前世の話
4人は1つの机を囲んで、カードを広げた。最初に遊んだのはババ抜きで、1番最初に抜けたのはアマーリアだった。4人はその後で、七並べや神経衰弱など、他のゲームも行った。どのゲームでもアマーリアは上手く立ち回って、勝ち続けた。
「アマーリアさん、強すぎません?」
ケイが両手を机につけるようにして、体を伸ばす。アマーリアはその様子を見て、笑みを深めた。マイルズが諦めたような声音で言った。
「コイツは昔からこうだからな。もう今更、驚かねえが……なあ、セムト。お前、カード遊びには慣れてねえのか?」
セムトは何度か、ルールを知らないような挙動を見せていた。だからマイルズはそんな質問をしたのだろう。ケイもそのことは気になっていたので、机の上で伸びをした状態のままで、彼の方に顔を向けた。彼は、不思議そうな顔をしていた。
「そんなこと、ないけど……前世でも誘われることはあったし、その時はずっと勝ってたんだよ。でも、そうだね。もしかしたら、気を使われていたのかも。昔の友達と遊ぶ時のお金は、僕が父さんから貰って出してたから……」
マイルズは彼の言葉を聞いて、目を細めた。
「そういや、お前は典型的な重課金プレイヤーだったな。その金も、親から貰ってたのか?」
「そうだよ。僕の父さんは、水瑛堂グループの会長だったから……家にはあまり帰ってこないけど、お金だけは沢山あったんだ。僕は何でも買ってもらってたし、周りにはいつも友達がいた。それが、僕の日常だったんだ」
セムトは何でもないことのように話している。ケイは半目になって呟いた。
「それって、セムトのことを好きなんじゃなくて、お金があるから一緒にいたんじゃないの? そういうのって、本当の友達とは言えないような気がするけど……」
「そうなの? じゃあ、本当の友達ってどういうものなんだろう。ケイは、友達はいた?」
セムトが無邪気に問いかける。ケイは遠くを見るような目をして、口を開いた。
「ボクは普通だよ。ちょっと、その……女の子らしくはなかったからさ。好きな人は居たけど、告白はしなかったんだ。でも、その人とも親しく話すことはできてたから……それなりに、幸せだったと思う」
「あら、そうなの? ケイちゃんは十分、可愛らしいと思うけど」
アマーリアが微笑みながら言葉を発する。ケイは顔を赤くして黙った。
「……恋とか、愛とかは分からないけど……僕は、ケイのことが大好きだよ」
セムトが笑いながら告げた言葉が追い打ちになって、ケイは机の上に顔を伏せた。マイルズが同情するような声を出す。
「お前らな……ケイが困ってるだろ。止めてやれよ」
アマーリアが笑い声をあげた。セムトは何を言われているのか分からない様子だった。4人の休息日は、そうして過ぎていった。




