会議(後編)
「で、でも! 皆さんがここにいるんだから、この戦争を終わらせることも可能ですよね?!」
ケイが叫んだ。彼女は本気で、そうであると信じている。その曇りのない真っ直ぐな瞳を見て、教皇がとても眩しいものを見たように目を細めた。
「……ケイさんには、そのままのあなたで居てほしいですね」
その言葉を聞いて、壱華が苦笑する。
「ええ、本当に。……私、その男のことは気に入らないけれど……ケイちゃんのことは、好きよ」
「え……?」
ケイは目を見開いた。部屋の中に満ちていた重苦しい空気は、いつの間にか消えている。
「じゃ、じゃあ、話を聞いてもらえますか?」
「ええ、大丈夫よ。戦争を終わらせたいのでしょう? 他の方からそんな話をされたら、何か裏があるのかと疑ってしまうけれど……ケイちゃんは私たちに嘘をつくような子ではないから、聞いてあげるわ」
壱華は笑顔になって告げた。教皇がその言葉を聞いて頷く。
「そうですね。皇帝陛下とは、会ったこともありませんが……あなたを使者として送りこむような方であれば、信用できると思います」
ケイは明るい表情になって言った。
「はい! ボクは皇帝ではないんですが、皇帝さんとは会ったことがあります。優しい方でしたから、きっと約束を守ってくださると思います」
「それは良かった。神官アマーリアであれば当然分かっていることと思いますが、我々は最初から戦争に興味などありません。止められるものなら止めたいと、前々から思っていたのです」
教皇が穏やかな声をだす。アマーリアが笑みを深めた。
「そうね。でも、1つだけ。我々の信仰を、他者に強要しないこと。それを約束してくれるかしら?」
教皇が真顔になる。
「神官の言葉とは思えませんな。神を信じることは人として当然のことです。神は我らに、理想の在り方を教えてくださるのですから。神の教えを知らぬ者は、人が持つべき礼儀や常識を教わっていないのです。そうではありませんか?」
「いいえ」
アマーリアは微笑んで、断言した。
「エルヴェツィオ教皇。神を信じずとも、人は人です。人の社会で生きているのですから、礼儀も常識も学べます。学んだことを正しく活用できるかどうかは、その人次第ですけれど……それは、別の問題ですわ。聖書にも『神を信じる者の声と、神を信じぬ者の声。どちらも同じものである。我らの神は、信仰によって人を区別することはない』と、書かれているでしょう?」
教皇の周囲を囲んでいた神官たちが騒ぎだす。教皇はアマーリアの目を見返して、ゆっくりと口を開いた。




