一休み
話が終わったことを察して、茗荷が再び陰に隠れた。4人が連れ立って、部屋から出ていく。彼らは来るときに通ったのと同じ廊下を歩いて、王宮の外に出た。大通りを進んで、セムトの屋敷に到着する。セムトが屋敷の正面にある大きな扉を開けて、他の3人を招き入れる。彼は最後に屋敷の中に入って、扉を閉めた。ケイが周囲を見回して、口を開く。
「帰ってきたのはいいけど、これからどうしよう。休むっていっても、何もしないのも退屈だし……遊び道具とか、あるかな」
「うん、あるよ。本もあるし、ビリヤードやダーツもあるけど……1番遊びやすいのはカードかな」
そんな話をしながら、セムトは入り口から少し離れた場所にある部屋を示した。
「向こうの部屋に、全部置いてあるよ」
ケイは彼の言葉に頷いて、小走りでその部屋に向かった。部屋の中には、沢山の遊び道具が置かれていた。綺麗に並べられている道具は、あまり使われていないのか、うっすらと埃が積もっている。後から来たセムトが、棚からカードの箱を取り出して、埃を拭って机に置いた。ケイは箱からカードを何枚か取り出して、表面に何が描かれているのかを確認した。見慣れたマークと数字。それは彼女が現実世界で見たことがあるカードに描かれていたのと、全く同じものだった。
「この世界にも、トランプとかあるんだ」
彼女の言葉を聞いたセムトが、苦笑を浮かべて言った。
「いや、それは僕が作った物だよ。僕は同じ世界から来た人がいないか、ずっと探していたからね。現実世界にある物を再現して、色んな人に見せてたんだ」
「……ああ、そういう……」
ケイは複雑そうな顔で、手元のカードを纏めた。持ったときの重さや、混ぜたときの手触りも同じだ。せっかくファンタジーの世界に転生したのに、セムトは現実を忘れられていない。
「セムトはきっと、幸せだったんだね。前世で、何の不自由もなく生きてきたから、この世界に満足できなかったんでしょ」
「えっと……そうなのかな。僕はただ、友達に会いたかっただけだよ。この世界にも友達はいるけど、彼らは現実世界で生きていた僕のことを知らないから。だから、そうだね。僕は前世の記憶が無かったら、もっと穏やかに生きられたのかもしれない。でもそうしたら、ケイのことを好きになることもなかったと思うから……今は、前世の記憶があって良かったと思ってるよ」
「……そっか」
ケイはカードを束にして、机に置いた。彼女は入り口の近くに立っているアマーリアとマイルズの方を見て、彼らに向かって声をかけた。
「よかったら、一緒に遊んでもらえませんか?」




