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名探偵の系譜  作者: 如月いさみ


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那須家の後継者 その8

ハルヒは仲居に

「そう言えば、ここへ来る途中でこの辺りには人の住まないお猿さんがいっぱい住む村とか増えているって聞いたけど本当?」

と聞いた。


…。

…。


颯希は目を見開き

「ギャップが」

と心で思わず突っ込んで汗を浮かべた。


仲居は微笑んで

「そうね、山の向こう側の村は限界集落が多かったわね」

と言い

「でも…半年…かなぁ」

それくらい前に黛土地開発ってところがどっかの村に人を一杯連れて行ってたわね

「何か車が沢山行って」

お猿さんじゃなかったわね

とくすくす笑った。


ハルヒは一瞬顔色を変えた。

が、すぐに颯希は視線を交わした。


そして

「そーなんだー」

お猿さんじゃなかったんだー

とへたっと大の字になって畳に寝転がった。


仲居は笑いながら立ち去った。


戸が閉まるとハルヒは身体を起こし颯希に

「恐らくそれだな」

と告げた。

「黛土地開発か…」


颯希はハルヒを見ると

「何か知ってるの?」

その黛土地開発っていう名前に

と聞いた。


ハルヒは少し考えたが

「黛は…AIシステムを作ったJDWのメンバーの一人の苗字だ」

もし

「AIシステムに細工があったら黛土地開発自体にも何かあるのかもしれない」

と告げた。


颯希は「は?」と首を傾げた。

「AIシステムに細工って…やっても無理だと思うけど」

子供は三歳になったら全員親元から引き離されて一括養育施設だよ?

「確かに私のようにこういうお守りとかで引き継ぎ程度ならできるかもだけど」

会社とかはできないはずだよ


ハルヒは冷静に

「AIシステムを作ったのは人間だ」

手順書に特別を作れば可能だ

と告げた。

「そして人間は余程己を律しない限り…欲に動かされる」


原点は『平等』だが、製作者が『平等』の枠に入るのには覚悟がいる

「そういうものさ」

だからそれをどこまで己を律することができるかってこと


颯希はハルヒの酷く大人びた表情に小さく頷いた。

「どうなんだろ」

考えすぎのような気もするけど

そう心でぼやいたのである。


二人はその後に風呂に入り食事をして、夜の10時頃にバイクに乗ると問題の村へと向かった。


猿投山を迂回する山裾の道を走り、八柱のところから戸越峠を登った。

その途中に舗装されていない道が問題の村へとつながっている。


その分かれ道でハルヒは颯希を見ると

「バイクは押して行こう」

と告げた。

「舗装されていないから危ないし」


颯希は頷いてバイクから懐中電灯を出して頷いた。

「わかった」

ハルヒは懐中電灯を受け取り照らした。


二人は砂利の道を歩き始めた。

車が一台漸く通れるくらいの狭い道である。

左手は山肌。

右手は崖。

そして、月が頭上に輝き夜の闇の中で陰影を浮かび上がらせていた。


二人はその中を40分ほど歩いて木々の間から見えた灯りに山肌に身を寄せた。

颯希はハルヒに

「ここ、みたいね」

と告げた。


ハルヒは頷いた。

道の両脇は片方が山肌で片方が崖になっている。

隠れようがない。


ハルヒは息を吐きだすと

「バイクはちょっとここに置いて村に近付こう」

と告げた。


颯希は頷いた。

二人は身を屈めて一歩一歩慎重に進んだ。


颯希はハッとすると携帯を出して

「録画録画」

と画像を取り始めた。


ハルヒは笑むと

「ナイス!」

と小声で告げた。


そして、入り口のところに少しある木々が茂る平地に向けて顎を動かした。

そこで隠れようということである。


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