は頭を下げる。雷聖は悩む。
家出娘か…これなら話は繋がるが門外不出とまで言われた流派だろ…追ってくるやつがいてもおかしくないな。全く虎侍といいこの娘といいなんでこうも問題がついてるのか…お祓いでもしてもらうかな。
雷聖は元々の厳つい顔の目頭に集まる皴を伸ばす
「別に一緒に旅をするのはいい。だが追ってくるやつの中に危ないのがいたら教えること、決心がついたら親のところへ一度帰ることが条件だ」
これならいいだろう。我ながらいい考えだ。
雷聖は心の中で拳を揚げて自分を褒めた。
「あ、そういえば俺のほうにも1人連れがいるんだ。橘 虎侍っていうんだ」
少し黙っていた瑠奈は目をパチクリさせる。
「え?あんたが連れてきたの?」
雷聖はちょっとムカッとしながら
「そうだ。悪いか?」
「へぇ~珍しいこともあるもんねぇ~」
瑠奈は心底珍しそうに雷聖を見てくる。
確かに今まで瑠奈以外連れなんていたことねぇし頼まれても全部断ってきたからな。おかげで『孤高の赤獅子』なんて言われてきたし瑠奈が珍しがるもの頷けるな。
雷聖は自分の今までを振り返り瑠奈が珍しがるのを納得してしまい少し凹んだ。
「まぁそこそこ強いやつだから旅には支障ないぞ」
「へぇ~あんたが惚れるぐらい強いんだ~楽しみ~どんな大男かしら」
瑠奈は虎侍に過大な期待をし始めた。
「いやガキだ。多分14、5ぐらいどちらかといえばひょろいぞ」
雷聖は虎侍の容姿を何となく伝えるが黒髪黒目、無表情、無口ぐらいしか思いつかず黙ってしまう。
「他に情報無いの~?ってゆうか前に言ってた雷聖の強い基準ってガッチリしてて30代前半あたりって言ってたじゃない真反対よ?」
「それでも強かったんだよ。悪いか?」
「べっつに~」
確かにあいつは強いそれは保障できるな。あとなんか情報はあったか~?ん~~…おっ!!
「あとは記憶喪失だ!」
よし、これであいつの情報は伝わっただろ。ん?
雷聖はやり遂げた顔をして瑠奈を見ると唖然とした表情を浮かべている。
虎侍と違って表情がコロコロ変わるな~………あっ!記憶喪失は不安要素じゃねぇか…
「あんたなんて危ない状態の子を連れてるのよ!!元のところに返してきなさいよ!!」
そんな動物を拾った子供みたいに…というか元のところ分からねぇみたいだから一緒に来てるんだよな~説明するのめんどくせぇな~
「まぁ本人が何も文句を言わねぇからいいんじゃね?」
雷聖は無責任なことを言ってみる。
「記憶が無くて分からないから文句を言わないんじゃないの?」
「……それもそうかも」
はぁ~っとため息を零す瑠奈。
「で、その虎君はどこ?」
虎君…まだ会ってもいねぇぞ…
「刀が折れたんで鍛冶屋に置いてきた」
「はぁ!?あんたバカ?何にも分からない子を普通置いてくる?!!」
瑠奈は呆れと怒気をひっくるめた顔をして雷聖に詰め寄る。
「それもそうかも。まぁ大丈夫だろ喧嘩吹っかけたりするようなやつじゃないし」
むしろあいつが喧嘩吹っかけたところをみてみたいぐらいだし。
「バカッ!最近この町の不良が随分でしゃばって昼でも治安が悪くなってるのよ!」
「なっ!知るかよ!俺は今日着いたばかりだぞ。情報仕入れる暇なんてねぇし!!」
「とにかく虎君のところまで行くわよ!!」
瑠奈はそういうと直ぐに鍛冶屋がある方向へ走っていく。皐月遅れながらも着いていく。
あ~こんなことなら先に瑠奈を見つけてから鍛冶屋に連れて行けばよかった~ってか治安が悪くてもそんな簡単に絡まれるわけねぇだろ…
雷聖も渋々着いていく。
そろそろ人物紹介を作ろうかと思っているが挿絵の付け方がよく分からん;;説明読まないタイプなんで…もう暫くお待ちを…
あとPV2万8千、ユニーク5千を突破しました。日々のご愛読に感謝しますm--m