疑惑 その10
犯人の行動の糸が見えた、と言った方が良いかも知れない。
颯希はメモを書きながら
「9階の給湯室以外は全部一階とか地下なんですね」
と呟き
「あの」
と言うと
「お願いがあるんですが」
と告げた。
それに今野牧夫は目を見開くと
「は、はぁ…こちらとしては別に構いませんが」
と言い
「では今夜にでも」
と告げた。
颯希は笑むと
「お願いします」
と答えた。
その後、颯希とハルヒは今野牧夫と分かれてビルを後にした。
颯希はハルヒを見ると
「話をきいてもらえる?」
猫くん、何となく探偵の先輩みたいな気がするから
と告げた。
ハルヒは笑むと
「構わないよ」
と答えた。
颯希は17歳だ。
ハルヒは10歳だ。
はたから見れば颯希の方が年上だ。
だが。
颯希の中でハルヒはもっともっと年齢が上の先輩のように感じられて仕方なかったのだ。
颯希は近くのホテルで一部屋チャージしてハルヒと共に中へと入った。
一応、一週間泊るつもりであった。
探偵の称号のレベルが上がったので使用金額が増えたのがさっそく幸いしたのである。
学問の称号のレベルが一つ増えるよりも職業称号のレベルが上がる方が使用金額や住む場所がかなり良くなるのだ。
颯希は部屋の中に入るとメモパッドを置いて
「私の推理を聞いてほしい」
と告げた。
ハルヒは頷いた。
「もちろん、そのつもりだよ」
颯希はメモの画面を出して
「私、最初の三回は本気なんだと思った」
と告げた。
「それはビルを燃やしてやろうという気持ちの本気で…何故?とかはわからないんだけど」
でも恐らくこれらが失敗に終わったので
「標的を絞ったんじゃないかと思う」
9階の給湯室を選んだのもその意志の表れだと
「最初の三回のやり方がただ火をつけるからモノを燃やすへ」
そして三回目で恐らく爆発物を使ったことからレベルを上げたけれど失敗した
「だから火事にしたい場所を絞って確実にそこを燃やそうとしているんじゃないかと」
給湯室に関してはその最後のテストだったような気がする
ハルヒは頷いた。
それはハルヒ自身も感じたことである。




