神殿会合(中編)
アマーリアは神官たちが集まっている場所を見ながら、ゆっくりと口を開いた。
「あの人たちは神官として、高い位を持っているの。神官以外の職業を見下していて、同じ神官でも位が低い人間の話は意味がないと思っている。それでも……そんな人たちでも、民の声だけは無視できないの。民の願いに応えることは、神官の義務であるとされているから。彼らが定義している民とは、どの職業にも就いていない人間のことなのよ。ケイちゃんはその条件に当てはまってるでしょ? だからアタシは、ああいう風に言ったのよ。クライド神官長が来ているってことは、向こうには枢機卿と……教皇も居るかもしれない。だけどね、誰が来ていても関係ないの。ケイちゃんの言葉は、民の言葉として認識されるから」
ケイはアマーリアの顔を見た。彼女は真剣な表情で、神官たちを見ている。
「……ボクは、農民のままだと誰の力にもなれないと思っていたんです。でも、違ったんですね。ボクに力がないことで、アマーリアさんが動きやすくなるんだったら……ボクは、転職しなくて良かったと思います」
ケイの言葉を聞いて、アマーリアが苦笑する。
「そんな利用の仕方をする気はなかったの。本当よ。……信用できないかもしれないけど……」
「信じますよ」
ケイはアマーリアの目を見つめて、はっきりとした声で言った。アマーリアは明るい表情になって、ケイを抱きしめた。ケイは大人しく、抱きしめられるままになっていた。5人の背後から、足音が聞こえてくる。茗荷が後ろを見て、小さな声で呟いた。
「……姫様も、いらっしゃいましたね」
アマーリアがケイから離れる。ケイは足音が聞こえた方に視線を向けた。美しい着物を着た人が、茗荷と同じ服装をした人間を連れている。
「初めまして。貴方が、茗荷が話してくれた人なのね? 私、ずっと貴方にお会いしたかったの」
その女性はケイを見つめて、鈴が鳴るような声で話しかけてきた。ケイは戸惑った様子で、目を逸らした。マイルズがため息を吐いて、ケイとその人の間に入る。
「すまねえが、詳しい話は後にしてくれ。クロトビに送った手紙には、会談の場所が指定してあるだろ?」
女性はマイルズの言葉を耳にして、目を細めて笑った。
「まあ、無粋な人。でもそうね、貴方の言うとおりだわ。私は夜と共に、先に会談の場所に向かいます。後ろの貴方も、できるだけ早く来てね。私、待っているわ」
女性が5人の側を通り過ぎて、神殿の壁に手を置いた。彼女はそのまま、壁の中に溶け込むようにして消えていった。




