疑惑 その7
ハルヒは高みの見物として二人のやり取りを眺めていた。
颯希が手詰まりになれば助言をするつもりだが、今はまだその必要性をハルヒは感じていなかったのである。
颯希は一瞬ハルヒを見たものの彼が事の成り行きを見守っていると分かると立ち上がって
「現場へお願いします」
恐らく処理はされていると思いますが
「一番最近の場所から最初の場所と順にお願いします」
と告げた。
今野牧夫は一回のボヤで捜査を頼んだわけではないのだ。
何度かボヤが続いて建物の危険を感じての話なのである。
つまり、ボヤが起きた位置関係からも何かわかるかもしれない。と颯希は考えたのである。
ハルヒが以前に言っていたように『情報は多ければ多い方が良い』のだ。
ハルヒも立ち上がり今野牧夫を見た。
今野牧夫は頭を下げて
「では、お願いいたします」
二日前の場所から案内していきます
と告げた。
二人は頷き彼の後について歩いた。
建物は24階建て。
その建物の中でボヤが4か所で起きているのだ。
それも一か月ほどの間である。
確かに不安や不審を覚えて当たり前である。
最初に案内されたのは9階の給湯室であった。
極々普通の給湯室でシンクと電気コンロが一つと冷蔵庫が一つ。
そして、冷蔵庫の上に電子レンジだ。
颯希は黒く焦げたシンクと天井を見て
「ここか」
と呟いてシンクの中に残る黒い残骸に手を伸ばしかけた。
その時、ハルヒがビニール手袋を出すと
「これ」
その黒いのが何かわからないから
「直接、手で触るのはヤバいかな」
と告げた。
そう言って颯希に渡し、自分も手袋を嵌めた。
颯希は「ありがとう」と答え手袋をすると黒い残骸に触れた。




