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那須家の後継者 その1
探偵の称号のレベルが3になった。
順調であった。
が、颯希は先の事件の犯人だった田端修三のことを考えていた。
三年間レベリングが出来なかった自分のことにも重なったからである。
レベルが上がらないということが生活に直結し、追い詰められてしまう。
それが自分の努力と言うよりはAI政治システムによって決定づけられてしまうのだ。
犯罪は許されないがそれでも颯希に一つのこの社会の疑問を覚えさせたのである。
自分が探偵の称号を得て貧乏でつまはじき生活なのは仕方がないと思っていたが…本当に仕方がなかったのだろうか?
そう言う事である。
彼女はボロッタ鷹取アパートの部屋の中の布団の中で寝がえりをうち、隣で眠っている妻越ハルヒを見た。
「猫くんは…どう思っているんだろう」
12歳の彼は子供だ。
自分よりもずっと子供だ。
だが、きっと凄く大人なのだろう。
そんな確信がある。
彼の本心が聞きたい。
颯希は本気でそう考えたのである。




