表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

マーガレットの不安

読んでいただきありがとうございます。

 ルドの入学したらやりたいことの一つがランチを毎日一緒に食べることだった。お互いの屋敷から持ってきた物を交換して食べたいそうだ。もう相変わらず可愛いんだからと思うマーガレットだ。


早速昼休みにルドが教室まで迎えに来てマーガレットを誘い出した。周りはざわめいていたが気にする余裕はなかった。それほどルドの動きは素早かった。誰にも邪魔させないという意気込みが感じられたのだ。


春の日差しが穏やかな大きな木の下の東屋に二人が座るとランチボックスを持った護衛が現れて、お茶までセットしてくれた。お互いのランチボックスを並べると豪華なものになった。

「綺麗ね、素敵すぎて食べるのがもったいないくらい」

「今日は二人の初めてのランチ記念日だ、頂こう」

お互いの屋敷のランチはシェフの気合が入っていてとても美味しかった。


「これまでの二年間、マーガレットは誰とランチを食べていたの?」

「お兄様よ、ご都合が悪い時は食堂のランチを一人で食べていたの。空いた席に座ってね」

「これからは僕がいるから安心して」

「今日も来られると思うわ、ルドに会いたいとおっしゃってたから」


顔はにっこりしながら、心の中で「え~気を利かせてよ」と思うルドルフだ。

その時護衛が兄からの言付けを持って来た。今日は用事が出来て昼休みには行けそうにないとの事だった。ルドルフは心の中でガッツポーズをした。


高等部最終学年になり次期侯爵として忙しい兄のことをマーガレットは尊敬している。忙しくてもランチはマーガレットが寂しくないように気をつけてくれていたのを知っていた。帰ったらちゃんと食事が取れたのか聞いてみようと思った。




マーガレットの嘘を見抜く力は使わなくてもいいことになった。ふっと気を抜いた時に他人の醜い本心をみてしまったマーガレットが心を抉られて落ち込んだことがあった。その時のあまりの暗さに気付いた母親が心配して家族に相談をし、力は封印しておくように言われたのだ。

もう二度と油断をしませんから、使わなくて済みますようにと祈ったマーガレットだ。こんな力はいらないのにどうして授かってしまったのか理解が出来なかった。

知らなくて良い方が幸せなのだという事がこの世には沢山あるとこの時実感した。




最終学年はルドルフがいたおかげで楽しく過ごすことが出来た。ルドルフは有言実行でマーガレットのクラスに編入しクラスメイトになった。いつも一緒にいる二人は恋人同士という目で見られていた。いつの間にか身長も追い越していてマーガレットが見上げるようになってしまった。


クラスメイトからいつ婚約するのかと、話を振られて困ってしまうマーガレットに「今口説いてるところだから静かに見ててよ」と恥ずかしげもなく言うルドルフだ。


マーガレットはどうしても小説のヒロインの存在が忘れられなかった。十五歳でルドルフと出会い恋に落ちるのだ。このまま婚約しても、ルドが十五歳になれば、どこかで出会って恋をするのではないかという恐怖に近いもので支配されてしまっていた。この世界は結婚適齢期が女性が十六歳から二十五歳、男性は十六歳から三十歳くらいと幅広い。よくある十五歳で婚約、結婚をする社会ではなくて良かったと思うマーガレットだった。


幸いルドルフと一緒に卒業できる。しかし学院でヒロインと出会わなくてもどこかで出会う可能性は残されている。今のような関係でいれば直ぐに分かるのではないだろうか。もしも婚約してしまってからルドルフに、想い人ができたとしたら別れるのが辛くなるだろう。しかし側で見ているのはもっと辛いので別れるのは決定だ。好きな人を譲って修道院に行く生活はもっと嫌だ。惨め過ぎる。そうなったら隣国の父方の叔母を頼ろうかと考えていた。前世の記憶とチートで新しい生活が出来るのではないかと考えていた。




思い切り振られるのならともかく優しいルドルフのことだ。誠意を尽くして謝るのだろう。ルドルフとの未来がないのは七歳の時から分かっていたのに、心地の良い関係を続けた罰がこれだ。じくじくする胸の痛みと付き合うしかないのかと思い悩むマーガレットだった。




いつものように二人で花がたくさん咲いている庭を散歩をしていた時だった。ルドルフが薔薇の花束を差し出し跪いた。

「マーガレット、僕と婚約して下さい。君が好きだ、愛しているのは君しかいない」


このシチュエーション「花咲く庭で愛を囁く」そのものじゃない。このセリフをヒロインに言うはずだったのに何故私に言っているの?

「本気なの?これから可愛い人が出て来るかもしれないのよ」

「他の女性なんて目に入らないよ。マーガレットだけが僕の唯一だ。初めて会った時から好きだった。母上の命を救ってくれた時から運命の人だと思ったんだ」

あの時にヒロインとのフラグを折っていたのかもしれないとようやく気がついた。


「ルドの気持ちは嬉しいけど考えさせて」

「僕のこと嫌いなの?」

「嫌いじゃないわ、嫌いじゃないからよく考えたいの。ルドはまだ十三歳よ、将来のことを決めるには早いと思う」

「小さな時からずっと好きだったんだ。心変わりはしない。愛しているんだ」



ルドルフが告白する時に愛してると言うのがお約束のお話だった。

私にそんな事を言ってしまっていいの?臆病な私はまだ逃げようとしていた。



「ルドが十五歳になって他に好きな人が出来なかったら婚約してもいいわ」

「約束だよ、どこにも逃げないでね。愛しているんだ」

「逃げないわ、そのかわり好きな人が出来たら言ってね」

「出来るわけがない、マーガレットしか愛せない、愛する訳が無いよ」









ルドルフは絶対にマーガレットを逃さないことに決めた。ずっと好意を告げてきたはずなのに分かってもらってなかった。弟にしか見てもらえてなかったんだろう。これから全力で口説きにかかろう。幸い僕の気持ちは周りは皆気が付いている。気が付かないのはマーガレットだけだ。







誤字脱字報告ありがとうございます。感謝しかありません。

面白いと思っていただきましたら いいね 評価 ブックマークをよろしくお願いします。

執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ