はじまりの始まり 4
男性は「君が呼んでくれたんだ、ありがとう」と言い
「部長の名前は雀荘志」
と告げた。
「俺の名前は清川肇だ」
愁一は目を細めて
「清……川……はじめ……」
と呟いた。
「はじめって一って書くの?」
清川肇は笑うと
「違うな」
ふでつくりの肇だ
「わかるかな?」
と告げた。
「僕には少し難しいかもな」
愁一はにっこり笑って
「一じゃない事だけわかった」
と答えた。
漢字は分かったが、身体は10歳なのでそう答えておいたのである。
そして、女性に顔を向けると
「おねーさんは?」
と聞いた。
女性は笑むと
「私は萬田君子よ」
と告げた。
愁一は「んー」と言うと
「まんはお金の万?」
と聞いた。
萬田君子は苦笑して
「違うわ、まんはくさかんむりの萬よ」
と答えた。
愁一は目を細めて口元に笑みを浮かべると
「なるほど、俺がタヌキって訳じゃないんだ」
と言い
「お姉さん、何故部長さんを刺したの?」
お姉さんが犯人でしょ?
と告げた。
それに萬田君子は目を見開いた。
清川肇は驚いて彼女を見た。
彼女は困ったように笑い
「な、何言ってるの?」
どうして私が?
「僕、変なこと言わないでよね」
と告げた。
愁一は冷静に
「雀さんは病院に運ばれるときに俺に」
きよし、いっしき、あがり、きみ、たぬき
「そう言ったんだ」
と告げた。
萬田君子はそれに
「清なら清川君だって漢字一緒よ?」
と告げた。
それに清川肇は慌てて
「おいおい、俺はやってないぜ」
と告げた。
愁一は彼女に
「でも他の言葉が当てはまらないよね?」
それに雀さんは『きよしいっしき』をそのまま言ったんじゃなくて
「貴方に悟られないように言いかえただけ」
本当は雀さんの名前の雀荘にかけて
「チンイツ……清一色……と言いたかったんだ」
と告げた。
「麻雀の役の一つでマンズ、ピンズ、ソーズのいずれか一種類だけ使って和了した時の役なんだ」
その三つの一つマンズは漢字で萬子……貴女の萬田君子から君と田を抜いた文字になる
「君タヌキになるんだ」
お姉さんのことになる
萬田君子は目を見開きヘナヘナと座り込んだ。