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転生

読んでいただきありがとうございます。よろしくお願いします。

気楽に読んでいただけるとありがたいです。


 マーガレット・ブライスは七歳の侯爵令嬢である。我が侯爵家で催されたお茶会で五歳のルドルフ・ウインザーと出会った事で前世の記憶が蘇った。

ここは「花咲く庭で愛を囁く」という小説の中の世界だ。

ルドルフは現在五歳で伯爵家嫡男。ブライス家の親戚筋に当たるので親に連れられてお茶会に参加していた。これから十年後ルドルフはヒロインと出会い恋に落ちる。



マーガレットは名前がちょっと出てくるだけのモブだった。

恋愛小説だった事もあり読んでいたのだと思う。仕事に疲れた心に癒やしを与えてもらったような覚えがある。

前世の自分はブラック企業でも勤めていたのかしら、と思うが記憶は曖昧だ。



金髪碧眼の麗しい兄が一人いるマーガレットは金髪巻き毛で金色の瞳をした美少女だ。モブなのに贅沢な設定になっている。

ヒーローのルドルフは黒髪に金色の目をした眉目秀麗な美少年だった。先程見たルドルフも幼いながら美形だった。あまりにも可愛いので抱きしめて頭を撫でたかったが、失礼なので我慢した。


どうにかそういう流れに持ち込めないかなと思うマーガレットだ。

小説の中のルドルフは母を早くに亡くし愛情を知らずに育っていた。そこへ現れるヒロインが手を差し伸べてめでたしめでたしだったと思う。


えっ、母を亡くすって彼がいくつの時だっただろう。確か五歳の時に事故で亡くなると書かれていたような気がする。先程見た時はご両親が揃っていたから、これから?思い出すのよ。人が亡くなる事故なんてあっては駄目。ええと、確か領地に帰られる途中で事故に合うんだったわ。


今年は領地に帰らないようにお願いしないと駄目だわ。どうしよう、親戚の子供の言うことなんてどうやって聞いてもらえばいいの?お父様にお願いして私が予知夢を見たことにして貰う?それともルドルフに予知夢だって話して、帰らないようにお願いして貰う?どちらがいいの?


考えに考えたマーガレットは父侯爵にお願いをすることにした。

娘が予知夢を見たと言って執務室に飛び込んできた時の侯爵は、信じられない顔をしていた。


それはそうだろう。今までそんな気配のなかった娘が突拍子もない事を言いだしたのだから。マーガレットは信じてもらうために一週間先に起きる大雨を当ててみせた。お茶会の後で大雨になりあの時開催して良かったという場面があったのを、どうにか思い出したのだ。長雨で緩んだ峠で馬車が道を踏み外し下に落ちて亡くなったというストーリーだった。


父は早速行動に移してくれた。マーガレットの予知夢のことは他所に漏らさないでくれと言った上で、夫人が事故に合うので時期をずらしてくれるよう頼んでくれた。


驚いた伯爵も急いで領地に行く必要はないと奥方を留めておいてくれたので、事故は起きず夫人も元気でいることが出来た。外出のたびに念入りに馬車を調べているそうだ。


マーガレットはとても感謝され両親と兄にこれでもかというほど褒めてもらった。伯爵家からは特産品のワインが贈られてきたそうだが、子供には関係が無い。その時に一緒に贈られたチョコレートをお茶と一緒に美味しく食べたのだった。


それから母と伯爵夫人が仲良くなった。来るときにはルドルフも一緒に来るのでマーガレットが遊んであげる事になった。これは頭を撫でることが出来るチャンスかもしれないと企むマーガレットである。


伯爵家にしてみれば命の恩人だ。何とか恩を返せないかと思っているかもしれないが、全てはルドルフの母の無事を願ってしたことだ。



ルドルフは弟がいればと思っていたマーガレットにとってまさに理想の子だった。容姿から性格まで好みのど真ん中だ。

矜持を傷つけないように触れるなどということは考えないことにした。


一緒に散歩をしたり本を読んだりした。


「ルドルフ君、お庭を散歩しましょうか?この間蝶々が飛んでいたの。他の昆虫もいるかもしれないわ」


「僕のことはルドでいいです。マーガレット様」


「じゃあ私のことも様はつけなくていいわ、仲良しみたいでいい感じだもの」


「じゃあマーガレット?早くお庭に行ってみよう」


「どうして語尾が上がるの?まあいいわ、ルド行ってみましょう」

庭園には草がなく昆虫はいなかった。

「庭園に草が生えているわけがなかったわ。庭師が丹精込めて世話をしているんですもの。ごめんなさい、期待させてしまって」


「僕も考えていなかったのでおあいこです」


「草を生やしてもらおうかしら」


「叱られますよ」


「ふふ、そうよね、変なことを言っちゃったわ」


「マーガレットは面白い人ですね」


「敬語もいいわよ、仲良しなのにおかしいでしょう?」


「じゃあマーガレット、お花の名前を教えて」


もう可愛い‼ 可愛いしかないでしょう。心を鷲掴みされるマーガレットだ。


本を読んでいてもお互いを邪魔に感じることはなかった。マーガレットは本来一人で静かに読むのが好きなのだが、ルドルフに「マーガレットこの本読んで」と頼まれると嫌と言えない。天然の人たらしなのかしら、隣同士に座り声に出して読んであげる。


ルドったら確か本を読むのは得意だったはずなんだけど、誰かに読んでもらいたいのかなとお姉さんの気分のマーガレットは楽しかった。


二人でお茶会をするのも良かった。可愛いお菓子をこれでもかと並べて貰い、侍女に取り分けて貰ってから、ゆっくりお茶を飲むのが大人になった気分がして良いのだ。子供のマーガレットでは熱いお茶はちょっぴり苦手なので少しだけ冷ましてから頂く。高級茶葉なので冷めても美味しい。ルドを見ると同じように冷めるのを待っている。同じねという目で見るとにこっとしてくれた。うちのルド君可愛いんですけど、どうしてくれるの?


今度伯爵家にお邪魔することになった。お母様がご招待されたらしい。もちろん私も一緒にお出かけする。深窓の令嬢であるマーガレットは外出をしたことがあまりない。侯爵家はもちろん豪華なのだけど、他の豪邸も見てみたい。楽しみだ。



伯爵家はマーガレットの屋敷より一回り小さいが立派なお屋敷だった。侯爵家がお城みたいなだけだ。マーガレットが時々迷子になってしまうので歩く時は必ず侍女がついている。前世を思い出してからは自分で屋敷の見取り図を書いて、間取りを覚えるのに成功した。


ルドに見せたら感心してくれたので得意になったマーガレットだ。もちろん家族にも見せた。かなり大きな物になったので折り畳むのは侍女の役目だ。


お父様が自分も欲しいと言われるので喜んで書いて差し上げた。この時代にコピー機があれば良かったのに。これは秘密事項だから誰にも内緒だよと言われて屋敷の金庫に仕舞われるのを見てしまった。泥棒に見られたら大変ですもの、もちろんですわ、お父様。










誤字脱字報告ありがとうございます。大変助かっています。

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