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名探偵の系譜  作者: 如月いさみ


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新しい時代への仲間 3

英語の授業が終わり、颯希は椅子に座りながら大きく伸びをした。


梅雨の手前なのでまだ時期的には爽やかな新緑の季節。

暑くもなく。

寒くもなく。

空は青く晴れ渡り窓を開けていると流れる風が心地よかった。


日差しが射し込む中で颯希がふぅと息をついた瞬間に一つの影が横に立った。

「初めまして、編入?それとも分校から?」


颯希は頭上から降り注いだ声に顔を向けると

「初めまして、編入」

と答え、う~んと考えながら

「よく考えると編入って珍しいよね」

と告げた。


それに隣の机の椅子を引いてその人物は座り

「ほっとけばいいんだけど気になって、声をかけた」

君ももしかして同じタイプ?

「ちゃんと受け答えしてくれるから」

と告げた。

「俺は有馬伊織」

よろしく


颯希は笑むと

「確かにレベリング以外に興味持つ人少ないからね」

と頷き

「私は一色颯希」

よろしく

と告げた。

「ただ、私の場合は称号が探偵の称号だから…レベリングするには好奇心と興味が必要なんだ」

有馬くんは称号なに?


有馬伊織は驚きながら

「探偵の称号?初めて聞いた…と言っても推奨以外の称号って余程何かしたいと思わない限り知らないからな」

と言い

「俺の称号は中級建築設計士でレベル5」

と告げた。


颯希は「凄いねー」と告げた。

「家の設計ができるんだ」


有馬伊織は笑むと

「まあ設計事務所でアルバイト状態だけどな」

と答えた。


教室で会話をしている人間はほとんどいない。

だからこそ、今二人に注目している人間は颯希に興味を持っていた人間よりも遥かに多かった。


人間とはそういう生き物なのだろう。


颯希は少し考えて

「あのさ、家の設計とかしているんだったらそういう知識詳しいってことだよね?」

と聞いた。

「例えば家で使われるものとか」


有馬伊織は「んん?」と首を傾げた。

「まあ設計だから間取りとか家の建設に使われる資材とかならな」

それこそどんな冷蔵庫が良いとかどんな…


そう言いかけた時、チャイムが響いた。

2時限目の始まりであった。


颯希と有馬伊織は同時にスピーカーに目を向けて苦笑すると有馬伊織は席に戻って颯希の隣に座った。


そして彼は小声で

「家電とかは電機量販店の販売員の方が詳しいから…そういうところでバイトしている上級販売員が良いぜ」

と告げた。


颯希は笑むとタブレットを立ち上げながら

「ありがとう」

詳しそうだから後で少し聞きたいことあるの

と小声で返した。


その瞬間であった。

悲鳴が響いた。


颯希は立ち上がると声の方を見た。

廊下の方だ。


有馬伊織もつられて立ち上がり

「おい、一色さん」

授業

と呼びかけた。


颯希は足を踏み出すと

「悲鳴が聞こえているのに、それどころじゃないでしょ!」

と走り出した。


有馬伊織は左右を見て

「くっそー」

と言うと颯希の後を追いかけた。


二人が出て行ったあとに一人の少女がタブレットを閉じると

「何か…気になる」

と言うと足を踏み出しかけた。

が、彼女の手を青年が掴んだ。

「あのさーほっとけよ」

海埜さん


海埜みやびはフフッと笑むと

「だったら、柄本君もついてきたらいかが?」

と告げた。

ふわりとした柔らかい長い髪が揺れた。


勝気な瞳が柄本聖也を捉えた。


柄本聖也は息を吐きだすと

「ったく、家が隣じゃなかったら」

この動きが激しいお嬢さんに付き合うことないのに

と立ち上がった。


海埜みやびはそれに

「あら、私は付き合っていただかなくてもいいのよ?」

と返した。


それに柄本聖也は彼女の手を掴んで

「お前の家の本を俺は愛している」

と告げた。

「本な」


海埜みやびは笑むと

「ええ、本ですよね?」

と言い二人で向かった。


他の生徒たちは腰を浮かしながら思わず顔を見合わせてワラワラと立ち上がった。

今までなら誰一人悲鳴が響こうが何しようが立ち上がることなどなかったのだが、全員が思わず教室から出て階段の上から下を見たのである。


颯希は階段を駆け下りて未だ「誰かー!」と叫ぶ声を頼りに一階の配信用の教室の中へ飛び込み足を止めた。


そこに一人の男性がパソコンの前で椅子に座って倒れていたのである。

叫んでいたのはお盆を手に尻もちをついている女性であった。


颯希は女性に駆け寄り

「あの、いったい何があったんですか?」

と聞いた。


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