帰国
4人は何事もなく、帝国の首都に帰ってきた。
「じゃあ、アーヴァインさんに報告しないといけないこともありますし……王宮に行きましょうか」
ケイは王宮に向かって、足を進めた。アマーリアが苦笑を浮かべる。
「アタシはいいけど……ケイちゃんは、疲れてない? 1度家に帰って、休んでもいいのよ?」
ケイは笑顔で、胸を張った。
「大丈夫です! あ、でも、ちょっと汚れてるから……お風呂に入って、着替えた方がいいんでしょうか。王宮に行くなら、綺麗にしてた方がいいような気がしますし……」
「まあ、そういうことは気にしなくていいと思うぜ」
ケイが服の汚れやシワを気にしているのを見て、マイルズが淡々とした声をだす。
「アーヴァインは絶対に人払いをするだろ。あの男と会うだけなら、そのままでも構わねえと思うぜ。別に、パーティーに行くわけでもねえしな」
「それもそうですね。だったら、このままの格好で行きます」
ケイは彼の言葉に納得して、早足で歩いていく。セムトがその隣に並んで、同じ速度で前に進む。アマーリアとマイルズが、少し後ろからついていった。
「お帰りですか」
4人が帝国側の使者であると知っている門番が、マイルズに声をかけた。
「そうだ。前に話した場所で待っていると、皇帝に伝えてくれ」
「分かりました。お任せください」
2人の会話が聞こえてくる。ケイは旅立つ前に密談で使った部屋の扉を開けて、セムトと共に入っていった。アマーリアとマイルズも、すぐに部屋に入ってくる。4人は部屋の中にある椅子に座って、アーヴァインを待った。しばらくして、扉が勢いよく開く。ケイは入り口の方に目を向けた。そこには、慌てた様子のアーヴァインが立っている。彼は後ろ手で扉を閉めて、ケイに向かって話しかけた。
「……どう、なりましたか。話し合いは……」
「良い結果になったと思います! 神聖国の教皇さんも、和国の城主さんも……2人とも、とても優しい人でしたから」
ケイの明るい声を聞いて、アーヴァインはため息をついた。
「そう、ですか。……話を進めたのは、セムトですよね。やはり、彼が……」
「いや、コイツは何も話してねえよ。というか、コイツだけだと多分、話が拗れるだけだったと思うぜ。戦争についても、帝国側が有利になるような交渉ができたわけじゃねえ。できたことといえば、停戦を約束させたくらいか。それでも十分な成果だがな」
「……そうですね」
アーヴァインは寂しそうな顔をしていた。マイルズはそんな彼に、鋭い眼差しを向けて言った。




