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はじまりの始まり 1

 季節は真冬。

 目覚めたら雪国だった。

 10歳と言う年齢で試験管から目覚めた島津春彦はふきっさらしの雪国の光景に呆然と立ち尽くしていた。


 彼の本体が死亡し目覚めるまで長い年月が過ぎ去り、時代はAI政治システムが世界のスタンダードとなっていた。日本においても政治の土台が人から機械へと成り代わって数十年が過ぎ去っていたのである。多くの人々はそれ以前の政治を人間が行っていたという認識が薄れ、AI政治システムが人類史の最初から現在まで続いているというそんな感覚を持って生活を送り、『完全なる平等』という旗印の下で子供たちは3歳まで親元で育ち、その後は試験を受けて勉学と運動の二つの称号の内のどちらかに振り分けられて養護施設で教育されるようになっていた。


 そんな中で新潟の山間の一角にある人の政治をフォローしていた旧型システムが管理する隠された試験管の中で島津春彦は10歳の身体で目を覚ましたのである。問題は試験管から解放されたが衣類と言うか、それどころか食料から様々な生活用品がその空間には全くなかったということである。


 こんなところに裸一貫で放り出されても、と島津春彦は思いつつも雪の降る中を決死の覚悟で外へ出て家を探すことにしたのである。

 このままでは目覚めたは良いが飢え死にするか凍死である。


 幸いにも吹雪ではなかった。

 ただ雪が積もっていたので凍死の恐れがあり長くは歩けないが、見れば家がぽつぽつと見えた。

 

 春彦はサクサクと雪の中を歩き一番近い家の戸を叩いた。


 扉が開き女性が立っていた。

「何か用?」

 

 聞かれたので

「すみません、服とごは……」

 ん、という前に扉がビシッと閉じられた。

 

 10歳と言えど真っ裸だと確かに怪しい。

 でも、このままじゃ凍死。

 

 そう思いつつ、次の家の戸を叩いた。


 男性が出てきた。

「何か用か?」

 

 同じように

「すみません、服とご飯を」

 と告げたが

「他を当たってくれ」

 それかシステムに言ってくれ

 と言われて扉が閉じられた。

 

 AI政治システムに連絡を取れということなのだろうが、アクセスボードがない。

 旧態システムと言えど服とそういうのは準備していて欲しかった! と彼は思ったものの、更に足を進めるしかなかった。


 このまま死ぬわけにはいかない、と思ったのだ。

 

 祈る思いで3軒目の戸を叩いたが対応は一緒だった。

「何か用?」

 と聞かれて

「すみません、服とごは……」

 ん、という前に戸が閉められた。

 

 マジか! いやいや、マジで凍死する。と思った4軒目で出てきた女性が微笑み

「おかえりなさい」

 と言って招き入れてくれた。

 

 おかえりなさい、と言われても……この家のモノじゃないです。

 と思いつつ

「お邪魔します」

 すみません

 と言って家の中へ入った。

 

 彼女は少し大きめの服を出して食事を用意してくれた。

 

 彼女は食事をしている間も

「返してくれると思ってたわ」

 愁一

「貴方の部屋もちゃんと用意しているのよ」

 積み木好きだったでしょ?

「後で一緒に遊びましょ」

 と笑顔で話しかけてきた。

 

 彼女にとって息子との時間は3才で止まっているのだと春彦は直ぐに気が付いた。

 

「AI政治システム統治下の親の役割は……3歳まででその後は適性検査を受けて紋章持ちになるか養育施設で学問体育どちらかの称号からレベリングを行っていく……親は子供が3歳を迎えると自動的に別れるシステムになっているって情報だったな」

 

 彼女はそう考える春彦に

「愁一? 私のことは覚えていない? 貴方の母親なの。鈴本笑子と言うわ」

 と名乗った。

 そして、この日から春彦は鈴本愁一と名乗ることにした。

 

 本物の鈴本愁一が何歳でどんな人物か分からないが彼女にとって10歳の自分でも代役が出来ると分かったからである。


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