会議(前編)
「そう。それじゃあ……貴方。ケイちゃんは、私達の事をどこまで知っているの?」
壱華と名乗った少女が、ケイに向かって笑いかける。ケイは彼女の目を見返して、口を開いた。
「ボクは、村から出てきたばかりなんです。だから、実際に行ったことは無いんですけど……。黒鋼さんのことは、茗荷さんから聞いたことがあります。優しい方だって、茗荷さんは言っていました」
「ありがとう。私も、茗荷から報告を受けていたわ。ケイちゃんのお陰で、《花》としての在り方から解放されたと」
2人の話を聞いた教皇が、笑いながら口を挟む。
「ほう、それはそれは。和国の民が《花》となっていたというのは初めて聞きましたよ。人を《花》にするなどという非道な行いを止めさせるとは、ケイさんは本物の聖女なのかもしれませんね」
「そんな、ボクは別に……」
ケイは慌てて否定しようとした。アマーリアが笑みを深めて、話に入ってくる。
「ケイちゃんは人として、当たり前のことをしただけよ。聖女になろうと思っていたわけでも、和国に恩を売ろうとしたわけでもないわ。そのことは今、関係ないと思ってちょうだい」
教皇が困ったような顔をする。
「しかし、それでは我々の気持ちが落ち着きません。できれば1度、聖女として我が国にお招きしたいのですが……」
「エルヴェツィオ教皇。ケイちゃんは神聖国で聖女の地位を得たいと思って、ここに来たわけではないのよ。聖女になることで争いが無くなるなら、それでもいいけれど……。でも、聖女にどのような立場が与えられるのか。そして、それによって何が出来るのか。そういうことは、決められていないでしょう? そんな状況で、聖女として神聖国に行くことは出来ないわ」
アマーリアが笑みを崩さないまま、少し低い声で言った。壱華が笑いながら言葉をかける。
「残念ね。ケイちゃんは……いいえ、他の方々も。教皇様が提供する地位や権力に、興味は無いみたい。良いことだわ。だって、私には何も無いのですもの。私は、早くに亡くなった両親の代わりに城主としての務めを果たしている、ただの娘。黒鳶は確かに私の国だけど、私だけの判断で勝手に行動することは出来ないのよ。ここでどんな結論が出ても、私は国にそれを持ち帰って、検討しなければならないの」
その言葉を聞いて、ケイの背後に立っていた茗荷が呟く。
「……姫様の言を聞き入れぬ者など、我が国には居りますまい。我らは貴方を主と定めて、貴方の命に従わぬ者を殺してきました。今の黒鳶を束ねているのは、間違いなく貴方です。貴方が良しとしたことに異を唱える者は、あの国では生きてゆけぬのですから」




