作戦タイム
「……よし、話は分かった。今すぐ出ていってくれ」
エトヴィンが腰に下げていた剣に手をかける。アーヴァインは笑みを深めて彼の手を押さえた。
「あなたが協力してくださるまで、我々はここから動きませんよ」
エトヴィンは舌打ちをして、アーヴァインの手を振り払った。彼はその勢いのまま、アーヴァインから離れて、机に向かって歩いていった。
「急に訪ねてきて頼み事をしてくるとはな。相変わらず常識のない奴らだ」
エトヴィンは周囲に聞こえるように呟きながら、机の上で羊皮紙を広げた。その背に向けて、アーヴァインが言葉をかける。
「事前に連絡しても、その日は用事があると言われて逃げられますからね。あなたに会うには、こうするしかないんですよ」
エトヴィンが顔をしかめて口を閉じる。彼は羽根ペンにインクをつけて、羊皮紙の上で走らせた。そうして文字を書き終わると、彼は最後に署名をして、熱した蝋を垂らして印を押した。
「アーヴァイン君はこれが欲しいんだろう? 持っていきたまえ」
エトヴィンは書き終わった書類をアーヴァインに渡した。アーヴァインは書類を受け取って、満足そうに笑った。
「ありがとうございます。……では、私たちはこれで失礼しますね」
ケイはその書類に何が書かれているのか気になって、横から覗きこんだ。書類の文字は細かく、書かれている内容も専門的だったので、一瞬で全てを読み終えることはできなかった。かろうじて、派兵に関することが書かれているということだけを理解して、彼女はアマーリアに引きずられて部屋を出た。全員が部屋から出ていったのを見て、エトヴィンは忌々しげに扉を閉めた。
「あれで良かったのか?」
閉まったままの扉を見ながら、マイルズが口を開く。アーヴァインは苦笑を浮かべていた。
「いえ、まあ良くはないですが……彼は私のこともクルトのことも嫌っていますから、これでも譲歩してくれた方ですね。……さて。それでは、具体的な方策を立てましょうか」
彼は近くの部屋の扉を開けて、4人を招き入れた。そして部屋の中の棚から持ってきた地図を机に広げて、全員を机の周りに集めた。『幻想大戦』ではリアルタイムでマップの勢力図が変わっていたが、地図に描かれた3つの国の領土の大きさはほとんど同じだった。魔の森に囲まれた、円形の世界。ゲーム内では外に出ることなど考えられなかった、閉じられた場所。そこは大きな大陸の端にあって、森の外には他の国があった。ケイはそのことが信じられなくて、地図を見たまま固まっていた。




