神殿会合(前編)
「……さて。それでは、神殿の中に入りましょうか」
ケイが落ち着いたのを確認してから、茗荷が言葉をかける。4人は彼に連れられて、神殿の中に入った。神殿の奥には女神像が置かれていて、神官服を着た男がそれに向かって祈りを捧げていた。茗荷が入ることで5人になった彼らの足音を聞いて、その男性がゆっくりと振り返る。
「おや、あなた方は……?」
その人は、柔和そうな顔立ちをしていた。彼は優しげな笑みを浮かべて立ち上がり、5人に近づいてきた。アマーリアが前に出て、その人に話しかける。
「こんにちは、クライド神官長。アタシはアマーリアという名前です。アナタと同じ、神官ですわ」
「これはこれは。こんなところで同じ信仰を持つ方と会えるとは、今日は良き日になりそうですね。神官アマーリアは、なぜここに?」
「クライド神官長と同じ理由です。アタシたちは今日、ここで話し合いをするために来ました。帝国側の、使者として」
クライドと呼ばれた男が笑みを浮かべた状態で固まる。アマーリアは彼に向かって笑いかけた。
「ここにいるケイちゃんの発案なの。争い合うよりも、もっと素晴らしいことがあるのだと、彼女はアタシたちに伝えてくれたのよ」
ケイは突然名前を呼ばれたことに驚いて、声をあげようとした。マイルズが後ろから手を伸ばして、彼女の口を手で塞ぐ。クライドは明らかに動揺したような様子で、神殿の隅に走っていった。ケイは目だけを動かして、そちらを見た。そこには神官服を着た人々がいて、中央には司祭のような格好をした人がいる。少し離れた場所で彼らを守るように立っていたヴァルトルが、ケイを見つけて近寄ってきた。
「なんだよ、帝国側の人間を護衛してるならそう言えよな! そっちのセムトって人が、お偉いさんか?」
「まあ、そういうことになるな」
マイルズがケイの口に当てていた手を外す。ケイは大きく息を吐いた。アマーリアが苦笑を浮かべて、ケイに向かって声をかける。
「何も説明してなかったから、驚かせちゃったわね。ごめんなさい」
「いえ、それは別にいいんですけど……」
ケイは困ったような顔で、ヴァルトルの方に視線を向けた。ヴァルトルは彼女が言おうとしたことを察して、口を開いた。
「オレのことは気にするな。……って言っても、こんな状況じゃあムリだよな。オレは離れてるから、話を続けてくれ」
ヴァルトルが手を振って、元の位置に戻っていく。ケイは慌てて頭を下げた。全てを見ていたマイルズが、穏やかな声音で言った。
「ヴァルトルのことは気にするな。アイツは全部分かってるさ」




