帝国の城
4人の転生者は、アーヴァインに連れられて城へと向かった。城の門番は見慣れない人間を見て身構えたが、その中にセムトが居るということに気づいて、持っていた槍を下ろした。5人は城内に足を踏み入れて、周囲を見渡した。城の中には、調度品や絵画などが飾られている。ケイは目についた絵画に近づいて、興味深そうな顔で鑑賞していた。彼女が見た『幻想大戦』の世界は3D映像で構成されており、風景は全てリアルな奥行きのあるものだった。その光景が油彩や水彩などの表現方法で描かれた絵は、設定資料集にも載っていない。ケイが気になる絵画の前で立ち止まる度に、彼女と手を繋いで歩いているセムトも足を止める。そんな2人と、彼らを少し離れた場所から見守っている他の3人という構成の5人組。彼らはそれなりに目立っているのだが、誰からも見咎められることはなかった。それどころか、通りがかった人間は皆、セムトを視界に入れないようにしながら移動している。その様子を見ていたマイルズが、アーヴァインに小声で話しかけた。
「ここの奴らは、いつもこうなのか?」
アーヴァインは、彼に合わせて声量を落とした。
「そうですね。セムトはあまり気にしていませんが、彼と関わると面倒なことになりますから、普通の人間は彼を避けようとします。ただ、彼はこの国を支配しているも同然ですからね。力を欲しがる人間ほど、彼と仲良くなろうとするんですよ。今から訪ねる方も、そういう類の人です」
「なるほどな。要するに、厄介な相手だってことか」
「ええ、そうですよ」
マイルズの問いに、アーヴァインが笑顔で答える。アマーリアは目を細めた。
「大丈夫かしら。そんな人にケイちゃんを会わせちゃって」
「大丈夫かどうかは分かりませんが、お嬢さんなら何とかなると思いますよ。彼女はとてもしっかりした方ですから」
アーヴァインは穏やかな口調で言った。アマーリアは、彼の言葉に納得した。5人はケイの速度に合わせて、ゆっくりと進んでいく。しばらくして、彼らは目的の部屋に到着した。アーヴァインが部屋の扉についている紐を引いて、ドアベルを鳴らす。扉が開いて、壮年の男性が姿を見せた。彼はアーヴァインの顔を見た瞬間に、舌打ちして扉を閉めようとした。その手首に、地面から伸びてきた薔薇の蔦が絡みつく。彼はその蔦を見て、深いため息を吐いた。
「私はアーヴァイン君のことが嫌いなのだがね。クルト君が一緒にいるのであれば、仕方がないな。それにしても、こんなに大勢で押しかけてくるとは……相変わらず、非常識な男だ」




