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名探偵の系譜  作者: 如月いさみ


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那須家の後継者 その9

颯希も頷いて足を踏み出すと道を横切り木々の影に飛び込んだ。

そこからなら村がある程度見渡せた。


颯希はそれを見ると

「…夜中なのに働いてる」

と皓々と照る電灯の下で畑を耕している人々の姿を見て驚いた。


村はまるで昼間のような明るさである。

その時であった。

がさっと二人の横手の木々に人影が飛び込んできた。


颯希は「ひぎゃ!」と叫びそうになったのを堪えて慌てて道に飛び出した。

ハルヒも一歩下がって構えた。


瞬間に激しいサイレンが鳴り始めた。

颯希は周囲を見回し

「え?」

と呟いた。


ハルヒも驚いて周囲を見回しかけて手を掴まれて驚いた。

女性が一人木々に隠れて

「た、すけて」

と呟いたのである。


ハルヒはその女性を見ると目を見開いた。

「君は…」

と言いかけて息を吸い込むと立ち上がって

「颯希!逃げる!」

と告げた。


人々が動き出したのに颯希は頷いて走り出した。

ハルヒは女性の手を掴むと

「この先にバイクがあるからそこまで走れる?」

と聞いた。


女性は小さく頷いた。


三人は明るく周囲を照らし始めたライトを避けながら山肌に沿って砂利道を駆け下りバイクに乗り込んだ。


颯希は後ろに乗った二人を見るとエンジンをかけた。

「砂利道だから事故ったらごめん!」

とりあえず振り落とされないように私に抱き着いて

「ぎゅーだよ、ぎゅーーー」


そう言って砂利道をバイクで下り始めた。

背後では激しいサイレンが鳴り続けていた。


バイクは事故ることなく砂利道から無事に一般のアスファルトの道へと出ると猿投の温泉宿へと戻った。

が、用心のために彼女に颯希の上着を羽織らせて彼女としてハルヒと共に部屋へと戻った。


颯希は二人をバイクで送ると町へ出てビジネスホテルに泊まった。

が、2時間ほどした時にホテルの従業員が彼女の部屋へと姿を見せたのである。

「お客様、お部屋に荷物を忘れられた方がおられまして」

夜分遅く申し訳ありませんが


颯希はそれに扉を開けると

「え?」

と従業員とともに立っている男性を見た。


キリとした何処か厳格な雰囲気の男性であった。

男性は彼女を見ると視線を部屋へと向けた。

「申し訳ないが失礼する」


颯希は「誰だ?」と思いながら

「どうぞ」

と入れた。


男性は風呂からトイレからベッドを捲ってベッドの下まで見て颯希を見た。

「今日、遅くにこちらにチェックインしたとお聞きしたが」


颯希は正直に

「猿投山へツーリングしてて…道に迷って…遅くなったんです」

と答えた。

「もう入り組んでいるので」

村があったんですけど

「宿屋はなさそうだったのでしょうがないからここまで降りて」


肩を竦めて息を吐きだした。


男性は腕を組むと

「そこで誰かと会わなかったか?」

と聞いた。


颯希は少し考えて

「人と言うか…なんか木々がガサガサして猪かと思って…その思いっきりアクセル踏んで逃げたことはありますけど」

と男性をチラリと見た。

「いや、猪かクマか何か分からなかったけど…やっぱり怖くて」

もしかして貴方でした?


男性は首を振ると笑みを浮かべて

「いや、夜分に済まない」

と言い従業員に

「私の勘違いだったようだ」

と答えて立ち去った。


颯希は内心安堵の息を吐きだしてそのまま眠りについた。


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