アーヴァイン先生の説明回(前編)
「例えば地属性の魔術師であれば、その存在は1つの植物のようなものとなります。レベルが低い時は芽が出たばかりですが、高くなれば1本の大樹のようになる。地属性の魔術師が居場所として定めている地域は、植物に例えれば根を張るための大地のようなものです。大地がなければ植物が育たないのと同じように、居場所がなければ地属性の魔術師のレベルは上がりません。クルトもそうです。彼は帝国の首都を居場所と定めて、そこから帝国一帯に根を伸ばしていきました」
アーヴァインの話を聞いていたアマーリアが、首を傾げて口を開く。
「でも、帝国領の村や町にも、何人か地属性の魔術師がいましたわ。その方々はどうして、そこで暮らしていたのかしら。1人の地属性の魔術師がいるところには、他の地属性は住まないでしょう?」
「そうですね。クルトは元からいた他の魔術師の居場所を奪わなかったので、元からいた魔術師は自分の土地で暮らし続けています。クルトがその土地を奪わなかったのは、他人の居場所だからです。彼はレベルが高いので他の魔術師の土地を奪うこともできるのですが、何しろ同じ地属性ですから、居場所の大切さは誰よりもわかっていますしね。帝国一帯というのは比喩のようなもので……言葉を選ばずに言うと、監視ですね。クルトの根は他の魔術師の根を避けるように伸びていて、帝国に入ってきた人間のレベルと職業を彼に伝え続けているのです」
アーヴァインは表情を変えずに言った。セムトが拗ねたような声をだす。
「だって、ずっと僕と同じような人に会えなかったから……今はケイが居てくれてて、動かす必要がないから根を休ませてるよ」
ケイは半目になったが、何も言わずに目線だけを動かして、説明の続きを求めた。アーヴァインは頷いて、話を続けた。
「……話が逸れましたね。とにかく、そういうわけですから……地属性の魔術師にとっての居場所とは、彼らが生きるために欠かせないものなのです。クルトがどれだけ規格外の存在でも、そこだけは揺らぎません。地属性の魔術師が居場所を失うということは、とても大変なことなのです。彼らはそこから離れた時間が長くなると不安になり、力を失ってゆっくりと死に絶える。これがどういうことか、分かりますね? クルトが住居を移しても生きているということは、他の場所を居場所として定義しているということです。では、それはどこか。お嬢さんには、お分かりですか?」
ケイは嫌な予感がした。アーヴァインはそんな彼女に、同情するような視線を向けた。




