何故?
「ねえ教皇様。お願いがあるの。貴方の周りにいらっしゃる方々を、この部屋から出してくださらない?」
壱華が教皇に微笑みかける。教皇は頷いて、神官長に目を向けた。
「クライド。頼めるか?」
神官長は嫌そうな顔をしたが、教皇が本気であることを察して、ため息をついた。
「いいですか、すぐに戻ってきますからね! 勝手に何もかも決めないでくださいよ!」
そう叫んで、彼は神官たちを連れて出ていく。教皇は彼らを見送ってから、ケイの方に視線を向けた。
「私はあなたを信じている。その上で、聞かせてくれないか。あなたが連れている人は、これから話すことを他人に言いふらすような人間ではないと考えていいのかな?」
ケイは考え込むような表情になって、セムトに声をかけた。
「言わないよね?」
セムトは頷いて、口を開いた。
「僕、多分覚えられないよ。細かいこととか、興味ないし。だから、心配しなくても大丈夫。……でも、悲しいなぁ。ケイは、僕のことを信じてくれてないんだね」
「だって……マイルズさんとアマーリアさんは、ボクたちより大人でしょ? 秘密を守ってって言われたら、守れると思う。茗荷さんも、余計なことは言わないよ。ただ、セムトのことは気になったから、一応聞いたんだけど……大丈夫ならいいよ。ボクも、言わないようにするし」
2人の会話を聞いて、教皇が笑みを深める。
「君たちの言葉を信じよう」
神官長が戻ってくる。壱華はそれを見てから、話し始めた。
「私は、お父様とお母様を殺しているの。私は女だったから、1人では家が継げなかった。それが嫌だったから、奪ったの。神様には許されないかもしれないけれど、後悔はしていないわ。……それにね、私だけではないのよ。戦争が続いているこの大陸で、人を殺していない人間なんていないわ。そうでしょう?」
教皇は無言で頷いた。神官長が、怒りを滲ませた声で言う。
「……違う。彼らは異教徒だ。人ではない。我々は、神を裏切っているわけではない」
「そうね。そういう理由で、誤魔化している。でも、違うわ。私たちが行っている戦争とは、そういうものよ。墓を建てることもできず、死体の山は積み重なっていく。国は荒れ、人は減る。良いことなんて、1つもないの」
「何が言いたい。戦争を止めろと? 不可能だ。帝国から皇帝が来なかった時点で、話し合いなど出来るはずもない。こんな子供を使者として送りこんできて、何を言うかと思えば……争いを終わらせたいというのなら、皇帝自ら来るべきなのだ。そうだろう?」
神官長が吐き捨てる。壱華は困ったような顔をした。教皇が目を細めて、ケイの方に視線を向ける。
「君は皇帝に会ったそうだな。どんな方だったのか、詳しく聞かせてくれるかね?」




