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名探偵の系譜  作者: 如月いさみ


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60/70

急転直下 5

有馬伊織はそれに気づかないまま

「あ、俺はノリで」

それに一色さんの同居人ってどんな奴なのかなぁってな

と笑った。


颯希は驚いて

「何故!?」

とギョーンと彼を見た。


海埜みやびはくすくす笑って

「それを人は恋と呼ぶのかしら」

と告げた。


ハルヒはハッと我に返って笑むと

「かも」

と言い

「でも、颯希の友達が君たちで良かった」

と告げた。


それに海埜みやびは

「どうしてですか?」

と聞いた。


ハルヒは笑んで

「君たちが良い人間だとわかるからだ」

と告げた。

「昔の親友たちを思い出す」


柄本聖也は黙ってハルヒを見た。


海埜みやびは静かに笑んで

「私の家の地下に秘された書籍たちの中の歴史書に旧システムと言うもののことが書かれています」

今の政治システムの前に日本を支えていたAIシステムです

「今のように政治を行うわけではないですが主には集積や各地の監視的なAI事務システムのようなものです」

そのシステムには二人番人がいてどんな形で死んでも必ずリライフする

と告げた。

「12歳の猫ちゃんが100歳以上に見えてしまって強ちその歴史書はフィクションでない気がしましたの」


颯希は彼女とハルヒを交互に見た。

自分が知りたいと思いながら未だ知らないハルヒの正体のことを言っているのかもしれないと思ったのである。


ハルヒは腕を組むと

「と言うことは神楽の国史書は海埜が引き継いだんだ」

と呟いた。


海埜みやびは静かに笑むと

「100年前の世界は…どんな世界だったんですか?」

私はそれが知りたいんです

と告げた。

「今の世界はレベリング、レベリングで今こうやって柄本くんや有馬くんや一色さんと話をしたりできていることが奇跡のようなことだと思うんです」

人が交わらない

「人が人でない世界のような気がしてます」

歴史書の中の世界は人の世界だった

「フィクションのような世界だから」


颯希は海埜みやびの本当の心を聞いて目を見開いた。


柄本聖也は沈黙を守って彼女を見つめた。

彼女の隣に住みずっと見守ってきた。


キツイところもあるが本当は優しいのだ。

恐らく自分たちのような関係もまたこの世界では珍しいことなのかもしれない。


今の世界の人は他人を構う気持ちを失ってしまっている。

そうなるように育てられているのだ。


彼女の家に最初は電気修理のアルバイトで行ったのだ。

そこで地下の本を見て感動したのだ。


そこに書かれていた電気技術は習えるものではなかったからである。

だが。

だが。

自分に本を貸したところで彼女にとって何の得にもならないことだ。

レベリングにもならない。


無理だと思った。

なのに彼女は本を見つめる自分に

「読みたいならいいわよ」

と言ってくれたのだ。


驚く自分に

「歴史書にね、本を貸す図書館って建物があったって書いていたの」

もしかしたらこんな感じなのかも知れないわね

「どうぞ」

と告げたのだ。


誰かに無償で何かをしてもらったのは初めてだった。

そんなことがこの世にあるなんて思いもしなかった。


その時から自分にとって海埜みやびは『特別』になったのだ。

有馬伊織は黙って状況を見つめた。


ハルヒは4人を見つめ

「理想郷ではなかった」

いやどんなに努力しても理想郷は理想郷で

「ベストな世界はない」

と告げた。

「今のAIシステムは人を人として扱っていない」

ただ物として平等に処理している

「そう平等は平等だ」

その前の世界は少なくとも人が政治をしていたので人は生命として扱っていた

「人が罪を犯せば罰せられる」

だが歪はあった

「貧富や格差など様々な」


どちらを選ぶかと言うことだ


4人は顔を見合わせた。


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