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名探偵の系譜  作者: 如月いさみ


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22/70

名探偵の血 その13

ハルヒは携帯をポケットから手にすると

「出雲市武志町にある笹谷さやかの自宅の庭を掘り返すことを要請する」

また救急車両を要請する

と告げた。

「これは探偵の称号の依頼による調査と付随事項である」


颯希は目を見開くとハルヒを見て

「…猫くん」

と呟いた。

だが、まだ自分がやることはある。

颯希はさやかを見ると

「このことは貴女の務めるスナック・エルドラドの滝野ナナコさんにも報告します」

そしてこれまでのことは公にします

「公になれば貴女はペナルティ持ちとなり…」

と言いかけた。

が、さやかは蒼褪めて

「そんなことされたら客がいなくなるじゃない!」

と叫んだ。


その時、AIシステムから派遣された業者がインターフォンを押して中へと入ってきたのである。


さやかは慌てて

「や、やめて!」

やめなさいよ!

と彼らに手を伸ばしたが、業者は彼女の手を払って庭を掘り返し始めた。


颯希もハルヒもその状態を見ると視線を伏せた。

青山昭二も救急車で病院へと搬送されたのである。


紅い赤い血のような空が広がる夕刻の光景が周囲を包み込んでいた。

全てが終わり、颯希とハルヒはスナック・エルドラドでその件を滝野ナナコに報告し、その後、坂田治人の家へと向かった。


坂田治人は二人の報告を聞くと頭を下げて

「ありがとうございます」

と告げると

「青山に関してはケガが治りましたら元の業務に」

神田と三井の代わりは募集をかけます

「まあ、すぐ見つかるでしょう」

とさっぱりと告げた。


颯希はそれを聞き視線を伏せた。

「あの…それだけですか?」


ハルヒはそれに一瞥して直ぐに坂田治人を見た。

坂田治人は首をかしげると

「え?」

あ、ああ

「ちゃんとAIシステムには報告しておきます」

また何かありましたらお願いするようにいたしますよ

と笑顔で告げた。


颯希は更に言葉を紡ぎかけた、ハルヒはそっと手を置いて颯希を見た。

颯希は立ち上がると

「お願いします」

と頭を下げた。


夜の闇が広がる中を二人は列車に揺られながらぼんやりと外の光景を見つめていた。

颯希は泣きそうになりながら

「まるで…部品みたい」

と呟いた。


ハルヒはそれに静かに笑むと

「そうだね」

と言い

「もっと、もっと、今この社会に疑問を持つんだ」

人が人として扱われていない機械仕掛けの社会に

と心で呟いた。


AIシステムが笹谷さやかに与えたペナルティは『他の会社の運営に打撃を与えた』と言うもので庭から見つかった人たちに対するものは何一つなかったのである。


そして探偵の称号のレベルが初めて上がったのである。

AIシステムから探偵の称号がレベル2になったことの報告が届いたのである。


颯希は翌日、学校へ行く準備をして起きてきたハルヒを見ると

「称号のレベルが2になったんだけど」

ちょっと嬉しくない

「なんでだろ」

と呟いた。


ハルヒはそれに優しく笑むと

「わかるよ」

と短く答え

「でもその理由は颯希さんが見つけないとな」

と告げた。


颯希はその言葉と表情に

「やっぱり、猫くんは私よりきっとずっと大人なんだ」

と心で呟いて、カバンを持つと

「じゃあ、行ってきます」

と部屋を出た。


空は青く広がり季節がゆっくりと移り替わり始めていることを無言で颯希に教えていた。


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