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名探偵の系譜  作者: 如月いさみ


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回帰 6

黛和斗は目を細めて

「満足か?」

俺の夢を打ち砕いて満足か?

と睨んだ。


黒崎暁に向けた銃のトリガーにかけた指に力を込めながら二人を見つめた。


波多野大気は銃を手にしかけた。

確実に黛和斗だけを倒す自信はあった。

が、ハルヒは手で彼を制止した。


那須幸二は黛和斗を見て

「俺が砕きたかったのは人の命を命と扱わないシステムで貴様の夢じゃない」

だが

「ただ西日本の人間をロボットに置きかけて己だけの富を目指していた貴様の夢を砕いたのは俺は良かったと思っている」

と告げた。


黛和斗はギリギリと歯ぎしりをした。


ハルヒは彼を見つめると

「西日本の人間をロボットに変えてその上に君臨して何をしたかったんだ?」

君は

と告げた。


黛和斗はハルヒを見下ろしながら

「日本を手中にする」

それが黛家の悲願だ

と告げた。


ハルヒは見つめ返し

「それで?」

その後どうするんだ?

「ロボットだけの王国でそれを手中にして…その後何をするんだ?」

その先に何を見ているんだ?

と聞いた。


黛和斗は息を飲み込んで彼らを見た。


ただ日本を手中にする。

それが目的なのだ。


ハルヒは更に

「何のために日本を手にしたいんだ!」

黛和斗!!

と強い口調で呼びかけた。

「何があるっていうんだ!」

人を殺し

ロボットの国にして

「そこまで得るものは何なんだ!」

何が得たいんだ!


黒崎暁は緩んだ手を払うと那須幸二の腕の中へと飛び込んだ。


黛和斗は銃を握りしめながらハルヒを睨んだ。

「それがずっとずっと祖先の願いだ」


ハルヒは目を細めると

「だが、それの願いで君が幸せになれるのか?」

富を幾ら手に入れてもきっと欲は尽きない

「人間は欲を望めばその底は際限がない」

と告げた。

「それを追いかけるだけの人生が君を幸せにするのか?」

それよりも君の『黛和斗』の幸せを求めた方が良い

「人として」


黛和人は「煩い!!」と怒鳴るとハルヒに銃口を向けた。

が、そのまま踵を返すと窓へと飛び込んだ。


ハルヒは駆け出すと手を伸ばした。


波多野大気は舌打ちして咄嗟にロープを柱にかけるとハルヒの腰を掴んだ。


ハルヒは黛和斗の腕を掴み

「登ってこい」

と告げた。


黛和斗は宙ぶらりんになりながらハルヒを見た。

「俺はお前の大切な人間を傷つけた」

殺そうとしたんだぞ


ハルヒはそれに

「そうだな」

恨んで憎んでそれを晴らすだけなら楽だな

「だが俺は本当の復讐は…君が罪を悔いて償って…生きなおすことが復讐だと思っている」

と告げた。

「もう俺は二度と間違いたくないと思っている」

兄を失った時にただただ相手を憎んで倒そうとして色々な人を傷つけ世界をここまで迷わせてしまった

「だからただただ憎しみに囚われただけの復讐は…俺はしたくないと思っている」


那須幸二はそれを聞くと足を踏み出して手を伸ばした。

「お前には皐月を殺した罪を償わせてやる」

掴まれ


黛和斗は目を見開くと小さく笑うと

「これから先の世界がお前たちみたいな人間が続けていくのなら」

俺には生き難くて仕方がない

「後悔を…してしまうことになるだろう」

それを背負って

と言うと銃でハルヒの腕を撃つとスルリと落ちる瞬間に笑みを浮かべた。


「俺は…間違った夢を見ていた」


ハルヒは更に手を伸ばそうとして波多野大気に引き留められた。

「島津さん!」

俺は貴方を守るために九州から来た

「貴方が落ちれば俺も落ちる」


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