未来の話をしよう
4人はアーヴァインとの話を終えて、セムトの家に戻った。
「……これから、どうなるんでしょうか」
ケイがマイルズに問いかける。彼は真剣な表情になって言った。
「悪いことにはならねえと思うぜ。どの国も、しばらくの間は動けねえ。外敵と戦わなくなれば、国内の揉め事が増えるからな。だからこそ、茗荷は故郷に帰ったんだろ。和平を結ぶことができても、城主が変わったら何の意味もなくなる。それを防ぎたいんだろうな」
ケイは不安そうな顔をしていた。アマーリアがその背を撫でながら、声をかける。
「今日はもう休みましょ。アタシたちの力が必要になったら、その時はアーヴァインさんの方から言ってくれると思うから」
ケイはその言葉に納得して、アマーリアに連れられて客室に向かった。セムトが当たり前のように、2人と一緒に歩いていく。最後に残ったマイルズが、3人の後を追いかけた。
――――
その日は何事もなく終わった。次の日も、その次の日も。彼らは、穏やかな日常を過ごすことになる。セムトという男に関わろうとする物好きな人間は、帝国にはいない。そのため、どれだけ国内が荒れたとしても、彼の家は安全だった。だからだろうか。時折、門前に乳飲み子が置かれることがあった。
「子供を守りたいと思ったお母さんが、置いていったんだと思うわ」
アマーリアは、そんな説明をした。ケイは子供たちを見捨てられず、アマーリアやマイルズに頼んで、一緒に育てることにした。子育てを面倒に思って《種》を植えようとしたセムトは、子供たちに近づくことを禁止された。そんな穏やかに、時は流れる。帝国の上層部にいた人間たちが消えてゆき、エトヴィンだけが元の地位に残り続けた。その理由を聞いても、アーヴァインは何も言わなかった。
「和国は相変わらず落ち着きませぬな。とはいえそれは、神聖国や帝国も同じようなものでしょう」
報告に来た茗荷は、そんな言葉を残していった。5年。10年。1人の人間にとっては長い時間でも、国家の関係を変えるには短すぎる。それでも。
「出来ることはやりましょう。この先、この大陸で生きていく子供たちのためにも」
アーヴァインはケイが育てている子供たちを見て、そんな言葉を発した。神聖国の教皇も、同じ気持ちだったのだろうか。国内の教会に身寄りのない子供を引き取るようにしたという噂が、ケイの耳に届いた。そうして、世界は少しずつ変わっていく。ケイという人間が死んだとしても、彼女が残したものは継がれていく。それはやがて、三国の争いを終わらせて、その大陸に1つの大きな国を作ることになるのだが……。それは、遠い未来の出来事だった。
終わります。この作品を読んでくださってありがとうございます。この後のことは皆様のご想像にお任せしたいと思います。
明日の午後6時からは、別の作品を書き始めると思います。チート転生要素が入る可能性があります。人外がいます。そちらもよろしければお願いします。




